メニュー

第8景 山梨・大月市・名勝猿橋

いいとこよりみち発見伝2014年12月号 Vol.493

日本一の富士の眺めと美しい橋

「言語に絶えたり、筆に写しがたし」

山梨・大月市・名勝猿橋
201412-iitoko-1

▲猿橋。現存する日本三奇橋は猿橋のほかに、岩国・錦帯橋(山口県錦川)と、もう一つは日光・神橋(しんきょう)(栃木県大谷川)か蔓(かずら)橋(徳島県祖谷川)。諸説あります

 桂川と笹子川の河岸沿いに広がる山梨県大月市は、古くから甲州街道の宿場町、養蚕・絹織物の街として発展してきました。平地が少なく、家や田畑が山の斜面に段々につくられています。

 大月市では山頂から望む美しい富士山をシンボルとし、ふるさとの自然を後世に伝えようと1992年に秀麗富嶽十二景を選定し、富士山の眺めが日本一美しい街として熱烈PR中です。

 JR大月駅周辺には、登山靴にリュックを背負った人たちがちらほら。観光案内所に立ち寄り富士山を望む絶景スポットに出かけていきます。

 さて、今回の目的は富士の絶景ではなく日本三大奇橋の一つ・名勝猿橋(委員長代行ではありません)。

 桂川河岸の岩肌が切りたち足がすくむほど深い谷にまさに奇橋の名にふさわしい橋が姿を見せました。長さ30.9メートル、幅3.3メートル、高さ31メートル、の木製の橋です。両岸から日本家屋の屋根を思わせるような張り出した4層の刎木によって支えられ、橋脚をまったく使っていません。見下ろせばはるか下に桂川の急流が。

 推古天皇の時代(西暦600年ごろ)百済から来た造園博士の志羅呼が深い渓谷に阻まれ架けられなかった橋の建設を引き受けます。うまくいかずあきらめていたところ、たくさんの猿がつながり合って対岸へと渡っていく姿から思いつき、ついに橋が架けられたのが由来です。

 江戸時代は甲州街道に架かる橋として重要な役割を担いました。歌川広重は「言語に絶えたり、拙筆に写しがたし」とその美しさに感激し、最高傑作のひとつ「甲陽猿橋之図」を描いています。橋の北岸には「憂き我をさびしがらせよ閑古鳥」、南岸に「枯れ枝に鴉とまりけり秋の暮」との松尾芭蕉の句碑があります。

 現在の橋は1851年の資料をもとに1984年に復元されました。隣には近代的な橋もあって車はそちらを通りますが、向こう岸の中学校へは猿橋を渡って行く生徒もいます。橋の下には遊歩道があり見上げても美しい姿を堪能できます。

 近くに真木温泉があります。ph10.3のアルカリ性単純硫黄泉ですが臭いはありません。「海のものは一切出しません」が宿の売り。滋味深い山の幸、イワナやニジマス料理が体に沁みます。

よりみちメモ

【猿橋】

中央自動車道大月ICより車で15分、JR中央本線猿橋駅より徒歩30分

【真木温泉】

中央自動車道大月ICより車で20分

所在地/山梨県大月市大月町真木5353

交通/JR大月駅より送迎バスあり(要予約)

問合せ/0554-22-0146

201412-iitoko-2

▲真木温泉入口
201412-iitoko-3

▲猿橋のかかる桂川。両岸は切り立った岩肌