メニュー

第7録 泉質の違う9つの外湯をめぐると願いごとが…

いい旅ニッポン見聞録2016年7月号 Vol.512

長野県・信州渋温泉

泉質の違う9つの外湯をめぐると願いごとが…

湯けむり漂う温泉街で外湯めぐり
201607-kenbun-1

▲大正から昭和初期の建物も残る街並み

 夕暮れ時、明かりが灯りはじめると、石畳の通路には外湯めぐりをする人たちの下駄の音が「カラン、コロン」と響き渡ります。温泉の湯気が立ち上り、街はやわらかくオブラートに包まれたようなノスタルジックな雰囲気に変わります。

 長野県屈指の温泉郷、湯田中渋温泉郷は夜間瀬川、横湯川、角間川流域に点在する9つの温泉の総称です。開湯以来1300年以上の歴史を重ねます。約600メートルの通りに沿って、35軒の旅館と9つの共同浴場(外湯)がある、こぢんまりとした人気の温泉地・信州渋温泉を訪ねました。

 渋温泉の旅館と外湯はすべて100パーセント源泉掛け流しで、源泉により泉質や成分はそれぞれ異なります。無色透明のお湯をはじめ、鉄分を帯びて茶褐色の湯、白濁したものから緑がかったものまで。効能も神経痛や痛風、眼病や美肌効果などさまざまです。

 旅館についたら、さっそく浴衣に着替え、「祈願手ぬぐい」を購入します。温泉宿泊者に無料で貸し出される浴場の共通の鍵を持ち、下駄を履いて、街に繰り出しましょう。

 一番から九番まである共同浴場は男女別で5~6人入ればいっぱいに。年季の入った木造の浴槽やタイル貼りの浴槽で地元の方や旅人との語らいも楽しく、ほっこりした気分に浸れます。異なる泉質から自分の好みの湯を探してはいかがでしょうか。

 いずれの源泉も高温で60~90度くらいあり、水でさましながら入ります。湿疹に効くとされる笹の湯(二番湯)は、とにかく熱く、飛び上がるほど。地元の方もなかなか浸れないとか。

 苦(九)労を流し、厄除けの利益があると言われる9湯めぐり。各浴場にあるスタンプを購入した手ぬぐいに押し、最後に温泉街を見下ろす「渋高薬師」で印綬すると願いごとが叶うそうです。

 街は一周しても20分ほど。入浴に疲れたら街をぶらり。大正時代や昭和初期から残る木造建築や、昔懐かしい射的場にスマートボール、自家製まんじゅうを売る土産屋などが並びます。

 家族でも友だちどうしでも安心して散策できる正統派のシブ~い温泉街です。

見聞メモ
【信州・渋温泉外湯】
9つの外湯めぐりは渋温泉の宿泊客は無料。(6:00~22:00)/宿泊客以外は九番湯大湯のみ利用可能、500円。(10:00~16:00)
交通/長野電鉄長野駅から湯田中行き特急で約50分、終点湯田中駅下車/信州中野ICから国道292号経由13キロ

201607-kenbun-2

▲渋温泉外湯の一番湯(初湯)
201607-kenbun-3

▲「信州渋温泉巡浴祈願」手ぬぐいに9つのスタンプを押しながら外湯をめぐります
201607-kenbun-4

▲外湯の中で最も広い渋温泉を代表する名湯の渋大湯