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2015人事院勧告に対する声明自治労連中央執行委員会

2015人事院勧告に対する声明

 

 人事院は、8月6日、今年度の国家公務員賃金について、官民較差(1,469円0.36%)に基づく月例給の引き上げ、一時金についても0.10月の引き上げ勧告を行った。昨年に続く月例給・一時金ともの引き上げは、「すべての労働者の賃上げで景気回復を」を掲げた春闘から続く公務・民間共同のたたかいの成果である。それはまた、国言いなりの「給与制度の総合的見直し」を許さず、春闘の民間賃上げを公務員賃金、最低賃金の引き上げにつなげ、さらに翌年の賃上げへと結実させる「賃上げのサイクル」を取り戻す上で、重要な到達点を築くものとなった。

 

給与制度見直しは中止し職員全体の賃上げに

 しかしながら、この引き上げには、重大な問題点を指摘せざるを得ない。人事院は、俸給(給料)表自体は全体にわたって引き上げたものの、「給与制度の総合的見直し」の実施にともなう「現給保障」額の引き上げは見送る一方で、「官民較差」原資の8割を地域手当引き上げの前倒しに充てた。そのため、本来、職員全体に公平に分配されるべき「官民較差」が、「霞ヶ関」をはじめ「見直し」で地域手当支給率が引き上げになる都市部に集中される結果となった。

この6月の実質賃金は、2年以上にわたってプラスに転じることができず、「賃上げ」はあくまでも東京を中心とする大都市部、大企業中心のもので、未だ地方の中小企業に行き渡っていない。加えて、今年度の地域別最低賃金の目安額は、平均18円という低水準であり、かつ地域間格差がさらに拡大した。同様に、「見直し」による月例給の引下げで現給保障のさ中にある多くの職員、さらに地域手当不支給地などでは全く賃上げにならないというのは、職員の生活改善や人材の確保には到底結び付かないというだけでなく、賃金の地域間格差をいっそう加速させるもので、賃金格差や人口流出に苦しむ地方の再生を後押しするものとならず、断じて認められない。

 

臨時・非常勤職員こそ積極的な賃金改善を

 併せて、今や公務運営になくてはならない臨時・非常勤職員の賃金については、俸給(給料)表改定の反映を除いて、言及すらしていない。人事院は、労働組合との交渉で、非常勤職員の給与について、平成20年に定めた指針の内容に沿った運用が確保されていることを確認できているとしつつ、引き続き改善を促すとの回答に止まった。15春闘での果敢なたたかいによって、少なくない民間企業で非正規労働者の賃金改善が進められたが、公務が率先して「同一価値労働同一賃金」の原則に立つことはもちろんのこと、積極的な改善をすすめることで、地域・民間の賃金をさらに引き上げ、内需に裏打ちされた景気回復をはかることが求められている。

 

必要なのは「フレックスタイム制」より人員増

 人事院は、柔軟で多様な勤務形態の下で、ワークライフバランスの推進、職員の能力発揮や公務貢献が期待できるとして「フレックスタイム制」の導入を勧告した。この制度は、実質的に労働者本人にその日の労働時間の選択権がない「名ばかりの変形労働時間制」に過ぎない。これまで専ら「超勤手当」縮減のために行われてきた「ズレ勤」と同様に、職員の生活リズムを壊すだけでなく、窓口対応の必要などから、かえって長時間労働による健康破壊につながり、他方、職員個々の労働時間管理は煩雑となり、職場に混乱をきたしかねないものである。職場が求めているのは、確実な業務遂行と長時間労働の解消、休暇等の権利が行使できる人員確保にほかならない。

 いま、安倍内閣は、「世界一企業が活動しやすい国」をつくるため、一方で派遣労働や限定正社員の拡大など安上がりの労働力確保を図りながら、他方で、残業代ゼロ・過労死促進の「高度プロフェッショナル制」導入に代表される「労働時間など関係なく成果で賃金を得る」働き方として、「労働時間の弾力化」を進めようとしている。

公務でも民間でも、厳しい人員削減が労働者の生活と健康をむしばんでいる。政府が、こうした現実から労働者・国民の目をそらさせ、「夏の生活スタイル改革(ゆう活)」、そして民間企業でも僅か5%程度しか導入していない「フレックスタイム制」を、公務が率先して強行実施することは、公務・民間を通じて8時間労働制の原則をゆがめるものとして容認することはできない。

 

年金支給年齢引き上げ 生活できる賃金を

 来年(2016年)4月から年金の支給開始年齢が62歳へと引き上げられるもとで、「雇用と年金の接続」はいっそう切実な課題となっている。ところが人事院として、現在のような再任用の運用では、「公務能率や職員の士気の低下、生活に必要な収入が得られない等の問題が深刻化するおそれ」を指摘しながら、俸給表(給料表)改定に伴う若干の賃金改善に止まったことは納得できるものではない。今後、政府において、人事院が2011年に行った定年延長の段階的実施という「意見の申出」を踏まえ、改めて定年延長の実現を基本とした制度改善を求める。

 

「すべての労働者の賃上げで景気回復を」求めた公務・民間共同のたたかいは、改めて「賃上げのサイクル」に結実してきている。「平均7.8%の給与減額」に続く「給与制度見直し」とのたたかいは、政府・総務省の言いなりにはならない到達点を築き、「経済の好循環」を言う裏で「大幅賃上げ」を決して許そうとはしない政府・財界への重要な反撃として、「すべての労働者の賃上げ」に貢献してきた。

 今また政府は、骨太方針2015において、「公的サービスの産業化」や「行革インセンティブ」などとして公務・公共サービスとそこで働く労働者への攻撃を強めようとしている。

 自治労連は、この間の共同のたたかいの成果を確信に、生活改善につながる賃金引き上げ、「給与制度の総合的見直し」中止、権力に奉仕する公務員づくりを進める人事評価制度反対はもとより、公務・公共サービスを守り拡充し、その仕事を支えるための人員増、労働条件改善に向けたたかう。安倍「雇用改革」阻止、最低賃金の大幅引き上げと全国一律制確立、公契約法・条例制定、すべての労働者の賃上げに向け取り組む。そして何よりも、地域と職場を根底から破壊する戦争法案に反対し、平和を守るたたかいの先頭に立って奮闘する。

 

                                                                       2015年8月6日

日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会

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