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第155湯 重要文化財の日帰り温泉施設・片倉館

悠湯 旅情2013年11月号 Vol.480

神と仏といで湯の旧中山道の宿場町
長野県諏訪市・上諏訪温泉

重要文化財の日帰り温泉施設・片倉館

諏訪湖畔に並ぶ温泉旅館街の一角に、周囲の建物とは明らかに趣を異にする、重厚感のある落ち着いた佇まいの洋風建物が立ち並んでいます。そのひとつが2011年6月に国の重要文化財に指定された、日帰り温泉施設「片倉館」です。

ステンドグラスがはめ込まれた煉瓦造りの洋風建築で、初めて来た時はとても温泉施設とは思えず、「これ何?」という感じで恐る恐る入館したものです。

浴室は広々とした大理石造りで、「千人風呂」と称する大浴槽があり、深さは110㌢、底には玉砂利が敷き詰められ、足裏を刺激する心地よい温泉です。泉質は単純泉で、熱めの湯が身体にしみわたります。2階には食堂も兼ねた大きな休憩室があり、一日ゆっくりと温泉を楽しみ、疲れをとることができます。

同じ敷地のなかに諏訪市立美術館、片倉館会館棟があり、3つの建物はいずれも「シルクエンペラー」と呼ばれた片倉財閥によって昭和初期に建てられたものです。『女工哀史』や『あヽ野麦峠』で知られている岡谷の製糸工場群の一つの経営者であった片倉財閥が、明治・大正時代の暗いイメージを払拭するためか、私財を投じて「地域社会への貢献と従業員の福利厚生」を目的に建てたもので、いずれも見ごたえのある建物です。

諏訪周辺は、諏訪湖以外にも名所に事欠きません。浮城として名高い高島城、7年に一度の「御柱(おんばしら)祭り」で有名な諏訪大社は諏訪湖周辺に「上社本宮」「上社前宮」「下社秋宮」「下社春宮」と点在しています。また、春宮の近くには画家の岡本太郎が「こんなおもしろいものはない」と絶賛した「万治の石仏」があります。お参りの仕方もユニークで、「よろずおさまりますように」と念じ、願いごとを心で唱えながら時計回りに3回りし、最後に「よろずおさまりました」と一礼すると願いがかなうと言われています。

諏訪は、中山道のいで湯のある宿場町として栄え、今でも江戸時代の旅籠と見紛う宿が現存し、往時の風情をしのぶことができます。また街のあちこちに住民が利用している温泉銭湯があり、旅人も気楽に汗を流せます。近くには、車山高原や八島湿原など、風光明媚な見所が一杯です。

▲「こんなおもしろいものはない」と岡本太郎が絶賛した「万治の石仏」

▲浮城として名高い諏訪氏の居城・高島城

 


温泉メモ

【日帰り温泉施設「片倉館」】

所在地/
 
〒392-0027 長野県諏訪市湖岸通り4-1-9
問い合わせ/
0266-52-0604
交通/
 
JR中央本線「上諏訪」駅下車徒歩8分
休館日/
第2・4火曜日
営業時間/
午前10時~午後9時
入浴料/
大人600円、小人300円