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〔70〕土佐の山間より 死因不明社会 ニッポンに挑戦

かがやきDAYS2020年7月号 Vol.560

土佐の山間より 死因不明社会 ニッポンに挑戦

高知・四万十町職労 大川剛史(たけし)さん

▲ピラティスインストラクター・大川さん

死因究明率2%

日本で発見される異状死体のうち、解剖による死因究明がされているのはわずか2%のみ。ほとんどは体表から見た所見や事情聴取など、医師や警察の推測によっているということです。本当の死因は、解剖かCTなどの画像機器で確認しないとわかりません。これでは犯罪や虐待の見逃しにつながります。4月に「死因究明推進基本法」が施行された一方、コロナ禍のため、監察医が解剖を断る例も聞きます。

そんななか、土佐の山間より、Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)活用による死因究明を実践し、東南海に、そして日本に精力的に発信し続けている人がいます。四万十町国保大正診療所のAi認定放射線技師・大川さんです。Aiとは、CTやX線撮影、超音波検査を活用して死因究明を行うことです。特に監察医のいない地域における孤独死、突然死、変死体の死因究明に有効です。解剖によらないので、遺族も受け入れやすく、あいまいな喪失感を癒すきっかけにもなります。

また災害(関連)死の場合、どんな亡くなり方をされたのかがわかり、今後の防災・減災に役立てることができます。大川さんは、国際法医放射線画像診断学会が提唱している大規模災害時身元確認作業(DVI)でのAi活用を提言し、その環境づくりに尽力しています。

ピラティス、防災訓練

地域の健康寿命を延ばすために、大川さんはインストラクターとして週4回、保健師と一緒に診療所でピラティス教室を開いています。仕事柄、人の身体をよく知っている大川さんは、「その人に合ったピラティスは、外科面だけでなく内臓疾患の予防にもなる」と言います。

大川さんは防災士でもあり、死者0をめざして、医療救護所の大正診療所で住民参加型防災訓練を行っています。トリアージ、負傷者の搬送方法、心肺蘇生などの応急処置、ハザードマップ作成などです。医療器具がなくても身近にある物を使う応急処置などを自らすすんでやってもらうことを心がけているそうです。

労働組合の医療部長として

多忙ななか、大川さんは高知自治労連医療部長としても活動しています。「労働組合にかかわるようになって、それまで知らなかった他の自治体・職場の悩みや思いを学び、その背景も広い視野で考えるようになりました。医療従事者、地域の人と一緒に、これからも若く元気であり続けたい」と語ってくれました。

▲高知自治労連医療部第35回定期大会(昨年8月31日開催)であいさつ

▲ピラティス教室で指導中