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自治労連が「第4回全国給食シンポジウム」を開催

いのちと健康を守る給食の役割に確信

 自治労連は7月30日、静岡県浜松市のホテルコンコルド浜松で、「第4回全国給食シンポジウム」を開催しました。給食の今日的な意義と役割を住民とともに考え、充実に向けた課題と展望を明らかにすることを目的に開催したもので、調理員や栄養士、市民、保護者や農業者、研究者など全国17府県から180人が参加しました。
 開会にあたって、主催者を代表して自治労連・福島功副委員長があいさつ。「全国では中学校給食の実施をはじめ、給食の充実を求める声が広がっている。その一方で国は学校給食に係る地方交付税を安上がりの民間委託で算定するトップランナー方式を導入している。給食の民間委託を許さず、自校直営で充実させる取り組みを進めよう。給食は、災害時の被災者支援、地産地消や農業振興など地域の安全安心、まちづくりにも重要な役割を果たしている。本日のシンポジウムでは、全国各地の実践例を学び合い、自治体で働く給食調理員の役割に確信を持とう」と述べました。
 続いて、静岡自治労連の菊池仁副委員長が現地歓迎のあいさつ。「浜松市で学校給食が民間委託されたある学校で、調理業務を安く請け負った委託業者が新学期直前になっても調理員が集まらずに突然辞退し、1学期間給食が提供できなくなった。アレルギー食は何とか市の給食調理員の奮闘で対応したが、自治体が責任をもって提供しなければならない給食は直営でなければならない。子どもたちの食の安全と住民のいのちとくらしを守る自治体の役割を果たすためにも、シンポジウムで大いに話し合おう」と述べました。

神谷信將氏

「身体づくりは栄養から。豊かな食育で人生の課題を解決できる力をつけよう」~神谷氏が記念講演
 続いて、神谷料理研究所の神谷信將氏が「食と笑顔と心の持ち方」と題して記念講演。「身体づくりは栄養から。食育は体に必要な栄養素を取り入れるための工夫であり、筋肉と頭脳の両方を支えるもの。旬の食材を楽しい食卓で美味しく食べることが必要だ。子どもたちには、食育を通じて躾(しつけ)を伝え、農業体験を通じて食への感謝の気持ちを持てるようにすることが大切。豊かな食育で、人生の課題を知識や知恵を総動員して解決できる“地頭力”をつけよう」と、ユーモアも交え、多彩な調理レシピも紹介した講演に、参加者は聞き入りました。

調理員、保護者、生産者・・・給食の大切さと役割を語る。
 シンポジウムでは、コーディネーターに自治体問題研究所常務理事の竹下登志成さん、シンポジストには給食調理員・自治労連現業評議会給食委員会の山口恵さん、保護者でつくる「浜松の学校給食をもっとステキにする会」の川嶋弘美さん、浜松市の野菜農家で「笑顔畑の山ちゃんファーム」代表の山下光之さん、浜松市の元給食調理員の佐野百代さんが報告・発言しました。

「調理はチームワークが大事。自信をもって出せる給食でなければ」~山口恵さん
 山口さんは「子どもたちが自分の身体に良いものを食べる選択肢を身につけるのが給食の役割。小学校生活の6年間、毎日食べる給食は、自信を持って出せるものでなければならず、子どもたちの心と身体が成長できる給食を目指したい豊かな給食を提供するためには、調理員や栄養士のチームワークが必要。子どもたちが落ち着いて勉強ができる環境にするために、おいしく食べられる給食をつくって残菜をなくすことや、食育について調理員と先生たちとの勉強会、アレルギー対応での保護者懇談などに取り組んでいる」と報告しました。

