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シリーズ19 いちから学ぶ仕事と権利 自治体の公的責任を放棄 住民サービスを根こそぎ丸投げ 包括委託

地方自治体が行うべき住民サービス業務の大部分を一括して民間企業に委託し、臨時・非常勤職員を解雇・雇い止めして、受託する民間企業に身分を移管させる「包括委託」の動きが、各地の自治体であらわれています。

「包括委託」は、地方自治体が「住民の福祉の増進を図る」ために実施している業務を、民間大企業の営利の対象に開放する安倍政権の「公的サービスの産業化」(「骨太方針」2015年)の方針にもとづいたものであり、地方自治体の公的責任を放棄するものです。

この間のへの移行に乗じて「包括委託」が行われているのが特徴です。政府・総務省は、会計年度任用職員制度の前提として、「民間にできることは民間に委託せよ」と、徹底したアウトソーシングを自治体に求めており、参入をねらう大手民間企業も「包括委託」を各自治体に売り込んでいます。

国の圧力や民間企業の動きを背景に、会計年度任用職員制度移行にともなう財政負担増や人事管理の煩雑を避けることを口実に、「包括委託」を行おうとする自治体が一部あらわれています(表参照)。

「包括委託」の問題点

「包括委託」は、①自治体職員の業務を契約期間ごとに社員が入れ替わる民間企業が行うことで、業務に必要な専門性・継続性が失われ、住民の個人情報が漏えいするリスクが高まる、②臨時・非常勤職員は雇い止めとなり、受託会社に身分を移管させるとしているが、雇用される保障はない、③公権力の行使に関わる業務は自治体職員が担わなければならず、現場では自治体職員と委託社員との直接のやりとりが避けられず、これを行えば偽装請負となる、④受託企業が契約途中で撤退し、住民サービスに重大な穴が空く危険があるなど、公務公共サービスや自治体職員の雇用に重大な問題をもたらします。

包括委託の動き

静岡・島田市

市の嘱託員・臨時職員502人が担っている業務を対象に、2019年10月、2020年4月と段階的に民間企業に包括委託する方針を打ち出す。嘱託員・臨時職員は雇い止めとなるが、包括委託を受託する民間企業に雇用が引き継がれる保障はない。

岩手・陸前高田市

2019年4月より、市の①窓口業務を含む一般事務等支援業務、②図書館運営支援業務、③被災博物館資料安定化処理及び修理業務、④市内小中学校指導支援事業(学校用務を含む)など広範な業務を一括して(株)共立メンテナンスに包括委託する。雇い止めとなる嘱託員・臨時職員の雇用を引き継ぐかどうかは(株)共立メンテナンスが決めることとしている。

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