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自治労連介護関係労働者全国交流集会

利用者・家族、介護関係労働者が安心して暮らせる社会の実現を!憲法25条に基づく社会保障としての介護保障制度めざして

自治労連介護関係労働者全国交流集会

 自治労連は5月25日~26日、岡山県倉敷市・倉敷ステーションホテルにおいて、「自治労連介護関係労働者全国交流集会」を開催しました。
 現地・岡山から35名をはじめ、全国から20地方組織3県事務所、126名が参加し、介護をとりまく情勢を学び、とりくみを交流しました。

 集会は、「利用者も家族も介護関係労働者も安心して暮らせる社会の実現」をテーマに開催されました。

 大場みゆき介護対策委員長(自治労連副中央執行委員長)より主催者あいさつ、地元、岡山より花田雅行自治労連岡山県本部執行委員長が歓迎のあいさつを行いました。

 基調報告を介護対策委員会の蛯名孝宏事務局長(中央執行委員)が行い、社会保障に対する国の責任を放棄し、地方と個人に責任を押し付ける憲法25条を否定する「社会保障制度改革推進法」のもとで、社会保障全体の切り捨て、解体が進められている。こうした状況のもと7月に実施される参議院選挙は、憲法改悪を許さず憲法をいかした社会保障制度の再構築の道への転換を図るため、重要な意義を持っていると報告しました。

介護の専門性を維持するためには介護労働者の労働条件の保障が必要

河村学弁護士 記念講演

 自治労連全国弁護団の河村学弁護士が、「介護労働者が安定的に雇用され生活できる賃金を得るために」とのテーマで記念講演を行いました。

 平成21年度厚労省全国調査によると介護施設に入所できない待機者が42.1万人も存在しているのに対し厚労省は、「直ちに特養ホームに入所する必要のある人は4万人である」とし、現状に目をつむり、数字を操作して問題をなかったことにする手法が多く行われていると、河村弁護士は厚労省の姿勢を批判しました。東京の各地で待機児童問題に関して次々と異議申し立てが上がっていることを例にあげ、「これは市町村に保育実施責任があるからこそできる行動であり、介護施設ではどこにも何も言えない状況である。国・自治体の実施責任がないと最終的には利用者や介護労働者がしわ寄せの犠牲となる」と語りました。
 そして、「家族の介護のために、2010年10月からの5年間では56万8千人(2007年・就業構造基本調査)が離職していると報道されている。在宅介護を強いられた結果、命にかかわる事件まで発生しているのに、“消費税に見合った範囲での社会保障改革”、“市町村が主体となる地域包括ケア計画で在宅介護の限界を高め、ボランティアなどの活用を推進”、“現世代の負担増・給付抑制、利用者本人負担の引き上げ”などだけが検討され、介護の質や、介護現場で起こっている問題に関してほとんど何も対策を考えていない」と断じました。

 また、介護労働者の置かれた状況について、「圧倒的に非正規労働者で、8~9割が女性であり、女性の低処遇は密接にかかわっている。離職率も高く、1年で30%採用され、21%が退職し、3年以内の離職率も高い。介護の仕事にやりがいを感じ、人の役に立ちたいと思っていても、非正規労働者の93.9%が時給で生活を維持するのが困難なために離職を選択せざるを得ない状況が多く生まれている」と実態を紹介しました。介護労働者の今後の運動として、労働組合でやるべき対応や労働契約締結での注意点などの具体例にも触れ、「介護労働者の労働条件を向上させるためには介護保険制度の運用改善とリンクさせ、労働組合と介護制度の改善をめざす諸団体と連携して運動することが重要となってくる。介護の専門性を維持するためには介護労働者の労働条件を保障することが必要であるという位置づけを行うことが大切である」と話されました。

シンポジウム「住み慣れた地域で安心して生活するために」

 講演に続き、シンポジウムを行いました。立場の違う4人から、現状や問題点について報告がおこなわれました。会場からの発言も交え、住み慣れた地域で安心して生活するために、何が必要か、どうすべきか、参加者もいっしょに考えるシンポジウムとなりました。松繁美和憲法政策局長がコーディネーターを務め、河村弁護士が助言をおこないました。

