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県知事選挙を前に第31回埼玉自治研集会を開催

 6月18日、来年(2012年9月29・30日)第11回地方自治研究全国集会が開催される予定のさいたま市で、「埼玉県政の今と防災福祉のまちづくりを考える」をテーマに第31回埼玉自治研集会が開催されました。

 基調報告では、「地域主権改革」が憲法25条に明記された国の社会保障責任を放棄するものであり、究極的には憲法と地方自治理念を破壊して「国のかたちを変える」ことに狙いがあることが報告され、また、東日本大震災を踏まえ、どんな場合にも誰にとっても「心強い県庁や市町村役場」の役割を果たせる「緊急の生活保障システムの再構築」(別掲)が提案されました。

 特別報告1では、埼玉県職の村田副委員長が、第3次埼玉県行財政改革プログラムがめざす3つの方向(①県民サービスの「質」の改革、②県庁の仕事の「しくみ」の改革、③県庁の「体質」の改革)の具体的な中身が、県民福祉の向上のための事務事業を民間の手にゆだね、県民福祉と相いれない効率性を徹底し、県庁のスリム化、国の出先機関の吸収を準備するものとなっていることを報告しました。

 特別報告2では、県本部の青木副委員長が、昨年12月に策定された「第三次埼玉県権限移譲方針」で、184事務について2013年度までに権限移譲を検討することになっており、この権限移譲を円滑に進めるために埼玉県分権推進交付金といった財政支援、県職員の派遣などの人的支援など市町村を支援するためのメニューが用意され、「トップランナーでありたい」という知事の下、「小さな政府」「国と地方の役割分担論」に基づき、基礎的自治体への権限移譲を率先して進めていることを報告しました。

 特別報告3では、埼労連前議長の原冨悟さんが県民要求と埼玉県政の課題について講演。「県庁は近くにあっても、何をしているのかわからない」という県庁近くの商店主の言葉を紹介しながら、県政が県民から遠くなっていることを指摘し、「これは上田県政が高校統廃合や福祉医療制度の改悪など限りなく県政が県民から見えないように動いていることが背景にある。仮に実施主体が市町村であっても、国の制度改悪の防波堤になったり、町村への援助を行うなど、全県のサービス水準を確保するために、県が果たす役割は大きい」と話しました。

 県から市町村への権限移譲について、シンポジウム形式で行った討論では、福祉、公衆衛生、都市計画、農政などの行政分野から実態報告がありました。報告で明らかになったことは、国からの通知を受けた県が、通知の内容を咀嚼することなく市町村にタレ流すだけになりつつある実態、専門性が求められる業務で、現状でも処理件数が多くないものの場合、権限移譲されると年に数件の事務処理のために専門職を各市町村に配置しなければならない非効率性が生じること、そして、市町村への権限移譲、それに伴う県職員の削減により県の役割の空洞化が進みつつあり、今後ますます進む危険性があることが明らかになりました。

 また、東日本大震災の被災地に行政支援として派遣された清掃職場の職員から、スライドを使いながら、被災地の状況、支援活動の様子などが報告されました。

「緊急の生活保障システムの再構築」
その1:非正規雇用の縮小、最低賃金引上げ、公契約の適正化など雇用・労働の場の保障を背景に、福祉国家の実現をめざす。
その2:国の社会保障に関する責任を明確にする。
その3:住民の期待に応えられる自治体の職場体制を確立する。
その4:産業政策の見直し、自然エネルギーの活用で地域経済とまちづくりを再生する。
その5:国から地方への財政支出の拡大による財政再建が必要。そのために税制改革は生活保障型の累進所得課税に、法人税は優遇税制の見直しと資本金規模で累進化へ、国から地方への税源移譲や財源保障を行う。
その6:被災のため憲法に定められた基本的権利も享受できない地域には労働組合として直接的支援を行う。