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保健所実態アンケートと保健所提言(案)の記者会見に大きな反響

 自治労連は10月12日、「【保健所】感染拡大期における職場実態に関する調査」の中間報告と、それを基に作成した「新型コロナウイルス感染を止めるためPCR検査拡大と保健所の体制強化を『住民のいのちとくらしを守り切る』ための提言(案)-保健所・公衆衛生版-」を発表する記者会見を行い、NHKニュースや新聞各紙に取り上げられました。

 会見では高柳副委員長、長坂副委員長のほか、現場の声を届けるため、保健師の山本民子さん(東京)と診療放射線技師の梁瀬和美さん(千葉)が訴えました。

 最初に長坂副委員長が、「第一線で働く仲間は朝から夜中まで休みもなく、残業が月100時間超のケースもある。住民のいのちと健康に責任を持ち、保健所が役割を果たせるように体制強化を図ることは喫緊の課題だ」と述べ、「保健所の職場実態調査」の中間結果について説明。続いて高柳副委員長が、「保健所提言(案)」について説明し、2009~2010年の新型インフルエンザ流行の教訓として「新型インフルエンザ対策総括会議」が今後の国の感染症対策拡充の必要性を強調し保健所や地方衛生研究所の組織人員体制強化を提言していたにもかかわらず、政府が報告書を放置し逆に公衆衛生行政を縮小してきた実態を指摘しました。

 続いて新型コロナウイルス最前線の現場で働く仲間として、山本民子さんと梁瀬和美さんが自身の職場の実態について発言(後述)。

 記者からの質問に対しては、「残業の申請手続きをするくらいなら一刻も早く帰宅したいという心境で、サービス残業の実態については過小評価とすら思える。応援職員は期限が来れば元の職場へ帰ってしまい業務の継続性が保てず、新しく来た応援職員に一から連絡しなければならないのが負担。職員のメンタルにも負担がかかり職場の会話がギクシャクしている。昼休みは5分で食事を終えて仕事に戻り、休みが取れない。応援職員を派遣すると元の職場は欠員1で、日常業務にも支障をきたし区民サービス低下につながる。健康診断など日常業務を止めてしまうと、相談案件が潜在化してしまい問題が爆発した時に対応できない」(山本さん)、「検体採取をする・しないが半々というのは、検査業務の集中化で検査できる保健所が減っているのではないか。地域保健法以後の感染症対策を疎かにしてきたあらわれではないか」(梁瀬さん)と応えました。

山本民子さん(保健師)の訴え
 江東区の保健相談センターで働いている。地区担当制の保健師は担当地区の特性を把握し、点と点を結び感染拡大の予兆を見逃さずクラスター発生を予防する目を持っている。これは正規の専門職員だからできる事で、応援職員や兼務、人材派遣では継続的に感染源をみる力が途切れて感染拡大の予兆を見逃す可能性がある。感染者への感染状況の聞き取りは半日以上かかる事もある。入院搬送やホテル療養の手配、他自治体へ依頼する濃厚接触者の検査や状況把握、職場の疫学調査を依頼しないといけないため、新型コロナ発生届が10人も出た時は残業を覚悟しなければいけない。
 個人情報に関わるため積極的に話したがらない人にこれ以上感染を広げたくないと何度も説得したり、毎日の健康観察時の世間話で信頼関係ができて最終日にやっと話してもらえたりしている。疫学調査から見えてくるのはその人の生活と家族関係。なぜこの人が感染したのか問いながら疫学調査をするが、これは結核の疫学調査で培ったもの。症状や持続期間、改善傾向を聞き取り、経験談や教科書に載っていない事を蓄積しての感染症に備え、市民には衛生教育で返していく。保健所が減り、保健師の定数が減って職員が減り、保健師をめざす学生が減り、精神・母子・高齢者・虐待・職員の健康など分野ごとに保健師が分散配置されると、感染症を経験した保健師が少なくなる。今回のようなパンデミックや災害が発生すると疫学調査が困難になり、区民の健康を保障することができない。有事にもすぐに対応できる余裕を持った保健師数の配置が必要だ。

梁瀬和美さん(診療放射線技師)の訴え

 自分の勤める県の保健所は感染症担当の人員は昨年比+1だが、結核担当が-1で総員は変わっていない。現在も新型コロナの感染者数は減少しておらず、結核担当の保健師1人が常時新型コロナ対応をしていて結核担当は-2の状態。人材派遣の応援もあるが、自分も新型コロナ関係書類の発送などに手を取られて本来の結核業務に支障をきたしている。

一番の要望は正規の担当職員を増やしてほしいということ。現在は会議室に新型コロナ対策本部を設置し対応している。他部署からの応援、県・市町村からの応援、人材派遣など日中は20名超で対応しているが、17時を過ぎると感染症対応職員3~4名のみ。7月の厚生労働省要請でも強く要請したが『交付税の関係もあり年度途中での増員は難しいだろう。予算は潤沢にあるので非常勤職員や民間を活用してほしい』との回答だった。嘱託や人材派遣の職員は増えたが、担当職員の負担はさほど軽減していない。求めるスキルがある人材が集まらず、かえってそのフォローに時間がかかってしまっている状況が多々ある。感染者を増やしかねないGoToキャンペーンや、感染者の健康観察を保健所が行うことなどを見直してほしい。

 

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