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「脱炭素」への転換 今こそ行動を 持続可能な社会を私たちの手で

2024新春 が聞く! 環境・エネルギー問題 私たちに何ができるか

国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域主任研究員 歌川 学さん
[青年]
茨城・常総市職労 佐藤 舞さん
岩手・岩泉町職 竹花 大樹さん
愛知・岩倉市職 用松(もちまつ) 寛秋さん

世界的な気候危機やエネルギー問題が年々深刻になっているなか、「脱炭素」への転換が求められています。産業技術総合研究所の歌川学さんにわかりやすく解説してもらい、私たち自治体・公務公共労働者や労働組合に何ができるか、あらためて学び考えます。

省エネ・再エネ技術で「炭素排出ゼロ」は可能

歌川 地球温暖化問題をめぐっては、2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議で二酸化炭素等の温室効果ガス削減を各国ですすめるよう目標と取り決め(パリ協定)がつくられました。世界の平均気温上昇を産業革命前から1・5℃未満に抑制すれば、異常気象や生態系への影響や農業被害などを小さくできます。それを実現するには2050年に炭素「排出ゼロ」、30年までに「半減する」目標がありますが、残念ながら日本はあまり削減がすすんでいません。
佐藤 2050年までに排出ゼロなんて、とても無理じゃないのですか?
歌川 多くは今ある技術で可能です。基本的には省エネ対策で全体のエネルギー消費を減らしながら、化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えていきます(図①)。実際に削減が大きくすすんでいる国もあります。日本も再生エネルギーの割合を約2割まで引き上げています(図②)。
竹花 ノルウェーの再生エネルギーは、ほぼ100%なんですね。
歌川 ノルウェーは水力発電ですね。北海油田をもっている産油国でもありますが、自国では使わず海外に売って大きな利益を得ています。
用松 具体的にはどこまで技術はすすんでいるんですか?
歌川 省エネ製品の普及、再エネ拡大がすすみ、冷蔵庫など家電の省エネも進化しています。再エネ100%の電力も各地で売られています。企業も省エネ商品を増やし、さらに原材料から製造過程すべて「排出ゼロ」でつくられた機械製品などを「売り」にして、排出ゼロの技術開発をすすめています。先行技術の特許は大きな利益につながり、遅れれば市場で売れなくなる可能性があります。
佐藤 確かに自治体でも省エネ家電の購入助成制度をやっていますね。
歌川 省エネ家電の普及、建物の断熱化とともに石油ストーブからエアコン暖房に切り替えをすすめる。さらに断熱効果を高めれば、過ごしやすい環境になります。対策で光熱費が減るので補助金制度なしでも元は取れるので、情報を知らせる工夫をすれば普及できます。例えば、「まちで一番古い冷蔵庫コンテスト」を行なって楽しく周知している自治体もあります。
佐藤 私は市の「幸せ長寿課」で高齢者対応の仕事をしているのですが、高齢者住宅の断熱と防寒対策が具体的にすすむと高齢者の健康も守れるようになりますね。
竹花 岩泉町は寒冷地なので、石油ストーブがないと心配ですね。
歌川 機器省エネ、断熱、再エネの組み合わせが重要になっています。建物の断熱強化をすすめることも必要です。すでにニューヨーク市は2024年から6階建てまでの新築建築に対して化石燃料使用を禁止し、26年には7階建て以上新築でも禁止されます。

地域に利益と雇用が! 環境と経済は両立できる

歌川 次に地域経済との関係です。日本は国全体で年15~35兆円の化石燃料等を海外から輸入しています。多くの市町村も毎年数億~数千億円の光熱費を域外に支払っています。国内・地域の巨額の光熱費の多くが域外・国外のエネルギー業に流れています。その流れを切り変え、自治体や地域で省エネ・再エネ設備費をまかない、地域発展・雇用創出に寄与することができます。
用松 具体的には?
歌川 地元企業に省エネや再エネの設備工事や保守管理のノウハウを身に付けてもらい、地元で受注できるようにすることです。支援制度や条例整備も必要で、長野県、鳥取県など一部で実施している自治体もあります。大規模あるいは特別な事業では、域外専門企業との連携の例もあります。
佐藤 常総市は2015年に豪雨で鬼怒川が氾濫して大きな被害があったので、環境問題は重要だと考えています。住民のいのちとくらしを守るために自然災害を減らしたい。でも、川が氾濫した時に壊れた太陽光パネルもありました。本当に省エネ設備を設置して大丈夫なのか不安です。
竹花 山間部に太陽光パネルを設置して土砂災害の原因にもなりましたね。
歌川 再生可能エネルギーの普及でも乱開発防止が前提です。自然や地理的に重要な地域と景観を守り、促進地域と禁止地域を都市計画のように区分けしてすすめることができます。自然や地域を守ることも国や自治体の本来の役割です。太陽光パネルは屋根設置なら新しい土地は不要です。田畑の上に設置して、農業と発電で分け合うこともできます(写真)。
佐藤 農作物はちゃんと育つのですか?
歌川 稲などは従来の3分の2程度の日射で育つので、田畑の上に3分の1の面積で太陽光パネルを設置します。トラクターなどが動かせるよう太陽光パネルの高さを地面から3~4メートルとって、柱の部分だけ農地転用許可申請します。

