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世田谷区公契約条例スタート!自治労連公契約運動推進委員会が現地ヒアリング実施

 全国で公契約運動を前進させるため、自治労連公契約運動推進委員会(以下、推進委員会)は5月22日、昨年2014年9月に公契約条例が全会一致で可決され、今年4月から施行したばかりの東京都世田谷区を訪ねました。施行にいたる約8年間の公契約運動の取り組みについて、貴重な経験を伺うことができました。

image003 今回、世田谷区職労の工藤委員長をはじめ、東京土建世田谷支部の児玉副主任書記と原書記に対応いただきました。推進委員会からは、地方ブロック2人の推進委員を含めて8人が参加。まず、工藤委員長より公契約条例制定までの経過や取り組みについて説明いただき、推進委員会からの質疑を交え、懇談を行いました。

 全国的には首長によるトップダウンで公契約条例が制定される事例がありますが、世田谷区では、上部組織の違いをこえた団体と地域住民の共同の取り組みが出発点となりました。世田谷区職労と東京土建世田谷支部を含む労働組合と地域労組と自治体研究所などの団体が呼びかけ、2007年4月に「公契約推進世田谷懇談会」が発足し、のちに「公契約条例にかかわる あり方検討委員会」設置を区に請願し、全会一致の可決で本格的にスタートさせました。

 懇談会結成について、日頃から上部団体の枠を超えて原水爆禁止運動などの平和運動への取り組みがベースにあったことも併せて紹介されました。懇談会はこの8年間でシンポジウムを7回実施。児玉氏は「シンポに区議会各会派を呼ぶために丁寧な議会回りを欠かさなかった」と、笑顔で苦労話を解説。「工事を発注しても、世田谷区内に居住する建設労働者はわずか3.4%(東京都内居住でも34.4%)だけで、地域経済の振興に結び付いていない」「現場労働者の一日賃金平均は10,416円で、設計労務単価平均17,405円を大きく下回っている」という現場の実態調査結果を見せ、議員を動かしたそうです。

 業界団体にも理解広まる

 ダンピングによる最賃割れや過当競争による経営難と後継者不足など、土木建設の業界は深刻な課題を抱えています。東京土建が取り組んでいた二者懇談(労働者と事業者)では、業界団体から行政への強い要望が内在していることがわかりました。そこで児玉氏らは、二者懇談から三者懇談(行政と労働者と事業者)へと変えていきながら、意見交流や親睦を深めてきたそうです。交流するうちに、業者も公契約条例をつくることによって、ダンピング合戦に歯止めがかかるという認識へ。これらの業界の声も議会へ届けると、「条例に懐疑的な与党議員も、現場の実態をあまり知らない。業界からの切実な訴えにNOとは言えない」と児玉氏。

 世田谷区職労としても、建設産業に限らず、区の非正規労働者や介護・福祉労働者を視野に入れた運動も意識しました。とくに条例への「労働報酬下限額条項」を巡って、区内の非正規労働者や介護・福祉労働者からも声をあげていけるように共同をすすめました。「労働報酬下限額条項」は、懇談会からの世田谷区長へのアプローチもあり、導入されました。

「世田谷区は、適用範囲となる工事契約3,000万円以上と、委託契約2,000万円以上で他の自治体に比べ、より多くの工事と委託が適用となります。その件数は少なくとも年間二~三百件と予想されます。当然、担当部署の人員体制の拡充は必要ですし、モチベーションを高めることも必要です。」と、世田谷区職労の諸要求とともに、今後も公契約条例の適正運用への取り組みにも注力していきたいと工藤委員長は語られました。

 いまこそ、一歩を踏み出そう!

image007 懇談を受け、九州ブロック(長崎)の里委員も「世田谷区の活動には、あらゆる立場の皆さんとの共同を追求する覚悟を感じた。長崎でも、平和の分野では従来の枠組みを超えた共同が進みつつあるが、公契約運動へ広げられる可能性がある。我々の意識を変えることが大事だ」と発言。関東甲信越ブロック(東京)の堀内委員も「東京自治労連と東京土建労組の定例懇談会では、5年以内に東京23区で条例制定5割を目標にして取り組むことを確認している。そのためには地元の連携が絶対条件であり、各区職労と土建支部のコミュニケーションと意思統一が図れるよう懇談会を仲介していく」と意気込みを現しました。

 最後に、工藤委員長からは、「地域で一致できることをやること。今ほど大事なときはない。」と、沖縄や大阪のような「地域からの運動」が重要になっている点も指摘されました。

 また、児玉氏からも「ナショナルセンターの違いをあまり意識せずに」「目的達成のためにみんなでやりましょう」と、一歩を踏み出す勇気とアドバイスをいただきました。

 推進委員会は、今回のヒアリングを通して、職場からの要求実現と予算人員闘争に結び付けて公契約運動を展開し、地域とともに粘り強く継続していく重要性を改めて確認しました。