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2025人事院勧告に対する声明

2025人事院勧告に対する声明

 

 8月7日、人事院は国会と内閣に対して、国家公務員の給与改定に関する勧告と報告を行った。月例給は民間給与を1万5014円(3・62%)下回るとして、若年層に重点を置きつつ、その他の職員は不十分ながら俸給表を引き上げ改定するとした。一時金は、0・05月(再任用職員も0・05月)を期末・勤勉手当で等分に引き上げるとした。今回の引き上げは、春闘を起点に公務と民間の全国のなかまが共同してたたかい、比較対象企業規模を「50人以上」から「100人以上」に戻すとともに、すべての世代の賃上げを強く訴えてきた私たちの要求を一定反映したものである。
 しかし、春闘での民間の到達水準や4年に及ぶ物価高騰に追い付かず、生活改善につながらない極めて不十分なものである。ましてや中高年齢層や再任用職員の賃金水準は依然として低く抑えられている。再任用職員の一時金改善も放置されたままである。住民のいのち、くらしを守るためにさまざまな職場で奮闘する公務労働者の苦労に報いない勧告に、自治労連は強い不満の意を表する。

最低賃金を強く意識生計費にもとづいた大幅賃上げを

 月例給与水準が地域別最低賃金を下回る場合に差額補填する仕組みの創設に言及した。私たちが再三指摘し、高卒初任給が最低賃金を下回る実態は解消させてきたが、憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する趣旨の最低賃金を下回ることは論外である。そもそも地域別最低賃金の動向に左右される低賃金ではなく、あるべき生計費にもとづいた、すべての公務労働者の大幅賃上げこそが求められる。また、最低賃金と同様に地域間格差拡大の原因である地域手当についても、速やかに基本給に繰り入れたうえで廃止することを求める。

露骨な本府省優遇〝お手盛り〟は許されない

 なにより許しがたいのは、本府省の職員のみを東京23区・本店の企業規模1000人以上と比較し、生み出された原資が本府省業務調整手当に充てられたことである。本府省幹部職員には新たに月額5万1800円もの手当が支給されることになり、年間給与で100万円近い賃上げとなる。一方、国の地方機関の課長級でも年間賃上げは20万円に届かず、地方自治体職員は蚊帳の外である。
 行政は、国の地方機関や地方自治体の実行部門があってこそ、国民・住民に対して、全国均質の水準を確保している。行政は本府省だけでは成り立たない。

切実な現場の声を受け、通勤手当(自動車)が改善

 燃料費等が高騰するなか、自家用車通勤が必要な職員にとって、通勤手当の額および上限が改善され、駐車場等の利用についても対象とされたことは、大きな改善である。また、月の途中採用でも当月分から通勤手当を支給できるよう制度改正に言及したことも重要である。自治体でも、国に遅れることなく制度改善が必要である。

だれもが安心して働き続けられる制度の拡充を

 長時間労働への言及も、具体性に乏しいと言わざるを得ない。長時間労働の最大の原因である人員体制の拡充にこそ「不退転の決意」で臨むべきである。
 「兼業制度」の見直しや「育児や介護などに限らない様々な事情を抱えた職員の活躍を支えるための無給休暇」の導入を検討するとしている。だれもが安心して働き続けられる制度としての拡充は重要であるが、今後の動向に注視が必要である。
 一方、今年も非常勤職員についての言及は一切なかった。「3年公募要件」が撤廃されてもなお、雇用の安定化につながらない実態の改善こそ、今すぐ対応すべき課題である。

「能力・実績主義」の強化は時代遅れ 労働基本権の回復を

 人事行政諮問会議最終提言を受けた今年の勧告は、①「能力・実績主義」をいっそう強化し、②霞が関の一部エリートを優遇し、③三位一体の労働市場改革を公務へ導入させるものである。
 個人の「活躍」だけではなく、チームで協力して物事を成し遂げる「魅力」こそいまの公務に必要である。本府省業務調整手当や、昇格時の在級年数要件の廃止など、霞が関の一部「特急組」を優遇し格差を拡大させるものであってはならない。財界の求める人材づくりに加担する人事院は、財界の代弁者に成り下がっていると言わざるを得ない。職員のくらしを守るためにも、住民のためのいい仕事をするためにも、労働基本権の回復こそが必要である。

公共を取りもどし、一人ひとりが尊重される社会へ

 自治労連は、地方自治体が公務・公共の役割を発揮するためにも、全国どこでも誰でも、希望と意欲をもてる、賃金水準と公務員制度を求める。
 自治労連は住民とともに公共を取りもどし、一人ひとりが尊重される憲法と地方自治がいきる社会を実現するため、全力でたたかうものである。

2025年8月7日
日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会