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第159湯 古くて新しい屈指の一大保養地

悠湯 旅情2014年3月号 Vol.484

古くて新しい屈指の一大保養地
静岡県熱海市

色褪せることのない王道の温泉地

 「温泉といえば熱海」とすぐ思い浮かぶほど有名な熱海の温泉。熱海は平地がほとんどなく、高台にある熱海駅を出るとすぐに坂道を下ることになります。海岸に沿った斜面に多くの宿泊施設等が立ち並ぶさまは、熱海を代表する景観。眼前におだやかな相模湾が広がり、沖には初島。天気がよければ伊豆大島を臨むこともできる絶景です。

 知名度が高いだけあって歴史も古く、開湯は約1250年も遡るとされています。徳川家康は熱海の温泉を好み、ここを幕府の直轄領としたことで風紀が保たれ、地位も確立されていきました。1924年に当時の鉄道省が熱海線を開通させ、また1930年代に東海道本線が通るようになったことで首都圏からの観光客が押し寄せ、庶民の一大保養地としていっそうにぎわい、新婚旅行や社員旅行の定番になりました。熱海は、古くから有名な温泉であると同時に、近代温泉地のさきがけでもあると言えます。

 宿泊観光客は1970年代に年間600万人を超えましたが、その後、大人数の団体旅行の衰退などにより減少を続け、現在では約300万人と半減。宿泊・保養施設の減少とともに、ピーク時に5万人を超えていた人口も、いまでは4万人を割り込んでいます。

 しかし近年、環境志向の高まりや原油の高騰によって自家用車での行楽が控えられる傾向が強まり、首都圏から近く、新幹線ですぐ行くことができるという熱海のよさが見直されています。日帰り温泉客も目立つようになり、また市職員によるさまざまな施策によって観光客も増加しており、「首都圏の奥座敷」としてのにぎわいを保っています。

 風光明媚に魅せられ、交通の利便性もあいまって、熱海に定住する人も増えています。このため、従来の大型宿泊施設から温泉付きのリゾートマンションへの転換といった変化も見られます。

 この連載では、2000年にも熱海を紹介し、衰えを見せる観光地を憂いました。しかし、それから14年、海・山・観光と温泉のすべてが詰まった「全部入り」の保養地である熱海の魅力は色褪せていません。

 熱海は、日本の温泉保養地の王道であり続けているのです。

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▲熱海港とその奥に広がる熱海サンビーチ。斜面にはホテルなどが多数建てられています
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▲夜を彩る花火大会。熱海でも最も華やかなイベントのひとつです

 


温泉メモ

【熱海温泉】

所在地/
静岡県熱海市
問い合わせ/

熱海市観光協会
0557-85-2222 http://www.ataminews.gr.jp/
交通/

JR東海道新幹線(東京駅からこだま号で約50分)または東海道本線(東京駅から快速アクティーで約90分)でJR熱海駅下車。各宿泊施設の送迎バスが多数あるほか、市内周遊バス「湯~遊~バス」も運行しています。
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▲熱海温泉のひとつ伊豆山温泉の「走湯(はしりゆ)」。日本三大古泉のひとつで、全国的にも珍しい横穴式源泉です