かがやきDAYS2014年8月号 Vol.489

日本百名山を新たな視点で検証
名峰たちの「山となり」に触れてください

神奈川・横浜市従 樋口 一郎さん
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▲樋口さんの執筆書『新釈日本百名山』(発行:東京新聞、定価:1700円+税)、『ニッポンの山解体新書』、『湘南・三浦半島 山から海へ半日ハイク』の3冊ともに、すべて通販サイト「Amazon」で購入できます

小説家・登山家の深田久弥が『日本百名山』を発表してから今年で50年。樋口一郎さんは、この百名山を新たな視点から検証した書籍『新釈日本百名山』を5月に出版。登山情報誌『岳人(がくじん)』で連載していたものを再構成しました。

登山を始める前の樋口さんは鉄道ファン。鉄道旅行の際に軽い山に登っていたこともあり、就職5年目に職員サークル「葉月山の会」に入ったことで深みに。最初は百名山をめざしていたものの、静かな穴場や渋い山が自分の好みに合うことを知りました。「一時は〝アンチ百名山〟でした。連載をいただいていなかったら全山踏破の再開はなかったと思いますが、登ることで百名山の世界を見直すことができたのは良かった」と感慨深げです。

『新釈日本百名山』で樋口さんが意識したのは「各山の立場」。それぞれがどう位置づけられているのか、山の事情や見栄、コンプレックスなど人間関係的な視点で捉えた「山となり」が楽しく斬新です。山がくやしがったり自慢したりするわけはないのですが、樋口さんの表現によって山が生きいきとしてくるところが不思議です。

樋口さんが山に登るために大切にしているのは「楽しく安全に有意義に」の3要素。「その山から得た情報を私なりに再構築して世に伝えたい。これまで出版させていただいた3冊の本は生涯の財産です」と口調を強めました。さらに「山に登れるのも平和だからこそ。鳥海や赤城など、山名が艦名となった軍艦で多くの犠牲者を出した時代に、絶対に逆行させないことが肝要です」と語ります。

いま樋口さんは機関紙『横浜市従』で、登山をしない人にも興味を持ってもらえるように「登りたいのは山々」を連載中。「登山は自然を愛でる心があれば技術・体力は後からついてきます。まずは近場の山から登ってみてください」とアドバイスをいただきました。ここまで山に精通している樋口さん。きっと山に住みたいのではと思いきや「それはありません」とキッパリ。「山で不自由な生活をして家に戻り、日常生活の良さを見つめなおすのがいい。だから私は本当の山好きではないのかも」といたずらっぽく笑いました。山好きにもいろいろなタイプがあるようです。

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▲北アルプス岩小屋沢岳での樋口さん。後方は立山