被災地の自治体は、深刻な人員不足、専門職員の確保、メンタル対策も急務に
自治労連が国会議員調査に同行して、岩手県、陸前高田市、大船渡市の被災自治体、市職員労働組合をヒアリング(続報)

 被災地における自治体職員の人員は、用地交渉を担当する専門職員をはじめ、事務、土木、建築、保健師、社会福祉士など多くの職種で深刻な人手不足になっています。全国から岩手県内の被災自治体への職員派遣の状況は、被災した11市町村(宮古市、大船渡市、久慈市、陸前高田市、釜石市、大槌町、山田町、岩泉町、田野畑村、野田村、一関市)において、2012年度(1月4日現在)は、必要人数362人に対して派遣人数は315人(事務142人、土木126人、建築20人、保健師16人、その他11人)にとどまり47人が不足したままです。

全国でも職員を減らしており、派遣には限界を感じる

 2013年度は、被災11市町村から要請のあった必要人数は前年よりも増え、合計で438人にのぼっています。これに対して、全国から派遣の申し出があるのは313人にとどまっています。そのため県は、新たに73人の県独自任期付職員を採用して派遣するとしています。
 しかし、それでも必要人数に対して52人不足しています。県の人事担当者は、「全国の自治体でも職員を削減しており、派遣して頂くのには限界を感じている」「任期付職員は、業務に必要な専門的知識や経験が備わっているのか、行政の仕組みをどこまで理解できているのか不安はある」としています。
 陸前高田市は、震災による津波で正規職員が68人、臨時、非常勤など非正規職員が37人亡くなりました。4人に1人の職員が亡くなった市では、毎年10人程度の正規職員を新規採用し、「あと数年で被災前の職員数を回復できるようにしたい」(市の人事担当者)としています。しかし、当面の復興業務を担う即戦力となる専門職員は圧倒的に不足しており、引き続き全国からの職員派遣に頼らざるをえない状況にあります。大船渡市は、今年度(2012年度)で全国から51人の職員派遣を受け入れていますが、市の担当者は「まだ人員は不足している」と言います。
 大船渡市は来年度(2013年度)、75人の職員派遣を要望していますが、今年(2013年)1月1日現在で派遣が確定しているのは47人にとどまっています。

復興に便乗して任期付職員の導入、不安定雇用化も~大船渡市

 船渡市は、来年度から15人の正規職員を採用するとともに、新たに任期付職員制度を条例化し、今年度から募集を開始しました。
 正規職員の不足分を、任期付職員に置きかえるものです。また、学校給食の調理業務を担ってきた市の外郭団体(財団法人三陸教育施設運営会)を年度末で解散し、職員を全員解雇。学校給食調理施設もセンター化して民間委託する計画を打ち出しています。解雇される法人職員のうち、引き続き就労を希望する人は、市が嘱託員として雇用するとしていますが、雇用継続ではなく新規採用の扱いとなり、賃金も月額で5万円もダウンします(自治労連速報12月7日第114号を参照)。

派遣職員、市職員ともに、メンタル対策が急務に

 陸前高田市では昨年の7月、大槌町では今年の1月、派遣された職員が自殺する痛ましい事件があり、職員のメンタルヘルス対策も重要な課題になっています。
 派遣職員は半年から1年間にわたる単身赴任で、仮設住宅等に住み、派遣元の自治体とは全く異なる環境の中で仕事と生活をしています。多くの派遣職員は地理にも不案内で、方言にも慣れずに仕事をしています。自家用車もなく、休日に遊びに出かけることもできず心身ともに大変なストレスが重なっています。
 陸前高田市では「派遣される職員の職務について、本人の経験や能力とミスマッチがないようにしたい。年に3~4回程度は帰省、帰庁できるように旅費を負担し、個別面談やアンケートなども行って、健康などの状況を適宜把握して対応したい」としています。大船渡市では、産業医による市職員全員を対象にしたメンタル調査によると、昨年8月で2割がメンタル発症のリスクを抱えていることがわかりました。

「働きがいを持ち、健康で働ける職場をつくりたい」「復興に便乗したリストラを許さず、住民と共同を進める」~市職労が決意

 陸前高田市職員労働組合の阿部執行委員は「職場では、今の体制でなんとか復興へ頑張ろうとしているが、思いだけでは事業は進まない。派遣された職員は、被災者のために役立ちたいという思いを強く持っているが、自分の専門分野以外で畑違いの仕事をしなければならない人が多い。それぞれの仕事について経験や専門性をもった職員を配置できるようにすべき」と言います。菅原委員長は「職員の働きがいや、仕事への意欲を失わせず、住民のために健康で働き続けられる職場にするために、自治体労働組合として頑張りたい」と語ってくれました。大船渡市役所職員組合の佐藤委員長は、「職員採用について、組合が要求していた建築技師、土木技師、保育士、看護師などの職種の募集を実現させることができたが、必要な職員数は満たされていない。一方で、震災復興に便乗して任期付職員を制度化したり、法人職員を解雇するなどリストラを進めているのは問題だ」と指摘します。金野書記長も「市は学校給食の調理業務を民間に委託すると表明している。今後、地域労連や市民団体とも共同して、民間委託反対の取り組みを進めていきたい」と決意を語ります。

 自治労連は、今回の調査ヒアリングで明らかになった問題と課題をまとめ、住民本位の震災復興、自治体職員の人員、健康問題の解決に向けて、取り組みを強めることにしています。