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医療費抑制政策を転換し、住民のいのちを守る 地域医療の実現を ~総務省「公立病院経営強化ガイドライン」に対する見解(談話)

2022年4月28日
書記長 石川 敏明

 総務省は、「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(以下「経営強化ガイドライン」)を策定し、3月29日に都道府県知事や政令指定都市市長など地方公共団体あてに通知した。(総財準第72号「公立病院経営強化の推進について(通知)」)

 総務省は、2007年に「公立病院改革ガイドライン」、2015年に「新公立病院改革ガイドライン」を通知し、地方自治体に対して「経営主体の統合、病院機能の再編」、つまり自治体病院の統廃合を求めてきた。しかし、コロナ感染拡大の事態をうけ「感染症拡大時の対応における公立病院の果たす役割の重要性が改めて認識される」として、「経営強化ガイドライン」では、地方自治体等に新たに策定を要請する「公立病院経営強化プラン」から「再編・統合」を求める文言がなくなっている。

 これは、自治体病院をはじめとする公立・公的病院が、新型コロナ感染症対応において重要な役割をはたしていることを総務省が認め、言及せざるを得なくなったものであり、再編・統合に反対して運動をすすめてきた自治労連などの国民的運動の成果である。

 その一方で、「経営強化プラン」では「経営強化の取組」を求めている。その内容として、「役割・機能の最適化と機能分化による連携強化」を挙げ、なかでも「地域において中核的医療を行う基幹病院に急性期機能を集約」「基幹病院以外の病院等は回復期機能・初期救急等を担う」などとして、地域に密着した中小規模の公立・公的病院の役割と機能を縮小させることを前提にしている。さらに従来のガイドラインに引き続いて「経営形態の見直し」に言及して、地域医療における公立・公的病院の役割をいっそう後退させようとしている。

 また、「医師・看護師の不足」を認めながら、「限られた医師・看護師等の医療資源を地域全体で最大限効率的に活用する」として、「特に不採算地区病院等への医師派遣を強化」を挙げるのみで、増員や体制拡充にはまったく言及がないことはきわめて重大な問題である。

 そもそも政府は、新型コロナウイルス感染症拡大以前の方針である「全世代型社会保障改革」や「地域医療構想」による医療費抑制などの社会保障費削減政策をまったく転換していない。これでは、公立・公的病院にかかる方針を根本的に転換するものとは言えず、誰もが安心して医療を受けられる地域医療を実現することにはなりえない。

 自治労連は、新型コロナ危機のもとであらためて浮き彫りになった公立・公的病院の役割をはたし、住民が安心して住み続けられる地域医療を守り、さらに発展させることをめざして、共同を広げて全力で運動にとりくむことをあらためて表明するものである。

以 上