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〔100〕貝の魅力を届けたい

かがやきDAYS2023年4月号 Vol.593

貝の魅力を届けたい

兵庫・西宮市嘱託職員等労組 渡部(わたなべ) 哲也(てつや)さん

▲春の特別展「ダンゴムシの街」の準備中、オカダンゴムシに隠れる渡部さん

関西でも珍しい貝専門の博物館である「西宮市貝類館」に会計年度任用職員として勤務する渡部さんは新聞社からも頼りにされる学芸員です。

西宮市貝類館の学芸員の仕事は多岐にわたります。開館前、閉館後の生き物の世話、来館する子どもたちからの質問への対応、特別展の準備、パネル作成、実習やワークショップなどを開催することもあります。また、設備の保守管理なども重要な仕事のひとつです。

好きこそものの上手なれ

大阪の工業地帯で育ち、昆虫や生き物が好きな「虫とり少年」だった幼いころは、近くの岸壁のテトラポットで生物採集をして遊んでいました。水産系の大学を卒業後、博物館のアルバイト職員としてイベントの補助や標本整理などをしていたときに、仲間とともに行った九州の有明海調査で運命が変わりました。大学の臨海実験所を拠点に調査していくうちに、建物からたった5メートルで海という環境に憧れて、その実験所がある大学院にすすむことを決意し、生態学を専攻。二枚貝のなかに寄生するカニの生態について研究する傍ら、干潟や磯に棲む多様な生き物について知見を蓄えることに時間を費やしました。

貝類館での出会いは宝物

渡部さんは、自由研究の相談に来た小学生たちとの出会いを話します。「漠然とした質問をする子が多いなか、『カニの挟む力を測るにはどうしたらいいですか』と、とても具体的な質問をする子がいました。5年前の当館リニューアルの際は親子で意見交換会の外部委員になってもらいました」「また、『螺旋の式を導く実証実験をしたい』と、実際に自分の数式に近い貝を探し、調べる子もいました。そんな子どもたちに、微力ながら応援できる機会があるのは本当に役得です」とうれしそうです。

「西宮市には甲子園浜と夙川(しゅくがわ)河口という、自然状態が比較的残された親しみやすい浜辺が2つもあります。そこには大阪湾の多くの場所で見られなくなった生き物たちがたくさん棲んでいます。これは西宮の大きな財産です。自然の豊かさを、多くの人に楽しみながら理解してもらえるようにがんばります」と語りました。

生き物、自然の魅力にどっぷり浸かっている渡部さんが貝の大ブームを巻き起こすのももうすぐです。

▲ヨットの帆をイメージした西宮市貝類館

▲巻貝の幼生