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自治労連が新型コロナ下での「自治体病院実態調査(中間報告)」と「自治体病院政策提言(案)」を公表

 自治労連は11月30日、7月に行った「自治体病院実態調査」の中間報告と「新型コロナウイルス感染を止めるため地域医療体制の拡充を「住民のいのちとくらしを守り切る」ための提言(案)-自治体病院版-」を公表し記者会見を行いました。

 増田副委員長は、「医療機関では人員不足と感染対策で、すべての職員がストレスを抱えながら奮闘している」と述べた上で、「自治体病院の職場実態調査」の中間結果について説明。新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた病院の約7割を公立・公的病院が占めていること、夜勤が2交代職場で月10回、3交代職場で月16回という回答があったこと、人員体制について「通常時から全く足りない」が15%、「4月の人員が全く足りない」が25%に上ったこと、9月の追加調査では時間外労働・夜勤回数などが4月に比べて落ち着いたようにみえるものの他部署からの人員のやり繰りでしのいでいる一時的な小康状態であることなど、依然として自治体病院が厳しい状態にあることを報告しました。

 「自治体病院政策提言(案)」については、高柳副委員長が説明。「今の事態は、国が進めた医療費削減の医療政策と自治体病院の統廃合が誤りであったことを明らかにした。長時間過密労働と人員不足で、通常時から逼迫している医療体制が新型コロナウイルス感染拡大によって持ちこたえられなくなったということであり、国の対応はあまりに無策である。病院職員の労働環境を改善することは、住民のいのちを守るためにも不可欠だ」と、抜本的な対策と住民のいのちを守りきる地域医療政策への転換が求められていることを訴えました。

 また、新型コロナウイルス最前線の現場で働く仲間の状況について、自治労連医療部会議長の鮫島彰さんが全国の職場実態を訴えました。

「実態調査」「政策提言(案)」は以下からダウンロードしてください

感染拡大期(4月)の自治体病院職場実態調査(中間報告)No.1

「住民のいのちとくらしを守りきる」ための政策提言(案)-自治体病院版-

 

【現場からの訴え】鮫島彰さん(自治労連医療部会議長・神奈川県職労連)

 2月から全国の自治体病院では新型コロナウイルス患者の受入れを行ってきた。今までになかった業務が増え、新型コロナ患者対応に多くの看護師が必要となった。しかし人員は増えることなく現在に至っている。11月の第3波以降各地でコロナ専門病院・専用病棟が開設されているが、必要な職員が足りずスムーズな患者受入れが困難。自治体病院から職員の派遣を受けている病院もある。

 大阪のある病院はコロナ病棟として中等症患者を最大15名受入れているが、メンタル面を考慮し看護師は全体の半数を2ヶ月ごとに異動させている。大阪府からの3床増床要請を、病院内の人員やり繰りで受ける予定。今後大阪コロナ重症センターが開設予定だが、看護師・臨床工学士を集めることが非常に困難。現時点で自分の病院でも人員を集めることが困難な中、大阪府からの要請で派遣を出す予定。大阪はどの病院も改めての増員は全くなく、物資不足よりも人員不足が心配だとのこと。

 東京のある病院は、11月21日からの急激な感染症患者の増加で重症者も増えている。入院患者が増える中で現在の夜勤4人態勢を5人にする予定だが、人員が増えないため1人あたりの夜勤回数が1ヶ月10回以上になることが目に見えている。患者は検査結果が出てからの入院になるため夜勤帯での入院が多く、夜勤職員の業務煩雑化に拍車がかかる。

 立地自治体だけでなく周辺地域の患者も受け入れている北海道のある病院は、現在1フロアを新型コロナ専用病棟にしている。11月以降発生したクラスター3件のうち2件が病院で、その病院は外来診療を停止。急激に患者数が増加したため、26日からは新規患者の受入れを中止した。周辺地域の医療供給体制が厳しく、医療崩壊につながることを危惧している。

 愛知県のある病院では、新型コロナ病棟増床で夜勤体制を3人→4人にするため、一般病棟から1名ずつ異動を行った。術後患者が入るハイケアユニットには新型コロナ患者以外を入室させず、他の患者は直接一般病棟へ帰す対応となった。一般病棟は看護師1名減の中、通常対応の他に術後患者の対応もしなければならない。これは愛知県だけの話ではなく、全国的に起こっていることなのではないか。

 多くの病院は新型コロナ患者を受入れつつ、今までの業務も行っている。新型コロナ患者対応での防護具着用は非常に時間がかかり、重症化すれば人員も多く必要になる。通常は看護基準7:1で対応するところ、現場からは新型コロナ中等症以上の患者対応には3:1が望ましいとの声が上がっている。コロナ専門病棟だけが忙しいわけではなく、それ以外の業務も煩雑になっており、病院全体が大変な状況になっている。

 

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