かがやきDAYS2018年10月号 Vol.539

音色に魅せられ つくり、奏でる

滋賀県職 徳田(とくだ) 聡(さとし)さん

▲これまでの作品を前にヴァイオリンの魅力を話す徳田さん

「この曲面を出すのに苦労しました」と完成間近のヴァイオリンを手に話してくれたのは、滋賀県畜産技術振興センターで働く徳田聡さん。ヴァイオリンをまさに一からつくってしまう人なのです。

ヴァイオリンは、独特な曲線と曲面で構成された表板と裏板と横板の「箱」に弦を張る擦弦楽器。材質、形、厚み、…どれひとつをとっても音色に大きく影響すると製作の苦労を話します。「最初の一本は大きすぎました」と徳田さんが言うとおり、ヴァイオリンの大きさや形に厳密な規格はありません。「まずは型紙を作ってその型枠をつくることからですね」

次に材料。厚さ3センチ以上はあろうかという表板・裏板の原材木の塊を見せてくれました。「木目をあわせ、型に合わせて切断して…。あとは鑿(のみ)と鉋(かんな)でひたすら削っていきます。最後は目と指先の感覚だけ」。完成したヴァイオリンを片手に裏板の曲面を見せる徳田さんは満足そう。

初めての音色に感動

ヴァイオリンづくりのきっかけは、コンサートで初めて生で音を聞いたことです。「本当に“たまたま”なんです」と徳田さん。「初めての音色に感動しました。周りをみると泣いている人もいる。衝撃でした」。そこからどんどんのめり込んでいきます。「木工の経験もなく、道具の使い方からでした」「特殊な工具はいりません。ひたすら削るのみ」。削り過ぎたり彫り過ぎたり…。「夜お酒飲んでから作業したことがあって…翌朝みたらとんでもないことになっていたこともあります」と笑います。

型紙に書かれた数字や作品は、どこもコンマ1ミリ単位です。毎日コツコツではなくて一工程を集中して作るそうで、相当な集中力。「何時間も鉋で削り続けて、切りクズだらけでリビングに行って家族に怒られることもよくあります」

「これで良し」はない

演奏家は100年以上も前に作られた古いものを好むそうで「木の質、乾燥具合なんかでしょうね。400年もほぼ変わらない形で作られているものですから…」と話はつきません。「音には『これで良し』はありません。これからもつくり続けていくんだろうなあ」としんみり話してくれました。

▲角材から切り出したネックの部分を彫刻刀で何時間も削り続けます

▲徳田さんのヴァイオリンが数百年後に有名な演奏家の手で音を奏でられているかも