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第50録 UBEビエンナーレから彫刻のまちへ

いい旅ニッポン見聞録2020年6月号 Vol.559

市民に親しまれる彫刻たち

UBEビエンナーレから彫刻のまちへ

山口県宇部市

▲真締川公園内にある「風景の抜け殻」

コロナ禍のいま、遠出は禁物。そこで地元「彫刻のまち宇部」を歩きました。

JR宇部新川駅前を起点に、約600メートルの平和通りと、その先から真締川(まじめがわ)沿いの公園を約400メートル上る間に、26作品もの彫刻があり、さらに800メートル先の山口大学附属病院まで足を伸ばせば10作品の彫刻を見ることができます。わずか2キロの範囲内に作品が集中的に設置され、彫刻めぐりにはうってつけです。

宇部市は、世界で最も古い野外彫刻コンクール「UBEビエンナーレ」(現代日本彫刻展)を2年に一度ときわ公園内で開催しています。2019年に第28回を迎えました。出品された彫刻の一部が、ときわ公園をはじめ、まちなかに設置され、全体で約200作品の彫刻が市民に親しまれ、訪れる人々を迎えます。

それでは、宇部市の「彫刻ウォーキングマップ」(ときわ公園編、うべ市街地編、宇部市全域編の3種)を片手に、平和通り~真締川公園にあるお気に入り彫刻を紹介しましょう。

「風の中の鴉(1981年)」は、平和通りにあり柳原義達の作品。向井良吉、大高正人と並んで宇部市の彫刻展の生みの親でもあります。鳩、鴉の数ある作品のなかで、私はこの鴉が一番カッコええと思っています。

「メッセージ(二口金一作、1991年)」は、北国の3人のマント姿を描いています。厳しい冬を懸命に生きている人たちを勝手に想像してしまいます。彫刻の3人は動きこそ三様ですが、顔も表情も省略され、マント姿もパターン化されていますが、想像をかき立てます。

「SEED増殖(伊藤憲太郎作、1999年)」は、平和通りの端にあります。ステンレス製で周囲の景色と自分の姿を映し出します。子どもたちはユニークな構図となる自分の姿を見て楽しんでいました。

「風景の抜け殻(重村三雄作、1983年)」は、真締川公園内にあり、どうしても目に入ってきます。柱上部にはなんとセミの抜け殻。それも逆さま。意味不明です。しかし、都市空間のあり方をユーモラスに表現したのかもしれません。

「空を行く2005(西野康造作、2005年)」は風によって動く彫刻で、お気に入りです。山口大学付属病院東の川土手に設置され、24時間動いています。3つの回転軸が個別に動くため、形の変化も楽しめて飽きないのです。

コロナ禍が落ち着きましたら、「彫刻のまち宇部」に立ち寄ってみてください。

見聞録メモ
問い合わせ
UBEビエンナーレ事務局
0836-51-7282
ubebiennale.com

▲「メッセージ」

▲「風の中の鴉」

▲「空を行く2005」

▲「SEED増殖」