いい旅ニッポン見聞録2018年4月号 Vol.533

全国を測量した伊能忠敬ゆかりの地

江戸まさりの山車と囃子

千葉県香取市・水郷のまち佐原

▲小江戸情緒あふれる街並み

人生80年の時代には、退職後の健康、お金、そして「生きがい」が重要です。

その点、江戸時代の佐原の商人、伊能忠敬(いのうただたか)は隠居してからが充実しています。商人として成功し名主としても手腕を発揮した後49歳で隠居し、50歳にして幕府天文方・高橋至時に弟子入りし本格的に天文学や暦を学びます。そして55歳から71歳まで全国を測量して精度の高い地図づくりに尽力しました。

この忠敬が前半生を過ごしたのが水郷のまち・佐原です。17歳で酒造業などを営む佐原の伊能家に婿入りした忠敬は、大きく家業を発展させました。一方で仕事の合間に天文暦学の勉強を続け、弟子入りする前にはすでに暦法の基礎ができていたといいます。後半生を輝かせた土台は佐原での前半生にあったようです。

古い商家が立ち並ぶ小野川沿いに忠敬が30年余りを過ごした店舗などが残されています。すぐ近くの伊能忠敬記念館には、忠敬が佐原で過ごした前半生と10回に及ぶ全国の測量の後半生の記録が国宝を含む資料とともに紹介されています。今年は伊能忠敬没後200年です。彼と自分との気力・体力・財力の差に呆然としつつも忠敬の情熱に触れた気がしました。

さて他にも佐原に行ったらぜひ訪れたいのは、由緒正しい香取神宮、6月には「水郷佐原あやめパーク」、酒蔵といろいろありますが、時期を合わせられれば「佐原の大祭」は見ものです。江戸時代から続くこの祭りでは、巨大な人形を載せた高さ9㍍にもなる山車10台以上が町を曳き廻されます。人形は、古事記に出てくる神々が半分ほどで、あとは桃太郎や浦島太郎、金時山姥、太田道灌、仁徳天皇、楠木正成、小野道風(平安時代の書家)、鯉、鷹など多種多様です。その自由さには眩暈がするほど。それぞれの山車は木彫りの彫刻で飾られ、その手前には囃子手が腰掛け独特の旋律を奏でています。この大祭とお囃子は国の重要無形民俗文化財の指定を受けており、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている貴重なものです。大祭の時期以外に訪れた方でも伊能忠敬の旧宅から歩いて5分程の山車会館で巨大人形の山車を見ることができます。

7年前の東日本大震災で佐原の街並みは大きな被害を受けました。ようやく水路の石垣や伝統家屋が改修され「北総の小江戸」の情緒が戻ってきたところです。

▲山車の人形「大鷹」

▲伊能忠敬旧宅

見聞録メモ
伊能忠敬記念館
住所:香取市佐原イ1722-1
電話:0478-54-1118