地方自治憲章(案)
憲法地方自治法50年の節目にあたる1997年3月1日、自治労連が事務局となり、20団体が構成する「地方自治憲章運動をすすめる会」が「地方自治憲章(案)」を発表しました。
いま、国による地方自治への激しい干渉のもとで、地方自治が重大な岐路に直面しています。住民の安全・健康・福祉の保持という地方自治体が果たすべき役割の歪曲を許さず、憲法が掲げるくらし、人権、民主主義を地域で実現していくための指針として、「地方自治憲章(案)」の議論を広げ、深めていただきたいと考えています。
「地方自治憲章」運動を進める会 地方自治憲章(案) |
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前 文 日本国憲法(以下「憲法」という)は、この国の主人公が国民であることを明らかにし、国民主権の原則をうたっています。 そして、人間としての尊厳と自由にもとづき、「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることをはじめもろもろの基本的人権を保障しています。 憲法が保障するこれらの権利は、地域での人びとの暮らしと営みのなかにこそ具体的に保障されなければなりません。それは、すべての人びとが、地域で生まれ、育ち、地域で人間としての営みを行い、その人生をすごすからです。 ここに、憲法がその基本原則の一つとして地方自治の保障を掲げ、地方自治法が「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」を地方自治体の基本的責務とするゆえんがあり、地方自治の保障は、国民主権の原則を地域で具体化し、確立するものです。 しかしいま、憲法の国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和、議会制民主主義、地方自治の諸原則が脅かされ、突き崩されようとしています。 21世紀を目前にひかえて、国際社会は、「武力紛争のない平和な社会」「持続的な発展を可能とする環境重視型社会」「国民主権にもとづく民主的な社会」「基本的人権が保障される差別のない社会」「国際的な経済民主主義の実現による貧困の克服」「全ての女性の平等、開発への完全な参加」などを人類の共通の課題としています。 (基本的人権と地方自治) (2)地方自治体は、不断の努力によって、憲法で保障されている基本的人権を実現していくように努めなければならない。 (3)地方自治体は、住民の生命、財産、健康、福祉などにかかわる公的保障の責任を果たし、かつその水準をつねに向上させていくように努めなければならない。 (住民自治の原則) (2)地方自治体の長、議会および職員は、憲法の原則にもとづき、住民自治の原則を尊重し、それを行政のあらゆる場において実現していくように努めなければならない。 (3)地方自治体は、憲法および地方自治法の定める選挙権、被選挙権、直接請求権、請願権などの住民の権利を尊重するとともに、住民投票などをふくむ多様な住民参加の実現に努力しなければならない。 (4)住民に対する情報の公開は、住民が地方自治の主人公となる前提条件として、最大限保障されなければならない。 (住民の暮らしと地方自治体の施策) (2)前項の施策を実現するために、地方自治体は、住民の総意にもとづいて、団体自治を貫き、国にナショナルミニマムの拡充、必要な法制度の整備、情報の提供、財源の保障など必要な施策を講じることを求めるとともに、みずからの施策を提起する。 (長、議会および職員の責務) (2)地方議会は、地方自治体における議事機関として、住民自治の原則にもとづいてその責務を果たさなければならない。地方議員は、住民と議会を結ぶとともに、住民が多様な参加を通じて地方自治を前進させるために、適切な役割を果たすことが重要である。 (3)職員は、住民に奉仕すべき職務を自覚し、住民の暮らしと人権を守るための行政の実現と、住民が主人公になっていくための施策の実現に努力しなければならない。そのためにも、職員の身分、労働条件、市民的・政治的自由などにかかわる諸権利が保障されなければならない。 (自治権の拡充) (2)国および地方自治体は、事務・権限の民主的再配分、関連する法令の改正や非民主的な関与の改善などにより、地方自治体の自治権の拡充に努める。 (3)地方自治体の自治権の拡充には、それにともなう財源が保障されなければならない。国および地方自治体は、地方自治体の財源保障と自主財政の確立に努力する。 (4)地方自治体は、住民の総意にもとづいて、住民の暮らしと人権を守る立場から、自主的な決定とそれを公正に遂行しうる能力を高めるために不断に努力する。 (国政の改革と地方自治) (2)国が不当な理由によって地方自治体の自治権を侵害しようとする場合、またはそれにつながる地方自治制度の改変をしようとする場合には、住民および地方自治体は、これに抵抗し、住民自治を守る立場から発言・提言・行動する権利を有する。 (住民の責務) (地方自治憲章) |