第128館 東アジアを家族とともに踏破した人類学の先駆者 2012年12月号 Vol.469 徳島県徳島市 徳島県立鳥居龍蔵(とりいりゅうぞう)記念博物館 東アジアを家族とともに踏破した人類学の先駆者 鳥居龍蔵(1870〜1953)は、博物学の南方熊楠、植物学の牧野富太郎と並び、人類学、考古学、民俗学上に独学によって不滅の業績を残した不世出の三大碩学の一人と呼ばれています。 徳島市に生まれた鳥居は小学校になじめず、よく逃げ帰っていたそうです。ほどなく小学校に行かず、独学で歴史や文学、英語、ドイツ語、数学などを学びました。16歳の時、東京人類学会に入会。学会のリーダー・坪井正五郎の東大人類学研究室で標本整理の仕事に就きました。これが本格的な研究活動の出発点です。 鳥居は日本最初のフィールド・ワークを東アジアから南米まで広げました。その足跡は遼東半島、台湾、沖縄、北千島、中国西南部・東北部、内モンゴル、朝鮮半島、樺太、東部シベリア、インカ帝国遺跡、その間の日本列島各地と、広域に及んでいます。 独立心が旺盛で、学問研究のためには論争で師弟関係にも縛られませんでした。また学内に学問とは無縁の不可解な動きを察知したとき、東大助教授の椅子も捨て、自宅に鳥居人類学研究所を創設しています。 また戦時下で探検隊的なフィールド・ワークを妻や子と一緒に行いました。妻・きみ子は研究の上でも生涯の同志だったのです。 記念博物館には、世界各地や国内調査で収集した遺物や写真などを通して、調査成果が紹介されているコーナー、「家族探検隊」だった生涯をたどるコーナー、鳥居が撮った写真を検索できるパソコンや関連書籍、体験展示によって子どもでも楽しめるコーナーがあります。鳥居の全体像をビジュアルでつかめる、入門にふさわしい博物館といえます。さらに鳥居ワールドを知りたい方は、「東京大学総合研究博物館」に足を運んでください。 記念博物館がある緑に囲まれた地域一帯には博物館、美術館、図書館、文書館、野外劇場などが集積されていて「文化の森」と称されるにふさわしい環境です。 ▲ようこそ鳥居ワールドへ。博物館エントランス ▲「文化の森」の博物館群。手前は円形劇場 ミュージアムメモ 所在地/ 徳島県徳島市八万町向寺山 交通/ JR徳島駅から徳島バス利用約25分、 JR牟岐線「文化の森」駅から徒歩約35分 開館時間/ 午前9時30分〜午後5時 休館日/ 毎週月曜日(祝日または振替休日の時は翌日)、 年末年始 入場料/ 200円、高校・大学生100円、小・中学生50円 問い合わせ/ 088−668−2544 HP/ http://www.torii-museum.tokushima-ec.ed.jp