いい旅ニッポン見聞録2017年11月号 Vol.528

新潟県南魚沼郡湯沢町 貝掛(かいかけ)温泉

目を酷使するあなたにピッタリの目の温泉

美味しいお米と伝統の織物

▲野趣あふれる野天の温泉には提灯も

日本有数の米どころ新潟。美しい棚田は絶景スポットとしても注目されています。その新潟からパソコン、スマホで疲れ目のあなたにイチオシの貝掛温泉をご紹介。

江戸時代から広く知られる目に効く貝掛温泉はメタホウ酸を多く含み、白内障、眼底出血、眼精疲労、ドライアイに効果があります。残念ながら近眼、老眼などピント調節には効きません。ぬる湯を手に取り目をパシャパシャ洗うと、こころなしかよく見える気も。

源泉は低めの37度。浸かっていると、あったかいとも冷たいとも感じない不思議な感覚。肌に小さな炭酸の気泡がびっしりとついてきたら「効いてきた!」。ぬる湯に30分以上つかり、加温された熱いお湯にさっと入ってあがるのが伝統の長湯入浴法です。

露天風呂は木々に囲まれ、夜は提灯がともり星空を見上げます。夕食は美味しいお米と目によいクコなど滋養のある食材たっぷりの温泉粥が名物です。

手しごとで未来へつなぐ織物の町

周辺には日本有数の織物の産地、塩沢、五泉、十日町があります。昔の宿場の風情が残る塩沢駅近くの塩沢つむぎ記念館を見学しました。

一番高価な麻の「越後上布(えちごじょうふ)」は1反160万円。温泉でよく洗った目をこすってもゼロは減りません。高価な理由は気の遠くなるような作業工程にあります。

原料の苧麻(ちょま)(ラミー)を栽培し、その繊維を髪の毛よりも細く割き、一本一本手でつないで糸にします。その後雪の上に何度もさらし、天然のオゾンの力で漂白。次に織物の設計図通りに別の糸で縛り、染めます。縦糸を地機(じばた)に設計図通りにかけ、横糸を縦糸とピッタリそろうように1本ずつ打ち込んでいきます。

苧麻の繊維は極細で弱く、少しの乾燥や力加減で切れてしまうため、刷毛で水を塗りながら寸分の狂いもなく打ち込みます。1カ所でも間違えば正規品になりません。熟練の職人が1反織るのに6カ月以上かかります。できあがった生地は向こうが透け、風が通り、ふわりと天女の羽衣のような軽さです。一見地味ですが、究極で極上の普段着の夏着物になります。

ユネスコ無形文化遺産、国重要無形文化財に登録されていますが、江戸時代には年30万反あったという生産量も現在は80反程度。高価ですが、全工程の労働時間を考えると最賃に満たないかもしれません。

ほかに絹を使った本塩沢、羽化してしまった繭をつかった塩沢紬、麻の夏塩沢や小千谷縮などは高機(たかばた)で織ります。お子さんと一緒に機織り体験もできますよ。

▲十日町市を代表する「星峠の棚田」

▲苧麻(ちょま)は弱いため床にすわる地機(じばた)でしか織れません

見聞録メモ
【貝掛温泉】
南魚沼郡湯沢町三俣686
越後湯沢駅東口より「浅貝・苗場プリンスホテル」行き、貝掛温泉バス停下車徒歩10分
問合せ:025-788-9911
【塩沢つむぎ記念館】
南魚沼市塩沢1227-14
塩沢駅徒歩3分
問合せ:025-782-4888