被災者の生活支援と住宅の再建、産業の復興、及び雇用の場の確保に全力を
~自治労連が国会議員の被災地調査に同行し、岩手県、陸前高田市、大船渡市、市職員労働組合、大船渡市商工会議所からヒアリング調査

 自治労連は1月21日(月)~22日(火)、東日本大震災の被災地への国会議員調査に同行し、岩手県、陸前高田市、大船渡市の自治体当局及び、陸前高田市職員労働組合、大船渡市役所職員組合、大船渡市商工会議所へのヒアリング調査に参加しました。

 調査では、①被災者の住宅と生業の再建、自治体職員の人員不足解消とメンタル対策が急務であること、②復興交付金が市役所など公共施設の高台移転に使えず、中小企業等グループ補助金の拡充と延長が必要であるなど、国の制度に様々な不備があることが明らかになりました。
 この調査は、自治労連が昨年11月15日に復興予算の流用問題と被災自治体での職員不足問題をとりあげて実施した国会院内集会と省庁要請を機に、日本共産党の塩川鉄也衆議院議員事務所が実施したものです。

 調査は、①被災者の住宅再建(高台移転、区画整理を含む)、②グループ補助金の執行状況と地域の中小業者の経営再建、③自治体職員の人員不足問題とメンタルへルス対策を中心に行いました。

 岩手県からは総務部、地域政策部、商工労働観光部、復興局から担当者が応対。陸前高田市、大船渡市では副市長をはじめ、復旧復興に関わる部署の担当者が応対しました。
 自治労連からは山口祐二副委員長、久保貴裕中央執行委員、岩手自治労連から高橋昭博副委員長と渡辺孝文書記長が参加しました。調査の概要は次の通りです。

被災者の住宅再建~県と市町村が独自の支援策を実施。
「消費税増税に大きな不安が」「国は生活支援金の引き上げを」

 被災者にとって最も切実な要求は、一日も早い住宅の再建です。「仮設住宅からは葬式を出したくない」「早く家を建てて、元の暮らしに戻りたい」「家の再建はあきらめて、災害公営住宅に入居したい」という切実な声が上がっています。
 県内で一戸建住宅建設にかかる費用は平均で約2000万円です。県は住宅再建のために独自に支援事業費補助事業を実施。①バリアフリーを条件に新築・購入で最大90万円(県と市町村で各2分の1負担)、②被災住宅の補修・改修は補助率2分の1で、補修では上限30万円、改修では耐震化で上限60万円、被災宅地の復旧に上限200万円、県産材使用で上限40万円などの支援を行っています。
 また、被災した沿岸の市町村でも独自の支援事業が行われています。陸前高田市は自力で高台等に住宅を再建する被災者に対して、上限額で、土地の購入に50万円、水道工事費に200万円、道路取り付けに300万円、地元材活用で50万円、浄化槽設置で115万円(国補助と合計)など、県と市合わせて最大約800万円の補助をしています。

 大船渡市も、水道整備に200万円、造成補助費に30万円などの独自補助を行っています。国は被災市町村独自の上乗せ補助に支援することが求められます。
 また、現行では300万円の被災者住宅再建支援金を500万円に引き上げるなど、さらなる支援の強化が求められます。被災者の住宅再建をめぐっては、政府が2014年から実施しようとしている消費税増税の負担が大きくのしかかります。

 「被災者がやっと住宅を再建しようとする時期に消費税が増税になる。被災者の負担増は百数十万円にものぼり、『なんとかしてほしい』という切実な要望が市にも寄せられている」と陸前高田市の久保田副市長はいいます。

「移転は、小さな自治組織、コミュニティ単位で行いたい」
住民による復興推進組織が、地権者との調整を行う~大船渡市

 災害公営住宅の建設と防災集団移転促進事業等では、用地の確保が最大の課題になっています。被災地では、高台移転、土地区画整理事業を行う場合、造成完了までに早くても3年はかかります。
 大船渡市では市内の22箇所で防災集団移転事業を計画。市の担当者は「移転は、小さな自治組織、コミュニティ単位で行えるようにしたい」としています。大船渡市では、地域ごとに住民による復興推進組織が立ち上がり、用地確保のため住民組織が移転先の地権者との調整を進めています。

