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政府の「こども未来戦略方針」に対し、保育士の配置基準引上げとすべての職員の処遇改善を求める(談話)

2023年6月21日
書記長 石川 敏明

 岸田内閣は13日、「こども未来戦略方針」を閣議決定した。その中身は、いずれもこども・子育ての抜本的な対策とは程遠いものとなっている。自治労連は、若者や子育て世代が切実に願う、こども・子育ての抜本的な対策と、それを担う保育・学童保育など体制拡充を強く求める。

 「こども未来戦略方針」では、子育てに係る経済的支援について、「児童手当の所得制限の撤廃」(2024年度中に実施を検討)、「出産一時金の大幅な引上げ」(来年度からの実施を進める)、「短時間労働者への被用者保険の適用拡大、最低賃金の引上げ」(引き続き取り組む)などを掲げている。しかし、いずれも実施時期がはっきりせず、若者や子育て世代が一番求めている、高等教育費の負担軽減や無償化、最低賃金1,500円以上には言及せず、学校給食費の無償化は実態調査に留まっています。

 こども・子育て世代の支援拡充では、保育について、「1歳児及び4・5歳児の職員配置基準について1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は30対1から25対1へと改善」、「保育士等の更なる処遇改善を検討」を方策とした。しかし、「職員配置基準の改善」については、加藤厚労大臣が記者会見で回答したとおり、配置基準そのものの引き上げではなく、保育士を配置した施設へ運営費を加算して支給するのみである。しかも、運営費が一般財源化されている公立保育所では、処遇改善も含め、実施されないことが危惧される。現場の保育士からは、「加算では、保育所間に職員配置の格差がうまれる」「公立保育所では処遇改善が実施されていない、実態を調査してほしい」と切実な声があがっている。

 また、「就労要件を問わず利用できる新たな通園給付『こども誰でも通園制度(仮称)』を創設」(2024年度から制度化)については、すでにモデル事業を実施した東京都文京区では、今月1日に利用申し込みを開始したところ、初日だけで100人以上の申し込みがあり、一時停止する事態になっている。現場からも、「体制が整っていないなかで実施すれば、こどもの安全が守れない」と危惧の声があがっている。

 学童保育では、放課後児童クラブの待機児童の受け皿拡大、常勤職員配置の改善が示されたが、支援員不足の要因となっている「参酌基準」の改善にはいっさい触れていない。

 これらの財源については、年3.5兆円の子ども予算を安定的に確保する必要があるとしている。しかし、16日閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針)では、5年間で43兆円もの大軍拡をすすめる一方、子ども予算については「社会全体でどう支えるかさらに検討する」とし、具体策は年末まで先送りすることになった。しかも、「こども未来戦略方針」では、「2028年度までに徹底した歳出改革を行う」とし、診療報酬・介護報酬の抑制や給付削減など社会保障費の削減が掲げられている。

 自治労連は、全国に広がった愛知の「子どもたちに、もう1人保育士を!」などの運動をさらに強化し、安全・安心で豊かな保育の実現のため、保育士の配置基準引上げと、保育・学童保育に関わるすべての職員の処遇改善の実現をめざし、大軍拡優先や社会保障の削減による財源確保でなく、国の責任でこども予算を確保することを強く求める。

以 上