▲水田の上に設置された太陽光パネル(神奈川県小田原市)

身近なものとしてとらえ職場と地域で始めよう

歌川 私は自治体ごとに「どういったエネルギーが生み出されて、どれだけ炭素が排出されているか」を調査しています(図③)。工業地帯を含む自治体は工場の排出割合が非常に高く、企業の対策が重点です。逆に都市部、山間部や農村など工場などがない地域は、相対的にオフィス、家庭、運輸などの排出割合が大きい。全国一律ではなく地域の実態に合わせた対策が必要になります。だからこそ、地域の実態や特徴を知っている自治体のみなさんが地域住民とともに考える必要があります。
佐藤 どういったことができるのですか?
歌川 地域の企業や住民に向けた省エネ・再エネの情報提供やしくみづくり、地域主体の乱開発防止の再エネ普及です。一気に住宅や施設、機械、自動車を断熱・省エネ型に変えられないので、建物の新築や機械の買い替え時期がねらい目です。化石燃料の高騰で電力などの光熱費が上がっています。省エネ機械は大半は数年から10年で、再生可能エネルギーは10年で元が取れます。
用松 少し話が変わりますが、自治労連は「公共を国民・住民の手に取りもどす」のスローガンで、公務公共の拡充と職員が住民のために安心して働けるよう人員増と賃金引き上げなどを求めて運動しています。今回の環境とエネルギー問題も重要なポイントだと思います。
歌川 「公共を取りもどす」と言えば、企業に任せれば安く済むと思われていた水道事業の民営化で、水を浪費する利用者は料金単価が安く、小規模自治体や節水する利用者は逆に高くなるなどの問題があり再公営化された事例があります。省エネと再エネの工事や事業でも「域外大企業にお任せ」ではなく、地域主導で、地域外に流出していた光熱費、太陽光や風力などの売電収入、省エネ・再エネ対策費などを地域に還元すれば、地域を豊かにできます。環境政策と地域発展の総合政策ですね。とくに自治体施設の断熱化、機器の省エネと再エネ100%化で、快適な職場環境かつ費用対効果の高い「モデル自治体施設」をつくれば地域普及に役立ちます。
用松 労働組合で空調や断熱設備など職場環境の改善を要求するときの具体的な裏付けになりますね。あと私の仕事は道路や水路の維持管理なので、学んだことをいかしたいですね。
竹花 私も上水水道課で水道料金の設定をしているので、先ほどの水道の話は興味深かったです。実は町役場の建て替えが検討されていて、今回学んだことを反映させたいです(笑)。
歌川 自治体の庁舎や各施設の光熱費もかなり高くなっています。単年度予算で設備費を抑えるのではなく、環境のためにも、来年からの光熱費を大幅に減らして累積負担額を減らすためにも省エネ・再エネへ設備投資をしたほうがいいです。自治体施設が快適で費用対効果の高い脱炭素の良い見本になれば、地域企業や住民の対策促進ができます。
竹花 正直、小さな自治体でもやれることがあって驚きました。とても身近に感じることができました。お話を聞けてとても良かったです。ありがとうございました。

▲脱炭素を地域の活性と地元経済への還元につなげましょう
(歌川 学さん)
▲小さな自治体でもやれることがあり、とても身近に感じました
(竹花 大樹さん)
▲住民のいのちとくらしを守るために、自然災害を減らしたい
(佐藤 舞さん)
▲科学的根拠や世界の流れは、職場要求の裏付けになりますね
(用松 寛秋さん)

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