市町村合併しなかったからこそ、住民本位の復旧ができた

 長野県の最北端にある栄村は人口2300人、高齢化率が45%を超える豪雪の村です。3月12日未明に襲った震度6強の地震よって、住宅の全壊33世帯70人、半壊174世帯437人、一部損壊509世帯1203人にのぼり、道路の亀裂、橋梁の損壊など大きな被害を受けました。一時期は1700人余が7カ所で避難所暮らしを余儀なくされました。多くの農地で被害が発生し、約70%の水田で地割れ、傾斜、畦畔の崩落等の被害、畑でも石垣の崩落等多くの被害を受けました。また、農道や水路も、約80%で崩落や地割れが発生しました。これほど大きな被害にも関わらず、人的被害は軽傷が10人に止まり、復旧も順調に進んでいると言われます。

 自治労連は、被災者の生活再建と地域の再建のためには、①復興計画を住民合意でつくり、地域のコミュニティを大切にしながら復興をめざす。②農業・漁業や加工業など地場産業の復興と住宅の再建を同時にすすめる。③復興事業の実施主体は地元市町村とすること。④財源は国が責任をもつことを提起しており、7月29日に、栄村の復旧状況調査を、信州の教育と自治研究所と共同で行いました。この現地調査には、自治労連本部の高田中執、長野県自治労連の小林書記長、信州の教育と自治研究所の沢事務局長らが参加しました。

 一行は、高橋前村長らと懇談した後、栄村役場で総務課企画財政係長の大庭さんから説明を受けました。そのなかで、栄村の早期復旧の秘密は、市町村合併をしていない自治体であること、集落ごとのコミュニティを大事にしていること、「水田は栄村の命」「農地を守ることは村を守ること」の強い決意をもっていること、住民からの要望にこたえていることが、紹介されました。

集落ごとに声をかけあって安否確認
 地震発生時は集落ごと声をかけあって安否確認を行いました。顔なじみが多く、誰が入院しているのか不在なのかもわかっているので安否確認もスムーズでした。「集落単位のコミュニティを大事にしてきたからこそできたことで、村職員だけで安否確認をやれと言われても無理なこと」「合併せず、小さな自治体だからこそきめ細かな対応ができる」と、総務課の大庭さんは言います。栄村では、避難所生活の間も、「『ダンボールで間仕切りをしてほしい』という声はでなかったし、考えたこともなかった」と高橋前村長は語っていました。

集落のコミュニティ維持の観点から、集落ごとに村営住宅を建設予定
 家の損壊が著しく帰宅できない住民のために、栄村は県に応急仮設住宅(2年間)の建設を求め、耐雪仕様の仮設住宅55戸がすでに完成し、希望者全員が入居しています。そして、仮設住宅での孤立を防止するため、仮設住宅50戸が集中している場所にディサービスもできる交流センターの建設をすすめています。

 さらに、応急仮設住宅の入居期限後も、集落の自治・コミュニティを守り、住み慣れた集落で住み続けてもらえるよう、自力で住宅再建が困難な住民向けに、来年度中に恒久住宅として集落分散型の村営住宅を建設する予定です。すでに、仮設住宅入居者や村外避難者へのアンケートを行い、33戸の村営住宅への入居希望がよせられています。こうした中で、一旦は村外へ避難し、村での生活再開を断念した住民から、もう一度村へ戻って生活をしたいと言う住民も出始めているとのことです。

家屋や作業所等の解体・撤去費用を全額村負担
 従来、家屋の解体は個人負担でしたが、今回の震災では住民からの強い要望を受けて、「半壊以上」の家屋、作業所、物置等の解体費用を全額村負担としています。また、震災により被害を受けた家屋等の廃材等の運搬費・処分費についても半壊以上は全額村負担としています。

「水田は栄村の命」「農地を守ることは村を守ること」-農地復旧の個人負担を5%に抑制
 地震は、栄村の基幹産業である農業に甚大な被害をもたらしました。水田では、ひび割れや畦畔の崩落、水路の損壊などで、今年は40㌶で作付けができませんでした。水田は米の生産だけではなく、治山治水の役割を持っています。今年10月頃の雪が降る前に工事を終えないと来年の作付けができなくなるので、早急な対応が求められています。集落単位で災害復旧にあたっての懇談会を実施し、村民からの要望等を集約してきました。国の災害復旧事業の対象になる農地については、事業費の90%を国が負担し、残りの5%を村が負担し、個人負担は事業費の5%です。国の災害復旧事業の対象にならない農地については、村が「田直し事業」方式で復旧工事を行い、工事費を抑えるとともに個人負担は5%にすることを決めています。村内の農道や水路は、公共性や防災面から村が全額負担し、復旧することにしています。

村の財政は厳しい、財源はもっと国が責任を持ってほしい
 「栄村の今年度の当初予算は23億7千万円だったが、6月補正で60億円にまでなっている。これからも増える見込みで、今年度は何とか予算措置はできるが、来年度の予算が組めるかどうか心配だ。激甚災害の指定で国から90%の補助があるが、補助は事業費だけで事務費は対象外のため、これが村の財政を圧迫している」と苦しい内実が語られました。今の補助制度は原状回復が中心で、本当に復興していくためには住民や村の要望に沿った制度にしていくこと、被災地を支える新たな支援策が求められます。