軍拡ではなく平和を ジェンダー平等を大切に 対話と共同を広げ要求前進 2026 新春鼎談
茨城自治労連書記長 前澤 海(うみ)さん、弁護士 山口 真美(なおみ)さん、自治労連中央執行委員長 福島 功さん
人間らしく働きくらしていける職場と社会を実現するため、ますます労働組合の役割が求められています。くらしの問題を入り口に、平和、ジェンダー平等の重要性について語り合いました。
物価高で悪化する生活 疲弊する現場を変えたい
福島 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
この鼎談で今年の目標や抱負について語り合いたいと思います。まず昨年を振り返りますが、消費者物価指数が50カ月連続で前年同月を上回り、お米の価格上昇など物価高で大変な一年でした。一方で、30年ぶりに3%の賃上げが実現しました。前澤さん、現場はどんな一年でしたか。
前澤 茨城県内の多くの職場では慢性的な人員不足で、そのしわ寄せが女性や若い職員にいってしまい、メンタルヘルス不全で休む職員が多くいました。国が経済対策として給付金制度を決めても実務をやるのは自治体職員です。そのため人手不足のなか、通常業務以上の業務がふってくると職員は疲弊し行政サービスは滞り、質は低下します。
福島 賃金や労働条件をめぐるたたかいはどうでしたか。
前澤 茨城自治労連は昨年、地域手当をめぐって運動を展開していきました。職場では地域手当も含めた賃上げに対する期待が高まっています。賃金要求は自分たちの生活改善はもちろんですが、これから新しく入ってくる職員の労働条件としても大変重要です。
戦後80年を超えて平和と憲法を守ろう
福島 生活を圧迫してくる原因の一つは、GDP比2%、11兆円の軍事費の前倒し予算であることは明らかです。日本の軍事化の動きが強まり、「新しい戦前」から「戦中」になっているとの声もあります。山口さんは昨年10月まで自由法曹団※の幹事長をされてきましたが、どんなとりくみをされてきましたか。
山口 昨年「戦後80年」の節目として、自由法曹団では5月に沖縄、8月に広島で憲法討論集会を行い、平和の問題を考えました。私自身、「憲法を守り生活にいかしたい」という思いが弁護士をめざした原点でもあります。国際緊張を高める政治ではなく、対話で物事を解決していく外交が大事です。また、「戦争の記憶の継承」にも真剣にとりくまないといけません。
前澤 職場では、軍事費の拡大について語られることはなく、組合内でも「憲法を語ることすら怖い」というような風潮があります。本当はもっと身近なものですよね。
福島 昨年11月の臨時国会でスパイ防止法案※が出されて、まさに公務員がターゲットにされています。
山口 スパイ防止法案は、住民情報と日常的に接している自治体労働者が、国に反対意見を持ったり、反対運動することを抑え込むための危険な動きです。とくに参政党の案文では「国の諜報防止活動に自治体も協力しないといけない」などと書かれています。
前澤 現場でも矛盾を感じています。生活困窮者給付金の業務に追われて、注力すべき生活支援の相談業務が圧迫される事態も起きました。平和の問題について、もし再び徴兵する事態になった際、私は障がい福祉の担当として「だれを戦場に送るのか」という命の選別に関与させられるのではないかとの恐怖があります。
福島 私たちの先輩は戦争協力の苦い歴史をふまえて、「二度と赤紙(召集令状)を配らない」と誓って運動してきました。
山口 自治体の協力なしに戦争はできません。だからこそ、国に不満を持つ市民を監視・排除するような社会になれば、それは地方自治の死を意味します。自治体労働者が「住民のいのちとくらしを守る砦」となるかが問われています。
だれもがいきいきと働ける職場と制度を実現しよう
福島 前澤さんは茨城自治労連書記長になられて女性役員として率直に思うところはありますか。
前澤 正直、大変さは感じてます(苦笑)。子ども2人を育てて、仕事は係長をしてます。労働組合活動はまだまだ勉強中ですが、女性が組合活動をすることで「女性が働きやすい職場環境」をつくれるのではないかと考えています。能力はあるのに自信を持てない女性が多くいますが、女性がいきいきと働く職場は活気があり、男性にとっても良い環境のはずです。茨城自治労連の活動にも「昇任・昇格」について女性の要求を入れていきたいです。
福島 今の時代、物事を前進させるためにジェンダー平等は不可欠だと思っています。長時間労働で男性が会社に縛られる、女性が家事を強いられる構造を変えないと。また、選択的夫婦別姓は、与党の都合で、議論が後退しています。
前澤 選択的夫婦別姓の議論では、戸籍編成の実務者として自治体職員はいろいろな矛盾を感じているはずです。私も、特に離婚時に大変な思いをしている女性のサポートをしてきました。共同親権についても実際に対応すると、いろいろな問題が表面化してくると思います。