「子どもたちに前向きに生きる力を湧き出す給食は素晴らしい」~川嶋弘美さん
 川嶋さんは、自分の長男が小学校に入学した時などをきっかけに、子どもたちが食べるものに何でも感じ、行動しようと思うようになった。子どもたちに前向きに生きる力を湧き出す給食はとても素晴らしい。給食を視察し、SNSやランチ会議などで情報を交流している。市には給食費改定に対する陳情や、給食容器の改善、子どもの貧困問題などの課題で活動している」と報告しました。

「農業を通して、感動・喜び・笑顔の和をつなげたい」~山下光之さん
 山下さんは、「農家は愛情をこめて生産している。命をつなぎ、命を守る役割を持つ食材や、給食に関わっている人への感謝の気持ちを持ってほしい。給食で使う野菜の発注は1月半ほど前からある。発注に応じた野菜を提供するには難しい面があるが、地産地消を進めるためには困難をクリアしていく必要がある。地元の農家を守るためにも、安心して給食の食材を提供できる方法をこれからも考えていきたい」と述べました。

陶磁器の食器、木製のおひつなど、40年間の給食体験を語る~佐野百代さん
 浜松市の給食調理員として40年以上勤務した佐野さんは、小学校にランチルームを設置させたり、陶磁器の食器を利用したこと、給食時間におむすびをにぎる「なかよし給食」や、備蓄米の活用、木製のおひつを使ってごはんを出したことなど、豊かな経験や歴史を語り、「子どもたちに食の大切さを実感してもらえる給食は、これからもますます大切」と語りました。
 参加者からは「地元の農家が作った農産物を給食の食材に取り入れている。『今日は僕のおじいちゃんが作ったお野菜の給食だよ!』と喜んで教室を駆け回る子どももいる。つくる人も食べる人も、顔の見える給食を提供していきたい」「大量調理ではなく、自分の学校でつくった給食を食べさせてあげたいという思いで、自校調理を求める署名活動にとりくんでいる」「長野県上田市では、給食まつりに取り組み、市民に給食の大切さを知らせる取り組みを進める中で、直営の堅持と22年ぶりの給食調理員の新規採用を実現させた」など、各地の取り組みや給食への思いが発言されました。
 シンポジウムのまとめを行ったコーディネーターの竹下さんは、「給食を良くするためには、保護者と給食の現場、生産者とのふれあいを深めていくことが必要だ。単純にお昼ごはんを提供するのではいけない。子どもたちが季節ごとに新鮮な旬の野菜を感じたり、給食を提供する生産者や調理員に感謝の気持ちが持てるようにすることが大切。子どもたちの表情が明るくなるような給食、作った人の顔が見えるような給食を実現するために、今日のシンポジウムを契機に全国それぞれの地域、職場で取り組みを進めましょう」と述べました。

会場には、パネル、サンプル、調理器具など全国の給食を展示
地元野菜の即売会、浜松市の給食試食も
 シンポジウム会場には、全国各地の給食の取り組みがパネルなどで展示され、参加者がパネルやサンプルで各地の給食の取り組みを発表し合いました。またシンポジストの一人である山下さんの「笑顔畑の山ちゃんファーム」が獲れたて野菜の即売会を実施しました。開催に先立ち地元の浜松市職の給食調理員の仲間が、浜松地域特別栽培米研究会の「やら米(まい)か」と浜納豆煮と冷凍ミカンの試食品が参加者に配られ、好評でした。

化学農薬、肥料を抑えた「やら米(まい)か」
 「やら米か」は、浜松市の地域特別栽培米研究会が「普段、毎日食べる米だからこそ、安全・安心!」を目的として、化学農薬と化学肥料を半分以下に抑えて特別栽培により生産されています。学校給食でも年2回新米の時期に取り入れています。

給食では麻豆腐の隠し味にも~「浜納豆煮」
 徳川家康の好物だったという浜納豆(半生で味は味噌に近いネバネバしない納豆)を使用した煮物です。赤みそ、三温糖、酒と鶏肉、根菜類を煮ました。浜納豆はコクが出るので学校給食では麻婆豆腐の隠し味として使われています。

 

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