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第86録 自然につつまれ歴史にふれる紫式部ゆかりの寺院

いい旅ニッポン見聞録2024年1月号 Vol.602

『源氏物語』誕生の地

自然につつまれ歴史にふれる紫式部ゆかりの寺院

滋賀県大津市 石山寺

▲石山寺本堂。紫式部はここで『源氏物語』を構想・執筆しました

2024年のNHK大河ドラマは紫式部の生涯を描く『光る君へ』。紫式部が『源氏物語』を起筆したと言われる滋賀県の石山寺を訪れました。

観光客でにぎわい 巡礼コースも人気

石山寺は小学生時代に遠足や写生大会等で訪れて以来約50年ぶり。駐車場が広くなり、大河ドラマ効果か大型バスが並び、外国人観光客でにぎわっていました。

門前の旅館や食事処、お土産店を通り抜けて山門(東大門、重要文化財)をくぐります。志納所(しのうしょ:料金所)を通り右折し、大階段を登ると「石山寺」の名前の元になった壮大な硅灰石(けいかいせき:天然記念物)が突出した広場に出ます。その大きさには圧倒されます。

広場を左折すると、紫式部が『源氏物語』を構想・執筆した本堂があります。大河ドラマのほか、さまざまな展示があり、特に本堂は人気でした(本堂内は撮影禁止)。多くの僧侶による読経も聞こえ、改めて石山寺の素晴らしさを実感できる場所でした。

国宝の多宝塔(たほうとう)、瀬田川から対岸の景色が一望できる月見亭、八大龍王社(はちだいりゅうおうしゃ)、御影(みえい)堂など観賞する所がまだまだあり、ゆっくり回って約2時間かかりました。自然いっぱいの寺院で小鳥のさえずりが聞こえ、身も心も癒されました。

参拝者には若い人たちのほか、白装束・輪袈裟(わけさ)・菅笠姿で杖をついた人も多く見かけます。観音菩薩を祀る近畿2府4県と岐阜にまたがる33カ所の寺院を「西国三十三所」と言い、石山寺は「西国三十三所観音巡礼」のコースのひとつ。巡礼している人たちはどんな仕事をし、どんな気持ちで熱心に参拝しているのか聞きたい気持ちになりました。

美しい月と四季の花に彩られ

石山寺は月の名所としても知られています。歌川広重(うたがわひろしげ)など多くの浮世絵師によって描かれた「近江八景」のひとつが「石山の秋月(しゅうげつ)」。

紫式部は新しい物語を書くために石山寺に参籠した際、琵琶湖に映し出された月をながめているうちに情景が浮かび、書いた一節が『源氏物語』の「須磨」「明石」に活かされたと言われています。これにちなみ、石山寺では毎年中秋の名月の頃に「秋月祭」を開催しています。

さらに春と秋の年2回、紫式部と『源氏物語』に関連した展示を行っています(別途入場料が必要です)。桜も紅葉も月も美しい石山寺にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと心が穏やかにると思います。

公式ホームページは「大本山 石山寺」で検索を。

▲石山寺の名の元になった硅灰石

▲紫式部像

▲月見亭からの眺望