山口 選択的夫婦別姓にとりくんでいる弁護士もたくさんいます。もっと自治体の職場の声を聴く機会があれば良いと思います。実は、自由法曹団の幹事長就任については当初固辞していました。しかし、このままでは「同じことの繰り返しになる」「男も女も関係なく就任できるようになるべきだ」と考えて引き受けました。女性一人きりにならないよう、事務局次長に女性を配置してくれる配慮などもありました。
「クリティカル・マス(ある一定数を超えると全体の雰囲気が変わる分岐点)」をつくり、女性からの発言が「個人の意見」ではなく「共有される問題意識」となるよう工夫しました。
福島 自治労連では、『自治体労働者の権利宣言(案)』をつくっています。そこには「自治体労働者は、性による一切の差別を排除するとともに、真の両性の平等が保障されなければならない」と規定しているんです。今だからこそ、もっと広げたいですね。
社会を変えるキーワードは「何よりも人権を大切に」
山口 ジェンダー平等で紹介したいことがあります。アイスランドは14年連続でジェンダーギャップ指数※1位。男女平等がすすんでいる国です。経済平和研究所による世界平和度指数でもなんとアイスランドは17年連続1位なんです。人権を大事にすることと平和を大事にすることはつながっていることを示しています。女性が団結してゼネラルストライキを行って、「いかに国民生活のなかで女性が果たしている役割が大きいか」を示して、権利の向上をすすめてきました。アイスランドで重要なのは男性育休の取得率が85%と高いことです。世界1位になった後も、「まだ完全男女平等ではない」と不断の努力をしていることがすごいところです。憲法13条をいかして、自分らしく一人ひとりが大切にされる社会をめざしていきたいです。
前澤 10年ほど前は男性職員が「子どもの通院」のために休むことが疑問視されていました。
山口 弁護士事務所でも「(子どもの看護を)奥さんにやってもらったら」なんて言おうものなら、「それハラスメントですよ」とズバリと言える青年が増えています。
前澤 今は「妻も休むけど、一人じゃ大変だから夫も休む」ことが当然と受け入れられる時代です。そんな若い職員を気持ちよく応援できる職場体制が大事だと思います。
福島 保育士や看護師など、自治労連の組合員の半分が女性です。2023年の定期大会で「ジェンダー平等宣言」を出していますが、やはり実践しなきゃダメだと強く思います。
前澤・山口 その通り!
福島 山口さんから自治労連に期待することなどありますか。
山口 国が国民生活を大事にしないなかで、住民と接している自治体の役割はますます大きくなっていくと思います。住民の声を聴いてより良い選択をして、施策に反映していってほしいです。「何よりも人権を大切にする」が、今の社会のキーワードだと思います。
福島 本日はありがとうございました。一年がんばりましょう。
もっと女性の要求を労働組合に反映させたい
前澤 海さん
茨城自治労連書記長
常総市職労前委員長
茨城自治労連執行委員を経て書記長へ
〝憲法を守りたい〟が弁護士活動の原点
山口 真美さん
弁護士。自治労連弁護団
過労死弁護団全国連絡会議
自由法曹団前幹事長
(2023年10月~2025年10月)
ジェンダー平等は物事を前進させるカギ
福島 功さん
2013~2017年自治労連副委員長、2017~2025年京都自治労連委員長
2025年より自治労連中央執行委員長。京都府職労出身
▲常総市職労と常総社協労組が合同で行っているチャリティーバザー
▲自治労連のカスハラ調査の記者会見で法的ポイントを解説する山口弁護士
気になるワード
●自由法曹団
自由法曹団は、1921(大正10)年に神戸における労働争議の弾圧に対する調査団が契機となって結成された弁護士の団体です。2021年には創立100周年を迎えました。大衆運動と結びつき、労働者・農民・勤労市民の権利の擁護伸張を旗じるしにしています。
●スパイ防止法案
正式名称は、「国家機密に係るスパイ行為等の防止に関する法律(案)」。今回、自民・維新・参政・国民の各党が外国勢力の脅威を煽り、スパイ防止の名のもと、国民の監視や報道の自由を規制しようとしています。
1985年中曽根内閣時代に「国家秘密法」として提案されました。最高刑は死刑で、国民の知る権利や結社の自由を脅かすものとして反対運動が起こり廃案になりました。
●ジェンダーギャップ指数
ジェンダーギャップ指数は世界経済フォーラムが毎年発表している、各国の男女格差を測る指標です。「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価され、0が完全な不平等、1が完全な平等を意味します。