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46冊目 春は馬車に乗って

図書館の本棚2022年2月号 Vol.579

46冊目

春は馬車に乗って

横光利一/著

この作品は夫婦の闘病と別れを描いた短編小説。「死」というセンシティブなテーマを扱う一方、作中での生命力溢れる描写が光る、横光利一の代表作とも言える作品です。

物語は秋に始まり、妻の病勢の悪化とともに、冬へと移ろいます。妻のために好物や薬を買い与え、仕事をすると「自分に淋しい思いをさせている」と責められる夫。覚悟の上であっても、妻を連れ去る「死」の存在に葛藤し続ける彼の心情は非常に共感できます。

物語の最後、夫婦は春を迎えます。喪失感と、絶えず巡ってくる季節を迎えた安堵感をぜひ感じてみてください。

新潮社
1969年8月
文庫352ページ
定価:649円(税込)