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公共サービスの再公営化、今こそ

『季刊自治と分権』新春座談会ダイジェスト

▲感染防止対策を講じながら座談会を行いました

業務委託や民営化された事業で、受託企業が突然撤退するなど問題が起こるなか、公務公共の再公営化=インソーシングが注目されています。10月25日に雑誌『季刊自治と分権』新春号の座談会が行われ、榊原秀訓・南山大学教授と自治労連弁護団の尾林芳匡弁護士、高柳京子・自治労連副中央執行委員長の3人が自治体の現場で起こっている問題や運動について語りました。

露呈した民間の限界 再公営化は世界の流れ

最初に、榊原教授は公共サービスのあり方をめぐって、「日本では自公政権が続くなか、行政の組織を縮小し、行政活動を民間にゆだねる政策が継続している。一方、国際的には民営化=アウトソーシングではなく、再公営化=インソーシングの動きが始まっている」と日本と世界の動きを比較しました。

「イギリスでは、ロンドンオリンピック警備で企業が対応不能になったことや、近年では公共部門と多数の契約をしていた企業が経営破たんし、大きな影響があった。民間委託への信頼は低下し、この10年で再公営化が増えた」と話しました。

自治体と組合の役割 コロナ危機で明らかに

高柳副委員長は、これまでの行政縮小・人員削減の影響とコロナ危機のなかで「医療や保健所の現場は限界状態まで働いており、『死ぬか辞めるか』まで追い込まれている」と実態を話しました。

一方、厳しい状況のなかでも、ある保健所でPCR検査ができる職員がいたことでいち早くコロナに対応できていた事例や、労働組合が住民とともに保健師を増やすキャンペーンをすすめて人員増を勝ち取った事例などを紹介。あらためて自治体と労働組合の役割の重要性を話しました。

理念からかけ離れコスト増える民営化

尾林弁護士は、これまで住民や労働組合とともに民営化をめぐって、PFI法から国家戦略特区法など各法制度を検討し、批判してきた経験と事例を紹介。それぞれの制度で、業務が営利企業によって変容、民間まかせとなっている実態があり、憲法や地方自治法にある自治体の姿からかけ離れ、かえってコストが増えていることを指摘しました。

また、フランスの水事業などに触れ「民営化で水道料金は174%値上げされたが、再公営化され料金も引き下がり、利用者の満足度も94%と高い」と報告しました。

再公営化の運動を住民とともに強めよう

高柳副委員長は、2019年にイギリスの水道施設や労働組合への視察・交流した経験に触れて、「国民の85%が水道の再公営化を支持していることを聞いた。イギリスの公務労働組合が『再公営化のためには政治を変えることだ』とかかげていて印象的だった。自治労連も住民とともに再公営化の運動を強めたい」と語り、再公営化に確信を深めた座談会になりました。

▲2019年にイギリスの現場を視察した高柳副委員長(左)

自治労連 高柳京子
副中央執行委員長

南山大学教授 榊原秀訓さん

弁護士 尾林芳匡さん

座談会の詳細は、12月発行の『季刊自治と分権』86号でぜひお読みください(写真は85号)。お問い合わせは、自治労連・地方自治問題研究機構まで。


地方自治問題研究機構のホームページから申し込みできます。

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