自治労連都道府県職部会は5月18日、全国知事会と、憲法「改正」、地方分権、地方財政などに関して懇談を行い、意見を交わしました。

 自治労連からは森部会長(京都府職労連)、白鳥政策委員長(千葉県職労)をはじめ幹事会のメンバーが出席。自治労連本部から西中央執行委員、久保中央執行委員が出席しました。全国知事会からは遠藤調査第一部長ほか6名が出席しました。

 懇談の冒頭、森部会長は「お互いの立場は違うが、地方自治の発展のために、住民のくらし、地域のあり方などについて、政策的な研究も深め、有意義な懇談にしたい」とあいさつしました。懇談のやり取りの概要は次の通りです。

 

1.地方分権改革に係る「従うべき基準」の「参酌」基準化について

「人材確保が困難なので人員・資格基準等の『参酌化』を国に求めている」(知事会)、

「財政問題を出発とするのでなく、施設利用者の人権を最優先すべき」(自治労連)

地方分権改革に関わり、全国知事会がこの間、全国市長会や全国町村会とともに「従うべき基準」の「参酌」基準化を要求している問題について、知事会は放課後児童クラブの人員・資格基準と配置基準を例示し、「全国一律の国の基準のもとでは、人材確保が困難になり、小規模な放課後児童クラブ設置ができない等の意見が多数寄せられている」として、「国に対して『参酌』基準化を求めている」と説明しました。

 これに対し、自治労連は「『参酌』基準化によって、住んでいる地域によってサービスの質が違うという自治体間格差が拡大する。とりわけ保育や介護分野では国が価格設定しているもとでサービスが違うという矛盾が生じる」と指摘しました。知事会は「国の全国一律の基準では問題があるため、地方の声にもとづいて要望している。すべての基準を『参酌』基準にしようとは考えていない」と答えました。

 自治労連は「地方の声と言うが、財政問題を出発点にしているのではないか。まずは施設利用者等の人権を最優先に考えるべきであり、人材確保が困難なのであれば、賃金を上げるなど労働条件を抜本的に改善すべきである」と述べ、議論を深めました。

2.自民党の憲法「改正」案の、自衛隊の書き込みについて

「9条は一切議論しておらず、憲法改正を先導する立場ではない」(知事会)

「合区は議員定数削減が原因。憲法条文を変えて解決すべき問題でない」(自治労連)

 全国知事会が参議院選挙の合区の解消を求め、地方自治の本旨を憲法に明記するよう求めている問題について、自治労連は「自民党の憲法改正のねらいは9条に自衛隊を書き込むことであり、この時期に知事会が要望することは改憲推進に加担するものではないか」と質しました。

 知事会は「参議院選挙に合区が導入されることを問題視し、学者・有識者の意見も聞き、憲法に地方自治の本旨が憲法で明確にされていないことにも問題があるとの立場で要望している。9条についてはいっさい議論しておらず、憲法改正を先導する立場ではない」と説明しました。

 自治労連は「合区は望ましくないという点は一致している。この問題は議員定数を減らし続けたことが主な原因であり、憲法の条文を変えて解決すべき問題ではない。そんなことをすれば議論が混迷するだけである」と指摘し、全国知事として憲法改正を推進する立場をとらないよう要請しました。

3.種子法廃止に伴う県議会レベルでの条例化について

「優良種子の安定供給は重要。国に予算要望している」(知事会)

「主要農産物の安定生産・供給への支障などが危惧されている」(自治労連)

 主要農産物種子法の廃止により、主要農産物の種子の安定生産・供給への支障や一部企業による種子開発や品種の独占などが危惧されているもと、新潟県・兵庫県・埼玉県などでは「主要農産物種子条例」も制定されている問題について、知事会は「優良種子の安定供給は重要であるが、条例はそれぞれの都道府県の立場で制定されるもの。知事会としては主要農産物の役割を明確にし、国への予算の要望もしている」と説明しました。

4.地方自治体の基金について

地方財源削減の動きに対しては「あらゆる場で主張・反論していく」(知事会)

「地方財源を守る立場は同じ。総務省にも伝えていきたい」(自治労連)

 地方自治体における基金の積立額が増加していることを理由に財務省などが地方財源を削減しようとしていることについて、知事会は「基金の増加は行財政改革や歳出削減などの努力を行った結果であり、将来の大規模な災害や財政危機に対応するために自ら積み立て、年度間の財政調整を図る目的のもの。基金の増加をもって『余裕がある』とするのは間違いであり、知事会としてもあらゆる場で主張・反論していく立場だ」と説明しました。

 自治労連は「全く同感であり同じ立場だ。総務省との交渉においても、全国知事会の意見も伝えていきたい」と答えました。

5.会計年度任用職員制度の導入について

「総務省に丁寧な説明、対応を求める。財政措置に不安の声も聞いている」(知事会)

「国が責任を持って財源を保障するように求めるべき」(自治労連)

 会計年度任用職員制度の導入について、知事会は「知事レベルの議論はされていないが、総務省の動きは注視し、丁寧な説明・対応を求めている。財政措置に対する不安の声も聞いているので、そこも含めて注視したい」と説明しました。

 自治労連は「どうやって財源を確保するのかという懸念がある。定年延長の議論もあり、常勤職員の賃金水準を全体的に引下げることも危惧される。また、財源の見通しが立たなければアウトソーシングすることも危惧され、行政サービスの低下につながるおそれもある。国が責任を持って財源を確保するよう求めるべき」と強く要望しました。

 

 懇談の最後に、森部会長は5つの懇談項目について次のとおり発言しました。

(1)待機児童の解消などの課題解決のため、放課後児童クラブの機能強化も求められている。どのように質を担保するのかが重要。知事会とは意見の相違もあるものの、どのように問題解決するかということは共通の課題。企業主導型の保育サービスが急速に広がっているもと、子どもや住民の権利を守るために、どのように規制していくのかという問題もある。今後とも大いに議論し、検証を深めたい。

(2)参議院選挙の合区解消や地方自治の強化という主旨は理解するが、安倍政権が憲法9条改正をねらっているタイミングで、憲法改正を要請するべきではない。

(3)経済財政諮問会議での議論等を見ていると、種子法の廃止には企業参入の思惑があると感じる。十分な議論もされておらず、国会には野党が法の廃止提案もされている。このまま民間企業主導の議論とならないよう知事会としても対応してほしい。

(4)地方自治体の財政基金は、近年増している災害対応にも活用されている。こうした災害対応に必要な財源も本来は国が責任を持つべき。逆に国は管理河川等の改修にあたり地方に莫大な直轄負担金の負担を求めている。今後も対応を強めていってほしい。

(5)会計年度任用職員制度は、地方自治体の職のあり方や安定した行政運営にもかかわる問題であり、知事会としても問題意識を持って対応してほしい。