地域主権改革は地域切り捨てにほかならない

「ハローワークの明日を考えるシンポジウム」を埼玉で開催

 3月27日、さいたま市・さいたま共済会館において「ハローワークの明日を考えるシンポジウム」が開かれ、労働組合、市民団体などから約70人が参加しました。この企画は、政府と埼玉県の上田知事が「地域主権改革」の一環として、ハローワークの地方移管を埼玉県下の自治体で先行的に実施しようとしていることに対して、自治労連埼玉県本部も参加する労働法制埼玉連絡会が、自由法曹団と埼玉県国公と共催して開催したものです。

 シンポジウムでは、労働法制埼玉連絡会の角入事務局長が司会を行い、反貧困ネットワーク埼玉の藤田孝典氏、全労働の河村副委員長、自由法曹団の尾林芳匡弁護士の3人のシンポジストによる報告をもとに、会場から活発な意見が出されました。

 藤田氏は、生活・就労支援を行っているNPOの立場から発言し、「派遣村以降、生活困窮者への支援強化の方向性が打ち出されたが、この流れを止めてはいけない。そのためにも、ハローワークの機能を充実させるべき。一方、福祉事務所では、就労支援員まで人材派遣会社に請け負わせている。しかも、半ば強制的な就労指導を行い、労働条件の劣悪な会社に就職して、長続きしないケースもある。『普通の暮らしをしたい』『まともな仕事を提供してほしい』といった声に応えるためにも、公的責任が重要。地域主権改革で切り崩されないようにしてほしい」とハローワークの機能強化を強調しました。

 河村氏は、「上田埼玉県知事をはじめとする推進派の主張は、誤解と偏見に満ちたものである」と、地方移管後には民間委託化のねらいがあることを指摘。あわせて、アクション・プランに基づく一体運営施設の問題点、労働行政体制の脆弱さについて、全労働のリーフレットを活用しながらくわしく説明をしました。

 尾林氏は「地域主権改革は全般にわたって構造改革を推し進めるもの。東日本大震災ではそのひずみが表れ、失わなくても良い命まで失った。今こそ、憲法第25条第2項に掲げられている国の責任を明確にしなければならない。義務付け・枠付けの見直しや補助金の一括交付金化などによって、国民の権利に関わる最低基準や施策に必要な財源が歪められてきた。国の出先機関廃止というのは、行政組織まで破壊する乱暴な議論である。自治体でも様々な分野で民営化が進んでいるが、公共サービスをコストカットすべきではなく、むしろ拡充すべきであり、国民的な運動が重要だ」と述べました。

 討論では「地方整備局も地方移管の議論の俎上にあるが、国道や河川の維持管理は、予算面を含め、国民生活に大きな影響を与える。自治体の首長が参加する『地方を守る会』などでも反対の声が大きい。ナショナルミニマムの確保が不可欠」(国土交通労組)、「地域主権戦略会議が政府の最高決定機関のように扱われている。しかし、住民の自己責任を強調し、公務員減らしにもつながる改革には断固反対。県から市町村への権限移譲でも混乱が生じているが、この動きを止めていかなければならない。推進派はマスコミも動員しながら国民の意識改革を図っている。また、巧妙な手法で着々と進められている点にも注意が必要だ。自治体間の権限移譲でも、広域性や専門性の確保が問題になっている。住民も自治体労働者も参加して、行政を守る運動をすすめたい」(自治労連埼玉県本部)、「地域主権改革は玉葱の皮むきのようであり、後に何も残らない。結局は、地域住民が損をすることになる。小泉構造改革でも痛い目にあっており、宣伝していくべき。可視化したたたかいが重要。日弁連でも貧困対策チームを作り、この課題を追っている。実際に一体運営施設にも行ってみたが、そこで全てが解決するわけではなく、行政間の連携こそが重要だ」(弁護士)など、様々な角度から「地域主権改革」の問題点が語られました。

 集会のまとめとして、柴田労働法制埼玉連絡会代表(埼玉県労連議長)より挨拶があり「地域主権改革の推進派は大がかりなプロパガンダを展開し、本質を見えないようにしている。しかし、本日のシンポジウムによって、住民にどのような影響が及ぶのかが分かった。みんなで力を注ぎ、共感を呼ぶ運動を広げよう」と呼びかけました。