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福島県本部が「再生可能エネルギー」をテーマに県内29自治体を訪問

「原発再稼働などあり得ない」「地域に根ざしたエネルギー政策を進めたい」と首長、担当者が語る
自治労連福島県本部が「再生可能エネルギー」をテーマに県内29自治体を訪問

 自治労連福島県本部は、2月18日~20日の3日間の日程で、県下59市町村中、第1弾として県中部の「中通り」地域など29市町村を訪問。首長や自治体担当者と、「原発に依存しない再生可能エネルギーの推進」に向けた懇談を行いました。

 福島県本部は、「いまだに解決の見通しがつかない過酷な原発事故を再び起こさないためにも、原発をなくし、再生可能エネルギーへの転換をめざす運動に全力を上げよう」と運動方針を確認。行動の一つとして、自治労連本部が昨年8月に発表したパンフ「原発ゼロ、再生可能エネルギーをいかす地域・自治体をつくるための提案」を活用して、県内自治体との懇談を行うことを決めました。訪問に先立ち、自治労連本部の久保中執を講師に県本部と単組織役員を対象に学習会を実施するなど、事前に準備を行った上で訪問に臨みました。

 訪問は、福島県本部笠原委員長を先頭に、県本部役員、郡山市職労・二本松市職労・鮫川村職労の役員、各地域労連役員と、自治労連本部から柴田副委員長、松繁憲法政策局長、久保中執が同行し、訪問する地域ごとに班を編成して実施しました。

 懇談は、①自治労連の「提案」に対する感想、意見、②再生可能エネルギー政策を「住民・地元事業者主体、地産地消、小規模・分散、地域循環」で進める基本スタンスに対する意見、③再生可能エネルギーを推進するための自治体の基本計画・ビジョンの策定、条例制定等について意見を交換。各自治体の状況を聞き、自治労連からは再生可能エネルギー政策を進めるための要請も行いました。

「原発の再稼働はあり得ない」 ~国や県、東電の対応に憤り

 懇談では多くの自治体が、「原発事故の直接的な被害を受け、その対応に困窮している。原発の再稼働などはあり得ない」と、国や県、東電の対応、事故の責任に対する認識、賠償問題などに「大変な憤りを感じる」と述べていました。

 再生可能エネルギーは、震災前は太陽光発電システム設置補助事業の範囲での取組みが大方の自治体の状況でした。しかし、震災後はどこの自治体でも積極的に取り組みを進めており、公共施設への太陽光パネルの設置、特に防災施設、災害避難所指定施設への設置を年次計画で進めている市町村が数多く表れています。

 震災以前は、主に地球温暖化防止を目的に、原発を含めた総合計画やエネルギービジョンを策定していましたが、原発事故を契機に「脱原発」をはじめとするエネルギー政策の抜本的な見直しが迫られ、原発に依存しない地域の特性を考慮した新エネルギー政策の検討を開始する市町村も出てきています。懇談の特徴的な内容を以下に紹介します。

「再生可能エネルギー利用推進の村宣言」を村議会で議決-大玉村

 大玉村浅和村長は開口一番、「昨年12月に『再生可能エネルギー利用推進の村宣言』を村議会で議決した」ことを話されました。「村宣言」は、原子力に依存しない、安全、安心で持続的に発展可能な社会づくりに務め、太陽光など再生可能エネルギーの積極的活用することを謳っています。大玉村の太陽光発電、小水力発電などへの取組みは、この宣言の実践であり、村長からは、「再生可能エネルギーを、地産地消、小規模・分散地域循環で推進する」という自治労連の提案に「賛同する」との意見をいただきました。
村の施策では、特に森林資源について、「除染を行い、バイオ利用、復興公営住宅に使用するなど、いろいろな形で、利活用したい」と力を込めて話をされ、「今後の村の復興には、住民の力、『住民力』が重要である」と強調されました。

 石川町総務課長補佐は、「第5次総合計画(2013年まで)の前期基本計画が、震災後の社会状況が大きく変化した。新たに復興計画の施策を盛り込みながら基本構想の一部見直しを行っている。エネルギー問題では、資源循環を基本とし、脱原発と地球温暖化防止策のバランスを考慮しながら、地域の特性を考慮した将来のエネルギー政策を検討したい。地域の特性に見合うエネルギーの可能性も調査しながら、分散型のエネルギー供給、災害時における利活用の検討を進めたい」と話されました。
 白河市の企業立地室エネルギー班長と担当者は、「震災からの復興には、地域産業の育成や雇用創出が絶対条件。地域の発展のために『白河地域再生可能エネルギー推進協議会』を設置し、市が事務局を担っている。原発事故による企業撤退など深刻な被害から地域を発展させるために、地域で声を上げ、地域で再生可能エネルギー事業を実践することを目的として設立した。推進協議会は20の地元企業・農協、商工会議所を含む団体・個人で構成している。太陽光発電普及のための市民ファンドの創設、再生可能エネルギー事業の人材育成に向けて地元高校との連携などを実施方針に掲げている。市のエネルギー班は、現在は2人のみの体制で困難はあるが、重要な仕事だと感じている」と話されました。

 懇談を通じて、各自治体とも、当面は、震災・原発事故による被害から住民生活を守ることが最優先ではあるものの、原発に替わる将来のエネルギー政策について、それぞれが真剣に模索をしていました。再生可能エネルギーを推進するにあたっての課題として、①技術開発、②コスト問題、③水力発電の水利権など法的問題、④間伐材を燃料とする木質バイオ発電の放射性物質に対する住民の不安があること、⑤地熱発電について、温泉の枯渇を心配する住民から反対運動が起きていること、⑥大企業が設置する大型メガソーラーについて、地域振興や雇用に「あまり期待がもてない」とは思いながらも、直面する自治体の体制、財政問題などで誘致せざるを得ない事情などが、率直に語られました。また、自治労連の「提案」には、多くの自治体から賛同する意見をいただきました。
今回の自治体訪問で得た成果をいかし、福島県本部は、「原発に依存しない『ふくしま』とするためにも、引き続き未訪問自治体(原発立地自治体を含む)への訪問活動を行い、職場・地域で広く対話と共同を広げ、再生可能エネルギー推進の障害となる課題の解決に向けた運動に全力を上げたい」と決意を語っています。

以上

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