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9. 自治労連公契約モデル条例案

 このモデル条例(案)は、自治労連が、公契約運動のひとつの柱である「条例制定」運動の前進のために、公務・公共サービスに責任を持つ自治体労働者・労働組合として行う提案です。
[本モデル条例(案)は、ILO94号条約、全建総連試案などを参考に、自治労連弁護団の協力を得て作成しました。]

 

 

自治労連公契約モデル条例(案)

 

 (目的)
第1条 この条例は、○○市が業務対価を支払う請負、業務委託、委任、その他の契約等において、その業務に従事する労働者への公正な賃金、適正な労働条件の確保をもって、地域社会を豊かに発展させる公共事業・公共サービスの質の確保に資することを目的とする。
 (適用範囲)
第2条 この条例は、○○市が発注し、業務対価を支払う請負、業務委託、委任、その他の契約、公の施設の管理の代行(以下、公契約という)に適用する。ただし、随意契約であって、その業務対価が○○市長の告示する金額を下回る契約については適用を除外する。

 (入札及び指定管理者の指定等)
第3条 入札及び指定管理者の指定にあたり、○○市は、次に掲げる各号について、入札・応募の要件・基準としなくてはならない。
 一 業務に従事する労働者への公正な賃金、適正な労働条件の確保。
 二 業務の専門性、労働者の適正な配置、質の高い公共サービスの提供。
 三 環境や人権、地域経済への貢献
2 ○○市は、公共サービスの質及び業務の継続性の確保のため、これまでその業務に従事してきた労働者の雇用が継続されるよう努めなければならない。

 (受注者の責任)
第4条 公契約の受注者は、次の各号のいずれかに該当する労働者に対して、この条例に定める賃金、労働条件が確保されるよう、必要な措置を講ずる義務を負う。
 一 公契約の受注者に雇用され、もっぱらその公契約に従事する労働者。
 二 公契約の受注者から業務を請け負った者に雇用され、もっぱらその公契約に従事する労働者。
 三 公契約の受注者または公契約の受注者から業務を請け負った者に派遣され、もっぱらその公契約に従事する労働者。

 (公契約における賃金額)
第5条 公契約に従事する労働者に支払われる賃金額は、次の方法により決定される賃金に劣らない有利な賃金額としなければならない。
2 この賃金額は、その公契約と同種の職に従事する○○市職員に対して支払われている賃金(諸手当を含む)、及び○○市所在の事業所に勤務する同種の職の労働者に適用される労働協約等を基準に、○○市長が決定する。その職種等の詳細については、別に規則に定めるものとする。
3 ○○市長は、この賃金額を決めるにあたり、審議会等を設置するなどして、毎年、同時期に○○市が指定する利害関係のある労働者を代表する者、及び労働者を使用する者、また、学識を有する者の意見を聞かなければならない。審議会等の設置については別に定める。

 (公契約における労働条件)
第6条 公契約に従事する労働者に適用される労働条件は、賃金に関する事項を除き、次の各号に従い決定されなければならない。
 一 所定労働時間は週40時間を原則とし、労働基準法に従い運用されること。
 二 労働基準法、労働組合法、男女雇用機会均等法に違反しないこと。
 三 その他の労働条件、人権、男女平等に関する法令、施行規則などに違反しないこと。

 (受注者の連帯責任)
第7条 公契約の受注者は、その業務に従事する労働者が、その雇用者に対して有する、次の各号にあげる債権について、連帯して支払う義務を負う。
 一 公契約に従事したことで支払われた賃金が、この条例に基づき定められた賃金を下回った場合における、その差額賃金。
 二 法令または労働契約に基づく支払義務であって、公契約に従事したことに起因し発生した金額。

 (受注者による周知徹底)
第8条 公契約の受注者は、その業務が履行される事業場の労働者が見やすい場所に、常時次の事項を掲示して、業務に従事する労働者に周知を図らなければならない。
 一 この条例により定められた賃金額
 二 所定労働時間
 三 所定休日
 四 公契約の受注者が、前条にある連帯責任を負うべき者の氏名
 五 責任者の氏名及び連絡先

