メニュー

2021年度地方財政計画について(談話)

保健師増員予算が措置されたものの、依然不十分な財政措置

抜本的な財源保障求める

2021年2月2日

書記長 石川 敏明

 菅内閣は2021年1月29日、2021年度地方財政計画を閣議決定した。地方の一般財源総額は、税収減により前年度を741億円下回る63兆3577億円となっている。一方、地方交付税は前年度から8503億円増の17兆4385億円となっている。臨時財政対策債は前年度より2兆3398億円増大して5兆4796億円となっている。地方の財源不足は前年度より5兆5937億円増加して10兆1222億円と大変厳しい状況になっている。地方交付税は前年を上回ったが、地方自治体の財源を保障し、財源格差を調整する本来の役割を担うものになっていない。コロナ対応で、地方自治体の財政がひっ迫していることに対する支援も何もない。地方交付税法定率の引き上げをはじめとした抜本的な制度改正こそが求められる。

 保健所については、新型コロナウィルス感染症への対応を踏まえ、恒常的な人員体制強化を図るため、感染症対応業務に従事する保健師を2021年度から2年間かけて900名増員(2021年度約450名増、2022年度450名増)できるよう、地方財政計画に必要な職員数とその予算を計上した。これは、自治労連が度重なる府省への要請、提言(案)発表や機会あるごとに職場の切実な声を発信し続けた成果である。現場では応急態勢を敷きつつ、年度途中での保健師の採用や、さらには時間外・休日勤務をしながら急場をしのいでいる実情をふまえ、即時の増員が待ったなしである。本来業務である母子保健や精神保健などの業務を後回しにせざるをえず、感染対策や「住民のいのちと健康」を守る保健所全体の体制拡充が喫緊の課題である。自治労連は、引き続き現場の声に寄り添い、体制拡充の要求を掲げるとともに、早期の実行を求めるものである。

 地方公務員の人員については、給与関係費における地方財政計画上の職員数について、一般職員(教職員、警察官、警察事務職員及び消防職員を除く職員)については、保健所以外に児童虐待防止対策の強化による児童福祉司等の増員920人を含め合計5,969人の増員としている。これらの措置は一定の改善ではあるが、職場の実態からすれば極めて不十分である。地方公務員数は、総務省の地方公務員定員管理調査でも1994年をピークに連続して削減され2013年以降微増の状態であり、時間外勤務の上限規制が導入されて以降、職場の業務量に見合った人員配置がされていない。職員への負担増や、公務公共サービスの低下は依然として深刻である。地方自治体が業務に必要な人員を確保できるように、抜本的な財政措置を行うことをあらためて求める。

 会計年度任用職員制度の平年化による期末手当は支給月数の増によって生じる経費について、地方財政計画に所要額(約700億円)を計上し、地方交付税措置を講ずるとしている。所要額が提示されなかったが、今回の措置は、期末手当の支給に要する経費のみであり、事務処理マニュアルにある「常勤職員の初任給決定基準や昇給の制度との権衡(つりあい)を考慮」などは一切考慮されておらず、無責任な対応と言わざるを得ない。

 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、デジタル変革による「新たな日常」の構築のため、国・地方を通じたデジタル・ガバメントの推進を「自治体DX推進計画」で着実に進めていくための経費として、1,509億円を計上している。システム移行のために必要となる準備経費やシステム移行経費を全額国費で賄うこととしている。原則としてすべての地方公共団体において、マイナポータルの電子申請受付機能(ぴったりサービス)を活用し、マイナポータルと地方公共団体の基幹系システムとの接続経費補助に250億円を計上している。また、市町村がCIO補佐官等として外部人材の任用等を行うための経費について、特別交付税措置を講じることとしている。自治労連は、デジタル技術は、住民福祉の向上と、自治体職員の労働条件の改善に活かしていくことは必要と考える。しかし、国が進めようとしている「デジタル化」は、それと裏腹に住民の個人情報を民間企業のもうけと国民監視に活用するねらいがある。デジタル技術は真に住民と自治体職員のために使うという基本的立場を前提に取り組みをすすめなければならない。

 国がやるべきことは、国民が全国のどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることにある。自治労連は、地方自治体が憲法に基づき「住民の福祉の増進」(地方自治法)を図る役割を発揮するために、国が責任を持って地方財源を保障することを強く求める。地方交付税については「三位一体改革」で大幅に減らされた額を元に戻し、地方の財源格差を調整し、財源保障の機能を果たすよう制度の抜本的な拡充を図ることを求める。自治労連は、2021年度政府予算案が審議される通常国会に対する取り組みをはじめ、公務公共サービスを支える地方財政を拡充させるために、引き続き住民、自治体関係者との共同を広げてたたかうものである。

以上

関連記事

関連記事