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足立区の戸籍事務民間委託は偽装請負

足立区の戸籍事務民間委託は偽装請負

東京労働局が区に是正を指導

 

戸籍事務を民間に委託した東京都足立区に対して、東京労働局は7月15日、労働者派遣法第24条の2に違反する偽装請負にあたるとして、是正指導書を発しました。足立区は、これを受けて、是正状況および点検結果を8月20日までに東京労働局に報告し、8月閉会中の区議会に報告するとしています。

 是正指導書では、①委託者である富士ゼロックスが、受託した業務の完了までの間に、あらかじめ「判断基準書」「業務手順書」等で定められていない事項については、発注者である足立区に対してエスカレーションと称した行為により疑義照会することが定められており、足立区が富士ゼロックスの業務に関与することがあらかじめ想定された内容となっていること、②足立区と富士ゼロックスの間で行うエスカレーションについて、責任者間で行う調整行為と評価することはできず、事実上の指揮命令となっていることが偽装請負に当たると指摘しています。同時に、現在行っているすべての業務委託契約について、同様の違反等がないか点検を行い、労働者派遣法に違反する事項がある場合は、労働者の雇用の安定を図るための措置を講じることを前提に、速やかに是正し、書面で報告することを求めています。

 

区民の運動と、自治労連の要請が、厚労省を動かす

 

 今回の東京労働局による現地調査と是正指導は、民間委託に反対する足立区職労、区民の運動と、自治労連と東京自治労連から法務省、厚生労働省への度重なる要請で実現させたものです。
 自治労連は、「足立区の戸籍事務の民間委託は戸籍法違反、偽装請負の問題がある」として法務省、厚生労働省に現地調査を行い是正を指導するよう要請してきました。東京法務局は2月に足立区の現地調査を行い、3月17日付けの区への通知文で、戸籍法違反を指摘するとともに、労働関係法令についても違反がないか東京労働局に照会することを求めました。その後4月30日に東京労働局が足立区へ現地調査に入り、今回の是正指導を行うことになったものです。自治労連と東京自治労連は、3月27日に法務省に対して戸籍法に基づいて足立区へ厳正な対応を行うよう要請。偽装請負問題を管轄する厚生労働省職業安定局に対しても5月2日と7月2日の2回にわたって足立区の偽装請負の実態を指摘して是正指導を行うよう求めてきました。
 今回、偽装請負と指摘された「足立区と富士ゼロックスの間で行うエスカレーション(疑義照会)」という行為は、東京法務局が戸籍法に基づき「判断を伴う業務は区職員が行わなければならない」という指導のもとで区が実施しているものです。
 足立区が東京労働局からの指導を受けて是正をすれば、こんどは法務省の指導内容に違反することになります。足立の戸籍事務の民間委託は、戸籍法を遵守しようとすれば労働関係法令に違反する「二律背反」状態にあることが明らかになりました。自治労連と東京自治労連は、引き続き「戸籍事務に民間委託は相いれない」「住民の基本的人権を守る戸籍事務は自治体の直営で充実させるべき」という要求を掲げ、民間委託の撤回を求めて取り組みを進めていきます。

東京労働局が7月15日に足立区長宛てに発出した是正指導書の内容は次の通りです。

 

是正指導書

 

足立区長 近藤弥生 殿

平成26年7月15日  東京労働局長

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律第48条第1項に基づき、貴事業所における労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第3省第4節の規定を除く。)違反について、それぞれ指定期日までに是正の上、報告するように指導します。なお、指定期日までに是正されない場合、行政処分又は勧告・公表・指示の対象となることがあります。また悪質である場合には告発する場合もあり得ます。(この是正指導書は5年間保存してください)

法条項   労働者派遣法第24条の2

違反事項及び是正のための措置

(違反事項)

 足立区役所(以下「足立区」という)は、平成25年3月25日に富士ゼロックスシステムサービス株式会社(以下「富士ゼロックス」という。)と業務委託と称する契約を締結し、平成26年1月6日から足立区戸籍・区民事務所窓口の業務を行わせていたが、実態は、
(1)受託者である富士ゼロックスが、受託した業務の完了までの間に、あらかじめ「判断基準書」「業務手順書」等で定められていない事項については、発注者である足立区に対してエスカレーションと称した行為により疑義照会することが定められており、足立区が富士ゼロックスの業務に関与することがあらかじめ想定された内容となっていること。
(2)足立区と富士ゼロックスの間で行うエスカレーションについて、責任者間で行う調整行為と評価することはできず、事実上の指揮命令となっていること。
 から、「労働者派遣事業と請負により行われる事業の区分に関する基準を定める告示」(昭和61年労働省告示第37号)第二条第一号イ(1)並びに第二号ハ(2)を満たしておらず、労働者派遣事業に該当する。
 このため、足立区は、厚生労働大臣の許可を受けずに労働者派遣事業を行っている事業主から、労働者派遣の役務の提供を受けていることから、左記条項に違反する。

(是正のための措置)

1上記違反事項については、派遣労働者の雇用安定を図るための措置を講じることを前提に是正すること。
2現在行っているすべての業務委託契約について、上記と同様の違反等がないか点検を行い、労働者派遣法に違反する事項がある場合は、労働者の雇用の安定を図るための措置を講じることを前提に、速やかに是正すること。
3上記1に係る是正状況並びに上記2に係る是正状況及び点検結果を、右記指定期日までに東京労働局需給調整事業部需給調整事業第二課あて書面にて報告すること。

指定期日  平成26年8月20日

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