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第56録 多様な要素が詰まった〝歩いてほしい〟根室

いい旅ニッポン見聞録2021年1月号 Vol.566

東の端は自然の見どころいっぱい

多様な要素が詰まった〝歩いてほしい〟根室

北海道根室市

▲三列の砂洲からなる春国岱

北海道の東の端の街、根室。ハナサキガニやサンマなどの海産物で有名な街ですが、美しい自然のなかに多様な生物がくらす場所でもあります。

春から夏にかけて霧に覆われ、気温が上がらない根室は、平地にあっても高山と同じような気候条件になるなど、自然の持つ多様な要素がギュッと詰まっています。

春国岱(しゅんくにたい)

春国岱は風蓮湖(ふうれんこ)とオホーツク海の間にできた3列の砂洲で形成されています。その長さは約8㌔、幅が1・3㌔あります。砂洲上には海岸草原、湿原、森林、周辺には干潟が広がり、狭い範囲でさまざまな自然景観を満喫することができます。夏は緑が映えてとてもきれいなのですが、蚊が多いので要注意。雄大に空を飛ぶオジロワシや干潟で餌を捕るタンチョウにも出会うことができます。そして春国岱の一番のおすすめは夕暮れ。春国岱を囲む風蓮湖の湖面に反射した夕日の光がとてもきれいです。

落石岬(おちいしみさき)

根室の太平洋岸にある、突き出すような岬です。落石地区は根室のなかでも特に霧に覆われやすく冷涼な地域です。そのため、落石岬には冷涼な気候を好むアカエゾマツに囲まれた高層湿原(注1)があり、そこには日本では落石岬にしか咲かないサカイツツジという花が自生しています。アカエゾマツ林と高層湿原を横切るかたちで木道が整備され、岬の突端にある灯台まで散策することができます。おすすめはサカイツツジの花が咲く5月中旬から6月上旬です。

別当賀(べっとが)フットパス

根室の太平洋側の海辺を歩くフットパス(注2)です。森林、牧草地、草原を歩いて抜けていくと目の前に太平洋が広がります。海岸沿いには湿原や草原が続き、小さな沼が点在する場所もあり、ここは日本なの?と思ってしまうような景観が続きます。フットパスを利用する際には根室フットパスのホームページをチェックし、コースの距離や利用ルールを確認すると良いかと思います。

根室にいらした際には自然散策を楽しみ、お腹を空かせて自慢の海産物を楽しんでください。

(北海道・根室市労連 外山(とやま)雅大さん寄稿)

(注1)高層湿原:雪解け水や雨水だけで涵養(かんよう)される湿原。ミズゴケが繁茂しその上に小さなツツジなどの植物が生育する。高い山や高緯度の地域に多い。
(注2)フットパス:イギリスを発祥とする森林や田園地帯など地域に昔からある景観を楽しみながら歩ける小径のこと。

▲夕暮れの風蓮湖とオオハクチョウ

▲別当賀地区に残る牧場跡地

▲落石岬の湿原を抜ける木道