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賃金決定のしくみと問題点を学びみんなで力合わせ賃金アップ

だれでもわかる賃金のハナシ

私たちの賃金と労働条件がどうやって決まるのか。そのしくみや課題などをあらためて学びましょう。

給与明細からいろんなことが見えてくる

まずは給与明細を確認してみましょう。基本給は「給料表」にもとづいて決定されます。そして扶養手当や地域手当、通勤手当等がそれぞれの基準で支給されます。時間外労働があれば、民間の割増賃金に相当する時間外手当等が支給されます。支給額から税金や共済掛金(いわゆる社会保険料)等が引かれ手取りとなります。なお、交渉で勝ち取った賃金引き上げ分は、議会で可決されしだい4月まで遡って「差額支給」されます。

職務給・生計費原則とかけはなれた人勧制度

人事院は「民間給与実態調査」をもとに、国家公務員の賃金などについて首相と衆参議長に勧告します。地方公務員の賃金と労働条件については地方の人事委員会が9~10月に勧告し、それぞれ自治体当局との労使交渉を経て決定されます。

最低賃金の引き上げや25国民春闘での全国的な民間賃金引き上げで4年連続の引き上げ勧告が期待されています。

一方、地方公務員法では、①職務と責任、②生計費、③国及び他の地方公共団体の給与、④民間の給与などを考慮するよう定めていますが、人事評価制度が持ち込まれ、「能力・実績主義」強化による格差拡大など、一部の職員のみ優遇される形に変質させています。

さらに人事院が計算する「標準生計費」が生活実態に見合わない低い水準であることや、「民間給与実態調査」も2006年に比較対象がより小規模な企業にまで拡大され、恣意的に低い水準とされた問題点が指摘されています。

「アップデート」の名でねらわれる公務の変質

人事院が昨年言及した「給与制度のアップデート」は、公務員の賃金について「能力・実績主義」の強化など、さまざまな格差を拡大するもので、各地方の人事委員会もこれに追随しています。

人事院の有識者会議「人事行政諮問会議」は、今年3月に人事院総裁に最終提言を提出しました。提言は人材を確保し「未来を支える公務であり続けるため」としていますが、その中身は「能力・実績主義の強化」「本府省優遇」「三位一体の労働市場改革の公務への持ち込み」をねらっていると言わざるを得ません。

すでに民間では成果主義の弊害が指摘されています。公務の仕事ではチームワークが重要であり、職場の分断につながる「能力・実績主義の強化」「本府省職員優遇」ではなく、「だれもが希望と意欲をもって働くことができる公務員制度」の実現が重要です。

▲3月10日に人事院中国事務局と交渉し、現場の声にもとづいた改善を求める自治労連と公務労組の仲間

とても密接な関係 最低賃金と公務員賃金

一般職の公務員は最低賃金法の適用除外ですが、憲法の「健康で文化的な生活」を保障するための水準である最低賃金は、公務員にも守られるべきです。実際には高卒初任給などで最低賃金を下回る事例があり、労働組合で指摘してきたことで是正させ、若年層の大幅引き上げにもつなげてきました。

特に労働組合のとりくみによって、会計年度任用職員の適切な給与決定について、総務省は地域の最低賃金に留意する旨の通知を出しました。

さらに、公務員賃金や地域間格差是正のため、自治労連は全国一律最低賃金制度の実現を求めています。


用語解説

●本府省(職員)優遇
各府省(いわゆる「霞が関」)に勤務する一部の国家公務員、とりわけ政策立案や高度な調整にかかわる本府省のキャリア職員について、より高い賃金となるさまざまなしくみ。本府省勤務と地方勤務の間に格差と分断をもたらします。公務の職場ではチームワークや住民に寄り添う視点こそが重要です。

●人事委員会
都道府県及び政令指定都市などに置かれ、独自に給与水準、手当などを勧告します。

●三位一体の労働市場改革
政府が推進する労働市場改革で、①必要なスキルを学びなおす(リ・スキリング)、能力向上支援、②ジョブ型人事(賃金)の導入、③成長分野への労働移動の円滑化、が3つの柱です。

●地域手当
民間賃金が高いとされる地域に対して支給される手当。東京特別区は最大の20㌫の一方、ゼロ㌫地域は1447市町村と大多数で、地方間格差の原因ともなっています。今年から支給地域の「大くくり化」がされています。

●最低賃金
地域別最低賃金と特定最賃があり、地域別最賃は都道府県内で働くすべての労働者に適用されます。地域間の格差が人口流出や地域経済を疲弊させる原因となっており、全労連は全国一律の最低賃金制度と「どこでも最低時給額1700円以上」をかかげています。