「公共施設の高台移転を、復興交付金の対象とするべき」~陸前高田市

 陸前高田市は国に対して、①公共施設の整備に関する地方負担を軽減する制度(特例債等)を創設するとともに、東日本大震災復興交付金の運用は、自由度の高い配分枠を保障すること、②住宅再建と早期のコミュニティ形成を図るため、被災した農地を市街地の嵩上げ用盛り土の一時仮置き場として活用する必要があり、災害発生から原則3年以内(繰越を含め5年以内)とされている復旧事業の期限を2年間延長すること、③「津波復興拠点整備事業」の適用個所数を拡充すること。用地買収に係る抵当権の抹消に際し、土地の買収金が事業者に一定程度保障できるよう支援すること、④高台と低地部を結ぶ幹線道路の整備を復興交付金の対象にすること、⑤JR大船渡線の早期復旧と公共交通を確保することを要望しています。
 市では、津波で破壊された市役所庁舎、保健福祉センター、市民会館、体育館の公共施設を高台に移転する計画していますが、災害復旧事業は原形復旧を原則としており、しかも国からの補助単価が低く、それだけでは原形復旧さえもまかなえません。そのため市は、復興交付金に期待していますが、「災害復興」ではなく「災害復旧」であることを理由に復興交付金の対象外にしています。高台に新たに整備する住宅や公共施設と、津波の被害のあった低地部を結ぶ幹線道路の整備も必要ですが、国は「浸水区域外の箇所や道路ネットワークの整備は復興交付金の対象に該当しない」としています。

 久保田副市長は「浸水箇所から高台への移転事業を進めているのに、復興交付金の対象外というのはおかしい。国は、新たなまちづくりと合わせた復興支援や生活関連道路についても対象にしてほしい」と要請しています。

市街地の復興へ、「津波復興拠点事業の要件緩和を」~陸前高田市

 また陸前高田市では、津波で壊滅された市街地を新たな商業用地として復興するために、地権者が3000人を超える広大な面積の区画整理事業に取り組みます。市は、地権者との交渉に膨大な時間のかかる区画整理事業ではなく、一括して対象の土地を買い上げることのできる「津波復興拠点整備事業」の適用を国に求めています。
しかし国は「原則として一箇所あたり20ヘクタール以内、一自治体2箇所以内」に制限しており、すでに2箇所が計画されている陸前高田市には適用を認めていません。市は、せめて3箇所まで適用箇所数を拡充するよう国に要請しています。

 都市計画を担当する陸前高田市職員労働組合の阿部執行委員は、「用地交渉などの仕事ができる専門職員が圧倒的に不足している。陸前高田市の区画整理事業は他市とくらべものにならないほどの膨大な面積になる。用地交渉や換地処分の経験をもった職員が一気に大量に必要だ。事業の再開を予定している商業者は高齢の人が多い。区画整理事業が長引けば、事業再建への意欲をもっていた人も断念してしまう。1日も早くまちを再建しなければ…」と語ります。

中小企業等グループ補助金について~用地確保のめどが立たず、申請できない企業が多数。「国は制度の拡充と、継続・延長を」

 事業費の4分の3を補助する岩手県中小企業等復旧・復興支援事業(グループ補助金)は、企業の再建を支援する新たな制度で、多くの中小業者が申請をしています。
 県のまとめによると、これまで5次にわたる公募で県内からのべ220のグループ(2521社)からの申請がありましたが、そのうち採択されたのは63グループ(882社)です。
 県の担当者は「事業者の事業再開は、市町村の土地利用計画をはじめとした復興計画との関わりが大きい。事業用地の確保にはなお時間を要し、グループ補助金の明許繰越年度内での完了が困難となっていることから、繰越手続の弾力的な運用を国に要請している」としています。
 また「小規模事業者の再建には、グループ化にはなじまない面もある。事業採択の要件を緩和したり、個人事業者に対する補助金制度を創設することも国に求めている」としています。

 陸前高田市では、事業用地を確保する目途が立っておらず、地元の業者は申請すらできない状態にあります。

 大船渡市商工会議所からのヒアリングによると、震災後の調査で8割の事業所が何らかの形で事業を再開し、建設業など復興事業にかかわる分野では震災前よりも利益が上がっているといいます。

 しかし水産業は収益が低下しており、津波による地盤沈下で多くの事業者が元の場所に戻れない状態にあります。

 商工会議所の課長は「土地の利用計画がはっきりしないと進められない事業も多い。グループ補助金の繰越手続の弾力的な運用と制度の延長はぜひお願いしたい。また、国は『復旧』であることを理由にして、震災前と同じ性能でなければ補助できないという。なぜ前より良くなってはいけないのか、同じお金を使うのに、歯がゆい思いをしている」と語ります。(次号に続く)