シンポジスト・助言者の発言要旨

◆民間職場:亀山房枝さん(身体障害者支援施設こうのしま荘・天神会労働組合副委員長)

 労働組合書記長の不当解雇など労働組合に仕掛けられた攻撃に対する、この間のたたかいや、賃金改善の成果などの取り組みを報告しました。「国の政策に大きく影響を受ける介護は、国に対してもっと安全安心の介護がおこなえるよう介護保障の充実を求めて運動をすすめていこう」と呼びかけました。

◆公的職場:荒金敏江さん(福祉介護ユニオン鳥取執行委員長、自治労連介護対策委員)

 かつて介護は国・自治体の公的責任による福祉という位置づけの「措置制度」でおこなわれたが、昭和57年の一部有料制度(応能負担)から始まり、老人保健法の施行、ゴールドプラン、新ゴールドプランなどを経て、介護保険制度へ移行されていった経過など、約30年のヘルパーの経験から振り返りました。介護保険は、見直しの度に利用が制限されてきたが、さらに2年後には「要支援」を介護保険から外すことが検討されている。認知症の人も「要支援」の経度認定されてしまうことも多く、これ以上介護保障を改悪させてはならないと訴えました。

◆住民団体:妻井令三さん(公益社団法人 認知症の人と家族の会岡山県支部代表)

 「認知症の家族を持った者からすれば、介護保険制度は『介護の社会化』につながるものという期待と、藁にもすがる思いで歓迎した人も少なくなかった。しかし、心理的・精神的状況なども含めて人間の状態をコンピュータで測り、仕分けることができるはずもなく、発足当初から制度に反対していた。今回、介護集会に参加し、多くの仲間が介護制度の改善のために努力していることを知って嬉しく思っている」と語りました。

◆行政現場:山田勝尚さん(横浜市中区福祉保健センター・社会福祉部会事務局次長)

 介護を必要としている家族・本人への介入の対応や、病院など他分野との連携が現行制度では困難であるという実態について、事例をあげながら説明しました。また、救命病院の退院促進の悪循環を断つために在宅療養支援に関する実務者会議を立ち上げるなどの取り組みについても紹介しました。

 一日目終了後の夕食交流会では、岡山の仲間から地元の踊りの披露、参加者からの、自己紹介・活動などの活発な報告、岡山県労会議事務局長から「反原発の替え歌」が披露されました。最後は参加者全員で円陣を組み、気持ちをひとつに「がんばろう!」を熱唱し、団結と連帯を深めました。

分科会でじっくり討論、講座で学習

 集会2日目は、①「公的責任に基づく地域の高齢者福祉を考える」、②「在宅職員(ヘルパーなど)の処遇改善とより良い仕事をめざして」、③「施設職員の処遇改善とより良い仕事をめざして」の3つの分科会に分かれ、経験交流・課題討論を行い、講座では、「終末期ケア対策について」学びました。講座は、山崎裕子さん(岡山ひだまりの里病院看護師・林精神医学研究所労働組合副執行委員長)が、訪問看護でヘルパーとともに在宅看護を支えてきた経験、岡山ひだまりの里病院での、認知症の人がその人らしく生きることを支えてきた経験を踏まえた講義をおこないました。

 集会のまとめで、大場みゆき介護対策委員長(自治労連副中央執行委員長)は「介護保険制度の限界・矛盾が現場からも行政からも出てきており、介護保険制度の中身を大きく変えていかなくてはいけない時期に来ている」とし、「昨年自治労連が提起した『介護政策骨子案』を活用してそれぞれの現場で議論を深めてほしい。介護保険制度を私たちの望む介護保障制度にするためには7月の参院選が大きなターニングポイントとなる。憲法を守り、住民のくらしを守る立場で選挙に取り組んでほしい」と訴え、全国交流集会を終了しました。

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