「住民のために良い仕事をするとは ~人権を擁護するために~」
第24回自治労連社会保障集会 記念講演より
▲第24回自治労連社会保障集会は5月31日に東京都内で開催され、オンラインを併用し全国から60人以上が参加しました
第24回自治労連社会保障集会では、自治体職員として長らく生活保護を担当し、現在「生活保護問題対策全国会議」の事務局次長として活動する田川英信さんの講演を聞きました。
生活保護制度が権利になっていない問題
日本の相対的貧困率は、2021年時点でも15・4%であり、日本政府は改善の目標設定もせず、貧困対策は他の先進国と比べても著しく弱い。政府が貧困解消に全く熱意がなく、日本では「自助」の名のもとで自己責任論が幅を利かせています。
若い世代には、「行政が対応して助けてくれる」という実感が持てず、社会全体で支えるという感覚に乏しく、公共の役割に期待していません。現在の生活保護制度が権利になっていない現状が、生活保護に対する目線を厳しくしている原因につながっています。
自治体職員の原点考えて見つめ直す
群馬県桐生市での違法な生活保護対応の実態が大きく報道されています。国の生活保護基準減額の撤回を求める「いのちのとりで裁判」が行われています。自治体の労働組合の役割も極めて大きいです。
例えば、生活保護利用者が子どものために学資保険を蓄えて、満期返戻金を収入として減額処分した行政判断の是非を争った裁判では、労働組合としても不当処分であると原告を支援しました。最高裁では原告が勝利し、その後に実施要領が改定され、高校生の就学費用が生活保護で支給できるようになりました。これは労働組合だからできたことです。
自分たちの仕事が住民のためになっている自信があるか。住民のために働いていると胸を張れるか。働きがいのある職場になっているかを改めて考えてほしい。今こそ、自治体職員としての原点をしっかり見つめ直し、労働組合の役割についても考え行動しましょう。
▲「生活保護問題対策全国会議」事務局次長の田川英信さん(元自治労連副中央執行委員長)
参加者の感想
●群馬県桐生市の生活保護行政とリアルな職場の状況から、自治体で働く労働者と労働組合の役割が鮮明に語られた。みんなに聞かせたい(長野)
●生活保護が権利であることをあらためて感じることができた(埼玉)
●入職当時のケースワーカーとして、日々悩みながら仕事をしていたことを思い出した。福祉担当者ほど福祉の心が足りない職場の実態が浮かび上がり、やり切れない気持ちになっている(山口)
●日々の忙しさで忘れかけていたものを思い出させてもらった。主張すべきことをはっきり言葉にして訴えなければ(東京)
●自己責任論が骨の髄まで沁み込んでいる職員が増え、労働組合の加入にも影響を及ぼし、存在意義自体が問われているような状況にある(愛知)