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自治労連公営企業評が第36回研究交流集会(なごや)を開催

持続可能な公営企業の発展のため住民と対話を

 人口減少、高齢化、インフラの老朽化など、水道事業をはじめとする公営企業はその持続性が危ぶまれています。更に国の方針により職員は削減され続け、受け継がれてきた技術・技能は喪失し、同時に労働組合の組織力も低下しています。各地域の公営企業で働く組合員は、今後の活路をどう見出していくか苦悩している状況です。

 

【講演と基調報告】

 講師として招いた仁連成安造形大学客員教授は、人口減少が進む状況にもかかわらず、経済成長と行政の経費削減を前提とした広域化や民間活用では将来性がなく、環境やエネルギーの問題等と同様に地域社会を構成する一つの要素として俯瞰的に公営企業を捉えなおし、開かれた視点で将来のビジョンを描く必要性を説きました。

 近藤事務局長は、政府が公務の市場化を着々と進めてきた先に今回の改正水道法があり、その中身はまさに国の責任放棄とも言えると訴え、その法体系の矛盾点を指摘しました。民営化計画については「大阪市、奈良市の議会で否決、浜松市も市長が凍結したこともあり宮城県以外に表立った動きはないものの、広域化を先行して推進することで市町村議会の関与を減らし、包括委託から民営化への布石とする方針が明白だ」と警鐘を鳴らしました。

【特別報告】

 各地域からは、住民との共同や職員採用への独自の取り組みが報告されました。

 大企業ファーストと行政サービスの切り捨てを露骨に推進する政党が支持を集める関西では、近畿公企が早くから住民と共同して学識者や活動家の協力を得ながら、自治体の議員も巻き込み、行き過ぎた政策に歯止めをかける一定の成果をあげています。

 名古屋からは、上下水道局職員の削減に対し技術継承と採用を確保するための取り組みである「協働」について報告。技術職員と技能労務職員、更には事務職員も水道事業に携わる一員として職種を越えた「協働」の体制を構築することにより根幹業務を明確にし、必要となる職員の継続的な採用を実現させる道を探っています。

 和歌山では、水道事業の職員が15年で半減し人件費は下がったものの、増大する委託料と大滝ダムの負担により結果的に健全な財政を歪め、更なる合理化を目指す当局に対し、ビラまきなどの運動を通じ住民へ理解を求め、市長から合理化方針を取り下げる発言を引き出しました。

 水道民営化トップセールスリストに5事業体の名があがる東海圏では、民営化を食い止めた浜松での民営化反対大規模集会の成功を皮切りに岐阜市、岡崎市、三重県(津市・鈴鹿市)でリレーシンポジウムを開催。更に12月14日に四日市市、来年9月には浜松市で1000人規模の集会を開催し浜松市市長に民営化「撤回」を迫る動きをつくっています。地元住民をはじめ様々な団体がそれぞれの枠から踏み出し、ワンイシューで共闘する運動の成果を報告しました。

【積極的に住民との対話を】

 近藤事務局長は基調報告の中で「住民と対話する中で、公務員バッシングを感じたことがない」と語り、労働組合は臆せず住民の中に飛び込んでいく必要性を訴えました。

 また、和歌山水道労組の伊藤書記長は、「技術継承はマニュアル化でカバーできるものではなく、一度委託化されれば貴重な技能や技術を取り戻すことはほぼ不可能」という経験をから、「公務に必要なノウハウを維持し、住民に対する責任を持ち続けて行くことは、私たちの雇用や労働条件の向上に繋がる」と語りました。

 現在の地方自治では、大部分の住民が状況を認識するのは事後となるケースが大半です。一度決まってしまえば元に戻すことは現実的ではありません。そのために小規模であっても地道に学習会や各種集会を開催し、住民と対話する中で公営企業の実情を理解してもらいながら、住民本位に立脚した公営企業のあり方、例えば広域化ではなく各地域の特性に応じた分散型社会を住民とともに考え、作り上げていく。こうした従来の組合運動から一歩踏み出し、組織内のみに止まらない取り組みを行っていくことを確認しました。

【分科会一覧】

◎第1分科会:現役の労働者として対案を持ち、住民と対話することが重要

◎第2分科会:市民との対話をどう作るか、各地の経験を交流

◎第3分科会:公営バス交通政策

◎第4分科会:検針員労組懇談会

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