規制緩和・民間開放と公務・公共サービスの縮小は、国民の安全安心を破壊

 政府と財界が一体になって進めてきた「規制緩和・民間開放」と公務・公共サービスの縮小によって、国民生活のあらゆる分野で深刻なゆがみと弊害が生じています。
<耐震強度偽装問題>
 昨年1月以降、日本列島を揺るがしているマンションやホテルの「耐震強度偽装問題」は、姉歯設計事務所・(株)ヒューザー・木村建設(株)ら建築主・施工主・設計者が居住者・住民の安全安心を省みずにコストを切り下げ、利益最優先の経営に狂奔し、耐震設計構造計算書を偽装したことが事件の発端でした。しかし、この事件の根本的な原因は、1998年に建築基準法を「改正」し、建築物の安全を確保する建築確認業務を民間審査機関に任せ、不正を見抜く制度的保障を形骸化したことにあります。しかも、建築確認業務が「民間開放」されたことにより、自治体の専門職員が削減され、違反を見抜く経験や技術の蓄積が蔑ろにされ、自治体(特定行政庁)が行う検査自体にも不備を生じ、安全・安心を担保できなくなっていることも明らかになりました。いったん民間移行すると当該の公務部門は縮小廃止され、後日、民間移行の誤りを是正しようとしてもきわめて困難であること、つまり「官から民へ」は不可逆的な移行であることを如実に示しています。
<JR福知山線脱線事故>
 昨年4月に尼崎市で起きたJR福知山線の脱線事故は、死者107人、負傷者500人をこえる大惨事となりました。事故後1年近く経つ今も犠牲者と家族の傷が癒えることはありません。この事故の背景に、国鉄分割民営化後、JR西日本が鉄道輸送の使命である「安全」よりも「利益」を優先させ、列車自動停止装置(ATS)などの整備を後回しにして、過密ダイヤのもとでのスピードを競い合っていたこと、大阪支店長が「稼ぐ」ことを方針の第一に掲げ、全社員に徹底させていたことなどが明らかになっています。

 当時運輸相として国鉄民営化をすすめた橋本元首相が「国鉄民営化をほめてくれる人がいるが、JR西日本の福知山線脱線事故が起きてものすごく後悔している」(産経新聞2005年12月22日)というように、安全よりもうけを優先する民営化が、あまりにも大きな代償を国民にもたらしていることに、国民の危惧が広がっています。

<仙台市立プール天井落下事故>
 昨年8月の宮城県沖を震源として起きた地震では、幸いなことに負傷者が少なく、ほとんどの建造物も損傷がなかったにもかかわらず、仙台市立のプール「スポパーク松森」の天井が落下し、35人もの多くの利用者らが負傷しました。もっとも安全性が重視される公共施設で事故が発生し、しかも完成して間もない施設であったため大きな問題になりました。斜め振れ止めをとりつけず、壁との間隙も不足する施工上の問題が事故につながりました。この施設はコナミスポーツ(株)などがつくる企業によるPFI方式によって建設され運営されています。

 事故を検証するために市が設置した「PFI方式による公共サービスの安全性確保に関する検討委員会」が12月に発表した「中間報告」でも、「PFIだから事故が起こりやすいということはなく、事故を防ぐことができないということも、断じてない」と強弁しながら、一方では「官により施設整備が行われていれば、事故を未然に防ぐことができた可能性は高い」と指摘しているように、PFIと事故との因果関係を事実上認めています。

 しかも市の施設でありながら設計施工はPFI事業者任せ、事故が発生して住民の安全や権利が侵害されても、市は「PFI契約では直接責任は事業者」であることを理由に被害者・住民への説明や謝罪を後回しにするなど、きわめて無責任な対応に終始しています。

PFI(PrivateFinanceInitiative)とは公共施設の建設に民間企業等の経営ノウハウや資金を活用する制度。「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」1999年制定。民間企業等が自ら資金調達を行って施設を建設し、所有した上で維持管理及び運営を行い、事業期間終了時に、国や自治体に施設の所有権を移転する方式と、民間企業等が施設を建設後、所有権を国や自治体に移転し、民間企業等が施設の維持管理、運営を行う方法、などがあります。
<保育所の民営化・企業参入>
 公立保育所の民営化や保育事業への民間企業参入によって、全国各地で子どもや保護者をまきこむ問題が発生しています。民間企業が設置する認可保育所「すくすく保育園」(神戸市)が、昨年10月に突然廃園することを発表し、50人の乳幼児と保護者を不安の淵に突き落としました。この間、国は保育事業への企業参入を促進するために、事業の安定性を犠牲にして施設の賃貸・リースを認めてきました。そのために保育所が、儲からなければ簡単に撤退できる事業へと変えられたのです。しかも自治体から支払われた保育所運営費が保育事業外に流用されていながら、都道府県や政令市等が監査権限を有する社会福祉法人とは異なり、株式会社の場合には法人監査できないため、公金の流れが解明できないことも指摘されています。

 民間企業の競争的算入によって人件費削減を競い合い、民間企業だけでなく社会福祉法人等が運営する保育所でも、園長も雇用期間が1年単位の「契約社員」、保育士の半分以上が「パートタイム労働者」という保育所が増えています。その結果、民営化された公立保育園では、受託企業が雇用した園長、保育士のほとんどが1年も経たないうちに入れ替わり、子どもや保護者との信頼関係が壊れ、子どもを物置に閉じ込めるなどの問題を起こす事件が続出していることも報道されています。

<規制緩和・民間開放のつけが住民・自治体に>
 小泉内閣が推進する「規制緩和・民間開放」によって、国民の生命・安全を守るための様々な規制が撤廃され、あらゆる公共業務が儲けの対象に変えられ、「もうけ」のためなら法律違反もいとわないという社会のあり方・モラルのゆがみが広がっています。国民・住民は主権者でなく「お客様」に祭り上げられ、声が届きにくくなっています。その結果、「規制緩和・民間開放」によるリスクや損失が、結局、住民自身と自治体に大きな付けとして跳ね返ってくることが「耐震強度偽装問題」などで明らかになっています。

 「規制緩和・民間開放」は、人間らしく暮らし・働き、育ちたいという国民の願いに逆行するものであり、生活のあらゆる分野にゆがみを生じさせています。ところが、小泉内閣は「規制緩和・民間開放」を見直すのではなく、さらに推進しています。


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