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第75録 江戸時代の武家屋敷をいまも受け継ぐ

いい旅ニッポン見聞録2022年10月号 Vol.587

歴史と文化を楽しむ武家屋敷街

江戸時代の武家屋敷をいまも受け継ぐ

秋田・仙北市角館町(かくのだてまち)

▲圧巻の武家屋敷通り

400年前のまち並み

東京から秋田新幹線こまちでJR角館駅まで約2時間半。角館町は1620年ごろ芦名義勝によってつくられ、250軒もの武家屋敷がありました。20分ほど歩くと内町(うちまち)。黒い板塀に大木と武家屋敷が並び、400年を経た今も通りの幅、曲がり角などがそのまま。どどーんと広い圧巻の通りです。

直系が受け継ぐ石黒家

一番北の「石黒家」は芦名氏の譜代侍で芦名家断絶後は佐竹北家の勘定役を務めた、一番格の高い武家。正面には上級武士にのみに許された立派な薬医門(やくいもん)(角館現存最古)がありますが、意匠を凝らしつつも簡素で堅実な当時の武家のくらしぶりがうかがえます。

玄関がいくつもあり、客の格式で使う玄関が違ったとか。公開するなか唯一、今も直系子孫が住み続けています。

解体新書の画家

「青柳家」も佐竹北家の臣下で薬医門を許された上級武士。青柳家と婚姻関係の小田野直武は1774年『解体新書』の発行にあたり緻密な絵を描いた秋田蘭画(らんが)の祖。直武にまつわる品のほか、江戸時代から伝わる甲冑・刀など展示が盛りだくさんです。

歴史も文学も芸術も

北側には秋田の佐竹本家直臣の今宮武士団を中心とした田町武家屋敷もあり、西宮家の蔵などが見学できます。

角館出身で新潮社の創設者・佐藤義亮を記念した新潮社記念文学館やルネ・ラリックのコレクションで有名な大村美術館もあり、アールデコのカーマスコットやランプ、香水瓶などコレクションがあります。

伝統工芸樺(かば)細工

外町(とまち)には商家が並び、いまは土産店やおしゃれなカフェ、ギャラリーなどに利用されています。

山桜の樹皮を用いた樺細工が約200年前の藩政時代に下級武士の内職として生まれました。茶筒や硯箱、お盆など、日本で唯一の技術を伝える伝統工芸品です。

町内には約400本ものシダレザクラがあり、内162本が国の天然記念物。桜の季節はひときわにぎわいます。

秋田は温泉パラダイス。田沢湖温泉、乳頭温泉、少し足を延ばして八幡平などに宿泊するのもよいかもしれません。

▲ひときわ広い青柳家と薬医門

▲西宮家は、秋田佐竹本家直臣・今宮武士団のエリート

▲比内地鶏を使った親子丼が観光客に人気

▲桜の樹皮を使った樺細工のお盆としおり