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第61録 篠山城跡をめぐり街の変遷を楽しむ

いい旅ニッポン見聞録2021年6月号 Vol.571

当時の人の営みを感じる城下町

篠山城跡をめぐり街の変遷を楽しむ

兵庫・丹波篠山市

▲城跡内に再建された大書院

街の中心に構える城跡と再建された「大書院」

篠山城跡は、古代より京と山陰を結ぶ中継地として発展してきた兵庫県の中東部の丹波篠山市の中心に位置します。篠山城は江戸時代の慶長14(1609)年に徳川家康が豊臣氏を包囲する拠点として建てられた城のひとつです。明治6(1873)年の廃城令で建物のほとんどは取り壊されましたが、内堀と外堀(一部)と城を囲む城壁が残されています。城内の石垣は圧巻です。また、城内には取り壊しを免れた大書院(蔵書、執務室を備えた武家屋敷)が残されています。

篠山城跡の大書院は、昭和19(1944)年に焼失してしまいましたが、平成12(2000)年にほぼ当時のまま再建されました。大書院は木造住宅建築としては規模が大きく、現存する同様の建物では京都二条城御殿遠侍(とおざむらい)に匹敵するものらしく、古代木造建築様式を伝承する貴重な建物です。

当時の城下町の雰囲気を今なお残す街並み

篠山城跡の周りには、当時の城下町の様子を思わせる街並みが残されています。

城跡の南側には東西800メートルにわたって河原町(かわらまち)妻入(つまいり)商家群(しょうかぐん)があり、商家が軒を並べます。当時の建物のまま、丹波焼の陶器を売る店やカフェ、お土産店が並びます。妻入りの建物構造のせいでしょうか、間口がたくさん並んでにぎやかな雰囲気です。

西側には南北に武家屋敷が並びます。現在も住民が普通に生活している住宅地ですが、道に沿って両側に土壁が並び、当時のままの武家屋敷を見ることができます。この通りはとても静かな雰囲気です。

北側には外堀のすぐ隣に明治時代に建てられた裁判所跡が当時の木造建築のまま美術館になっています。

東側には外堀と内堀の間に市立の小学校があり、運動場もあります。こちらも木造校舎がいい雰囲気を醸し出しています。

一歩路地に入っても、城下町の雰囲気はそのまま、普通に住家が立ち並び、住民生活が営まれています。篠山城跡をぐるりとひと周り散策するだけで、戦国時代から江戸時代までの城下町の様子、さらに近代までのゆっくりとした街の変遷が楽しめるのが魅力です。

▲天守台から見える小学校。内堀と外堀の間にある珍しい立地

▲商家が軒を連ねる通り

▲武家屋敷が立ち並ぶ通り