 (履行確保の方法)
第9条 公契約に従事する労働者から次の申し出があり、申し出に相当な理由があると認められるときは、○○市は申し出のなされた額の全部または一部について、受注者に対する支払いを留保することができる。
 一 公契約の受注者が、その業務に従事する労働者に対して、この条例に基づき負担すべき義務を履行していないこと。
 二 公契約の受注者が、その業務に従事する労働者に対して、支払うべき金額が確定しているにもかかわらず、その支払義務を履行していないこと。
 三 公契約の受注者に代わって、○○市がその業務に支払われる対価総額の中からその業務に従事する労働者に直接支払うことを求めること。
2 支払い留保の額は、その業務に支払われる対価総額のうち、その業務の種類と金額に応じて○○市長が告示して定める。
3 ○○市は、公契約の受注者に意見陳述の機会を与えた上で、公契約に従事する労働者からの申し出に相当の理由があると認められる場合、その申し出に応じて請求金額の全部または一部を直接支払うことができる。この場合、○○市はその労働者に直接支払った額について公契約の受注者に対する支払い義務を免れる。
4 ○○市は、公契約に従事する労働者に対して直接支払いを行ったことについて、重大な過失が認められる場合に限り、これにより公契約の受注者の蒙った損害を賠償する義務を負う。
5 ○○市は、直接支払いの申し出を認める証拠が不十分であると判断したとき、申し出をした労働者に対し、通知を発した日から30日以内に、公契約の受注者を相手として、その権利を確定するための訴訟提起、調停申し立て、仲裁申し立て等の法律上の手続きを行ない、かつ、その申し立て等が受理されたことを証明する書類を提出することを催告する。
6 申し出をした労働者の権利が法律上確定したとき、○○市は支払いを留保した限度で、その労働者に請求額を支払い、その額について公契約の受注者に対する支払い義務を免れる。
7 ○○市は、次の何れかの場合、公契約の受注者に対する支払い留保を解除する。
 一 申し出をした労働者に対して、通知を発した日から30日以内に、訴状等が受理されたことを証明する書類が、その労働者より提出されないとき。
 二 申し出をした労働者の所在が不明であるとき。
 三 その他、支払い留保を解除すべき相当な理由があると認められるとき。

 (公契約で定められるべき受注者の義務)
第10条 公契約には、公契約を締結した受注者の義務として、次の事項を定めなければならない。
 一 賃金の支払い義務
  ア 契約時に従事する労働者に支払われる賃金は、この条例に基づき定められる賃金を下回らないこと。
  イ 公契約に従事する労働者に支払われる賃金が、この条例に基づき定められる賃金を下回った場合、労働者を雇用するものと連帯して差額賃金を支払う義務を負うこと。
 二 賃金以外の労働条件確保の義務
  ア 公契約に従事する労働者を雇用する者が、労働基準法その他の労働に関する法令を遵守するよう万全の措置を講ずること。
  イ 労働者の所定労働時間については週40時間を原則とし、労働基準法に従い運用すること。
  ウ 法令または労働契約に基づく支払義務があって、公契約に従事したことに起因し発生した金額についても、労働者を雇用するものと連帯して支払い義務を負うこと。
 三 周知の義務
この条例によって義務付けられた事項について掲示を行ない、公契約に従事する労働者に周知を図ること。
 四 条例の定める手続きについての同意
この条例に定める支払い留保と直接支払いの手続きに異議なく同意し、これに従うこと。

 (監督と制裁)
第11条 公契約の受注者について、この条例で定める事項に違反する事実が認められた場合は、○○市長またはその指定する職にある者は、その受注者に対して、速やかに是正措置を講じることを命じなければならない。
2 公契約の受注者に業務を継続しがたい重大な義務違反が認められる場合、○○市は契約違反を理由として、その公契約を解除することができる。
3 公契約の受注者について、重大な義務違反が認められるとき、または、公契約の受注者が是正措置を講じることを命じられながらも、是正を怠ったと認められるとき、○○市長は、その受注者から聴聞を行なった上で、その者に対し期間を定めて新規に公契約を締結しないものとする処分を科すことができる。

 (調査)
第12条 ○○市長もしくはその指定した職にある者は、この条例の定めの履行状況を確認するため、公契約に関連する事業場に立ち入り、賃金帳簿、もしくは労働条件に関する書類の提出を求め、または、公契約の受注者及びその受注者から業務の一部を請け負った者、その業務に従事する労働者に対して質問を行なうことできる。
2 ○○市長もしくはその指定した職にある者は、公契約における賃金を定める資料を得るため、関連する事業場、労働組合または団体等に調査の協力を求めることができる。

 (異議申し立て)
第13条 公契約の受注者及びその業務に従事する労働者等は、この条例に基づく行政処分に対して異議を申し立てることができる。
2 ○○市長は、異議申し立てについて審査する第三者機関を設置しなければならない。第三者機関の設置については別に定める。
3 第三者機関は、異議申し立てがあったとき、30日以内に○○市長に対して、意見を述べなければならない。


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