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第143湯 のぼりべつでもくだりは一緒 地獄に棲むのは心優しい湯鬼神

悠湯 旅情2012年10月号 Vol.467

火山がもたらす湯のめぐみ 登別(のぼりべつ)温泉 北海道登別市

のぼりべつでもくだりは一緒 地獄に棲むのは心優しい湯鬼神

 札幌から車で約1時間半、北海道南西部の支笏洞爺(しこつとうや)国立公園の中核に位置する登別市は、登別温泉を抱える北海道有数の観光都市です。  登別温泉は、大昔からアイヌの人々に薬湯として知られていたようです。1858(安政5)年に開湯、1905(明治38)年に日露戦争の傷病兵の保養所に指定されると名湯として全国的に有名になりました。「登別」の語源は「ヌプル・ペッ=色の濃い川」という意味のアイヌ語で、川の色が変わるほど豊富な温泉が湧き出しています。ちなみに「登別カルルス」は登別温泉からさらに奥の秘湯「カルルス温泉」のこと。  登別温泉には、約1万年前、日和山の火山活動によってできた爆裂火口跡があり、地獄谷と呼ばれる登別温泉最大の泉源です。おそるおそる遊歩道をすすむと、強烈な硫黄のにおいとゴボッゴボッと不気味な音を立て、いたるところで噴き出す熱湯や水蒸気はまさに「鬼の棲む地獄」の様相。  登別温泉の魅力はなんといっても1日1万トンもの豊富な湯量と泉質。硫黄泉、みょうばん泉、鉄泉など9種類もあり「温泉のデパート」と言われています。  5月1日〜11月30日までは鬼火の路と題し、地獄谷が夜間特別公開されています。足元の明かりだけを頼りに歩けば、人間の力の及ばない大きな自然を感じ、怖さも満点です。  登別温泉のシンボルは鬼。鬼の像や金棒があちこちに設置され、まるで鬼のテーマパーク。温泉街入口では巨大な赤鬼がお出迎え。地獄谷付近には江戸時代から祀られているという鬼祠と念仏鬼像があります。からくり仕掛けの閻魔堂もあり、時間になると温和な顔が地獄の大王に変身。「のぼりべつでもくだりは一緒」と寄り添う2匹のかわいい湯鬼神像も。どうやら登別の鬼は心優しい鬼のようです。  登別の魅力は温泉だけにとどまりません。世界的にも珍しい大きな湯の沼「大湯沼」があり、さらに少し山のなかに入った倶多楽(くったら)湖は原生林に囲まれたカルデラ湖で、摩周湖・然別(しかりべつ)湖と並び国内トップクラスの透明度、北海道の自然を満喫できます。

 

▲地獄谷入口にある鬼祠と念仏鬼像

▲ユーモラスな顔の鬼たちが街のあちこちに

温泉メモ

【登別温泉】

交通/
車・バス:新千歳空港〜登別駅(特急約47分)、
登別駅〜登別温泉(バス約16分)、
札幌駅〜登別温泉(特急約1時間13分、バス1時間40分)
車:千歳IC〜登別東IC約64キロ

【温泉銭湯 夢本(ゆもと)さぎり湯】

問い合わせ/
0143−84−2050
所在地/
登別市登別温泉町60
泉質/
硫黄泉、みょうばん泉