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公立社会教育施設の首長部局所管を可能とする「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(第9次地方分権一括法案)の撤回を求める(談話)

2019年5月9日

書記長 中川 悟

 安倍内閣は3月8日、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(第9次地方分権一括法案)を閣議決定し、現在、国会において審議されている。本法案では「提案募集方式」に基づく地方からの提案について、「都道府県から中核市への事務・権限の移譲や地方公共団体に対する義務付け・枠付けの見直し等の関係法律の整備を行う」としたもので、13もの法律が、各専門分野の課題について十分な議論が一切行われないまま採決が行われようとしている。そもそも本法案は、およそ社会的な認知度が低いなかで、「地方分権改革」の名において、一部の地方自治体から挙げられた意見にもとづき、十分な議論や社会的な合意もないままに作成され、閣議決定されたものである。

 とりわけ今回の一括法案において、図書館、博物館、公民館などの公立社会教育施設の所管を、現在の教育委員会から首長部局に移すことができることができるようにすることは、重大な問題点を持っている。これは、条例により首長部局に移管させる「特定図書館」などの概念を図書館法等の個別法に導入するもので、憲法・教育基本法・社会教育法体系から公立社会教育施設を容易に離脱させうるものとなっている。

 政府は、本法案作成にあたって、昨年(2018年)12月21日の中央教育審議会「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申)」を踏まえたものとしているが、同答申では、戦後社会教育が果たしてきた役割を肯定的にとらえ、教育委員会が社会教育を所管してきたことを積極的に評価して今後も社会教育は教育委員会が所管すべきとしている。また「特例措置」として移管する場合の厳しい留意点を求めている。現行制度では社会教育の目的を達成することが困難であるとの合理的な理由は全く見当たらない。

 戦後の教育行政は、戦前の国家主義的・軍国主義的教育を深く反省し、一般行政から独立した行政委員会である教育委員会制度のもと、非権力的行政として出発した。本法案では「特定地方公共団体」の首長は、社会教育施設の職員や運営審議会委員、協議会委員の任命・委嘱を行うこととなり、特に公民館主事・図書館司書・博物館学芸員の専門性に基づいた自由で自律的な社会教育行政が阻害され、それによって、住民の生涯にわたる学習の自由と権利が損なわれる危険性がある。このような首長による任命・委嘱システムは、歴史の流れを逆行させ、人権としての教育権・学習権を支える憲法的原則をも否定するものと言わざるを得ない。

 自治労連は、社会教育行政を首長の意に染む内容へと改変し得る本法案を撤回し、教育委員会における社会教育予算や人的資源の確保により、住民の学びを支える公立社会教育施設の充実を強く求めるものである。

以上

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