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第68録 こんなところに秘境が! オクシズの“濃い温泉”

いい旅ニッポン見聞録2022年2月号 Vol.579

静岡県民がひた隠す名湯

こんなところに秘境が! オクシズの“濃い温泉”

静岡市・梅ヶ島温泉

▲山と川にはさまれひっそりたたずむ温泉街

あなたの知らない静岡

県庁もある静岡市葵区。新東名高速新静岡ICから40キロ、約1時間。安倍川に沿って車を走らせるとどんどん狭まる道…。昼間ですがライトをつけ対向車に気をつけ「えっ、トラック!」とひやひやしながら行き違います。

山の斜面に茶畑の静岡らしい景色が続きます。川向こうの茶畑に行くため、高所恐怖症の人には絶対に無理そうな細いつり橋がいくつも架かっています。

静岡市の都市部は約20%で残りは自然豊かな中山間地で「オクシズ」(奥静岡)との愛称で絶賛PR中! そのオクシズ中のオクシズに行ってきました。

インターに近い方からコンヤ温泉、金山温泉、新田温泉、梅ヶ島温泉の4つからなる梅ヶ島温泉郷。今回の目的地は山梨との県境近い最奥の梅ヶ島温泉です。泉質は硫黄が香るヌルっとしたアルカリ単純硫黄泉です。源泉は洞窟の岩肌から湧き、横を湯滝が流れています。

濃い温泉で濃い体験を

梅ヶ島温泉の歴史はなんと1700年。3~4世紀古墳時代の「応神天皇」の治世とされるころには存在が知られ、戦国時代には武田信玄の隠し湯、その後は徳川家康、家康の猶子(ゆうし:※1)・良純親王、清水次郎長なども訪れたとか。江戸時代には金山があり、慶長小判や大判が鋳造され、重要な役割を担いました。近年では茂木草介がNHK大河ドラマ『太閤記』の脚本を書き上げるなど文人にも親しまれました。

観光開発された温泉街ではなく、古くからの湯治場で、濃い泉質に加え、秘境の濃い体験ができることから「濃い温泉」と呼ばれて来訪者を魅了しています。

登山やハイキングのほか自転車乗りにも人気で自らの脚力だけで登ってくるロードバイクにも多くすれ違いました。

あなたは勇者になれる?

見どころは安倍の大滝で、日本三大瀑布の一つ(諸説あり)とも言われるそうですが、道のりがなかなか大変で、途中にはお決まりの吊り橋が2カ所。うち一つは板が2枚ずつ並んだだけで「一人ずつゆっくり渡るように」との指示が。渡り切れるのは勇者かもしれません。私はたどり着けず写真がありませんので、ポスターをご覧のうえ検索してみてください。ほかにも赤土の滝、日本三大大崩れ(おおくずれ:※2)の一つ大谷嶺(おおやれい)など自然の雄大さ、美しさだけでなく、恐ろしさを知ることができる秘境です。(山梨県へは通行止めのため通り抜けできません)

※1 猶子(ゆうし):親子関係を結んで子になった人
※2 日本三大崩れ:大谷嶺=大谷崩れ(1707年宝永地震、静岡市葵区)/鳶山(とんびやま)崩れ(1858年飛越地震、富山県立山町)/稗田山(ひえだやま)崩れ(1911年、長野県小谷村)

▲温泉が流れる湯滝。階段を上ると良純親王が建立した三蛇権現湯之神社があります

▲梅ヶ島温泉のポスター