My Way My Life2013年12月号 Vol.481

長野・上田市職労 中沢 徳士(のりと)さん

上田の「文化」を守るのが仕事

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▲埋蔵文化財発掘現場の一枚。「冬は寒いし、夏は暑い…。楽しいばかりじゃないよ」と中沢さん

 「住職、こんにちは」「中沢さん、屋根の葺(ふ)き替えが大詰めなので見ていきませんか」。軽い会話のなかにも、住民との厚い信頼関係がうかがえます。

 上田市職労で長年執行委員長を務める中沢徳士さん。業務では市の教育委員会で文化財保護を担っています。中沢さんは、大学で日本史学を学ぶため東京で4年間過ごした後、文化財の仕事がしたくて故郷の上田市役所に入庁しました。最初の数年間こそ別の部署にいましたが、上司に「発掘の人手が足りない。埋蔵文化財の仕事をしないか」と言われて職場を変わってから、文化財一筋に仕事に打ち込んできました。

 いま力を入れているのは、市南西部の丸子地区に室町時代に建てられたという重要文化財「法住寺(ほうじゅうじ) 虚空蔵堂(こくぞうどう)」の保存事業です。虚空蔵堂は、45年ぶりのこけら葺き屋根の葺き替えを行っており、中沢さんも足しげく通っています。「人を呼びつけるのではなく、現場に出ていくようにしている。自分の目で見て、住民と話してこそ、住民が望む問題解決ができる」と話します。

 中沢さんは「観光収入などほとんどなく、単独や地域だけでは支えていけない文化財がたくさんある。きちんと残していきたいが、公務だけで守れるわけでもない。『文化財を守る人を守るのも公務の仕事』と教えられた」と語ります。虚空蔵堂の改修でも、新たに葺く屋根のこけら板一枚一枚に、地元の子どもたちの将来の夢を書いてもらって葺きこんでいます。「将来、虚空蔵堂を守ってもらう子どもたちに関心を持ってもらいたい」という願いだとのこと。

 虚空蔵堂だけでなく、市内を回っては文化財の状況を確認。傷みが激しいものを見ると、対策に思案をめぐらせます。

 中沢さんは、「日本国憲法25条には『健康で文化的な生活』とある。健康だけでなく、文化的でなければならない。その『文化』を守るのが自分たちの仕事なのかな」と語ります。

 そう言いながら「でも、自分の好きなことが仕事になるんだからいいよね」と笑う中沢さん。そこには上田市の文化財への深い思いと、強い情熱が感じられます。

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▲虚空蔵堂の葺き替えに伴って新しいものに取り替えられる鬼面を確認。眼差しも真剣です
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▲こけら板の葺き替えがほぼ終わった虚空蔵堂。一枚一枚に子どもたちの「夢」が書かれています