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第154湯 渾々(こんこん)と湧き出る7つの湯 みちのくの秘湯

悠湯 旅情2013年10月号 Vol.479

大正ロマン・昭和レトロ 郷愁呼び起こす湯治場
岩手県北上市・夏油(げとう)温泉

渾々(こんこん)と湧き出る7つの湯 みちのくの秘湯

夏油温泉は、北上駅から路線バスで65分、焼石岳と駒ケ岳に挟まれた渓谷にあります。

東北に「秘湯」と呼ばれる名湯はあまたありますが、「夏油温泉」は、間違いなく「秘湯」です。雪深い渓谷にあることから、雪解けを待ってGW明けから11月上旬までの限られた季節限定の営業です。

温泉は、渓流沿いに「大湯」「疝気(せんき)の湯」「真湯」「女(目)の湯」の4つの混浴、女性専用「滝の湯」の計5つの露天風呂、内湯は「白猿の湯」と「小天狗の湯」の2つが男女別にあります。

混浴露天風呂は女性専用タイムがあり、女性も安心して露天風呂を楽しめます。露天風呂はすべての湯船が源泉であり、ある湯は底から、ある湯は脇の岩肌から渾々と涌き出ており、掛け値なしの「源泉掛け流し」です。また、それぞれ趣きも、湯温も異なり、1泊で合計7つの湯巡りを楽しむ人も多いといいます。

泉質はカルシウム・ナトリウム塩化物泉が基本で、湯舟ごとに少しずつ違いますが、どの湯も身体に染み渡り、日常の疲れを癒してくれる名湯です。

このほかに、「蛇の湯」という洞窟風呂がありましたが、東日本大震災によって内部が崩落して、現在は入浴禁止となっています。

「夏油」の由来はアイヌ語の「グット・オ」(崖のあるところ)から、また、お湯が夏の日に照らされてユラユラと油のように見えたので、後に「夏油」と転化したと言われています。

この湯を求めて来る多くの湯治客のために、ここには、旅館部とともに「薬師館」「経塚館」など4つの「自炊部」があり建物も「昭和レトロ」ならぬ「大正ロマン」さえ感じさせ、何ともいえぬ郷愁を呼び起こします。

近隣に見所も多く、夏油から車で1時間強で世界遺産の平泉の中尊寺や毛越(もうつう)寺、さらには宮沢賢治の故郷、花巻にも足を伸ばせます。また、焼石岳や駒ケ岳登山のハイカーも山歩きの疲れを癒している温泉です。

東日本大震災から2年7カ月。岩手県をはじめ、被災地では営々と復興への努力が続けられています。復興支援も兼ねての夏油での湯治はいかがでしょうか。

▲岩肌の割れ目から高温の源泉が湧き出している「大湯」

▲露天風呂のある渓流沿いに抜ける通路の両側に建ち並ぶ自炊部の宿や食堂

 


温泉メモ

【夏油温泉「元湯夏油」】

所在地/
岩手県北上市和賀町岩崎新田1-22
問い合わせ/
090-5834-5151
交通/
JR北上駅バス65分 送迎車あり
立ち寄り入浴/
大人500円
営業期間/
今年は11月10日まで(予定)